戯れる猫を可愛がる気持ち。
…俺は少し複雑だ。

B-style Duel×Ereki [Neck]

 その日は、バーテンの仕事は休みで、曇っている為に写真を撮りに行く気にもなれない、と、俺の恋人が俺の部屋でくつろいでいた。パソコン横のベッドで俺を眺めながらころころと転がってみたり、枕に抱きついて少しの間本当に眠ってみたり。窓の外は曇り空、紅葉が始まろうとしている時期だが、エアコンがいらないくらいには涼しい日だ。窓の外に見える雲を見遣って、たまに休みがあれば雨だろうが晴れだろうが俺の部屋に来る癖に、と笑えば、一緒に居る時間が好きなんだと、パソコンに向いネットを通 じての仕事をする俺の横までベットから降りて這ってきて、膝に頭を擦り付ける。本当に、猫そのものだ。
 俺とエレキの秘密。それはお互いがモンスターだっていうことだ。性的快感を得ると、砕いて言えばエロいことで気持ち良くなってしまうと、俺達は人の姿を失う。厳密には耳が動物の形になって、尻尾が生えるだけだが、それは排他的な人間と言う生き物にはただ異様でしかない。それを気にして、愛しい人とセックスも出来ないような身体はコンプレックスでしかなかった。

 「デュエル、尻尾触りたいなぁ」

 顎を膝に載せて、上目遣いに。
 今じゃ、すっかりお気に入りの身体だ。エレキは俺のコンプレックスだった身体ごと愛してくれてる(と俺は信じている)し、エレキの身体も俺は全身全霊で愛せる。
 エレキは俺の尻尾が気に入りで、いつも遊びに来れば必ず強請る。最近、お互いに一つ発見した事があって、それのせいで拍車も掛かっているのかも知れない。
 「好きにしていい」
 そう言ってパソコンに向ったまま、少し顎を上げる。タイプがしにくいが少しの我慢だ。
 「うん、ありがと」
 そう声がして、見えない角度から髪の毛が首をくすぐった。丁度喉仏の辺りに、息遣いを感じる。ふーっと、長い息。そして湿った弾力が首の皮膚の上でちろり、ちろりと窺う様に弾む。
 ほんの少しの痛み。慣れた今じゃその痛みは快楽にも似ている。エレキが首に小さな噛み跡を付けている痛みだ。
 その痛みを感じるか感じないかの内に、俺のバンダナが変な浮き方をして目を覆った。邪魔だと取り払えば、耳に引っ掛かった。ズボンの中でも出る場所の無い尻尾が右足の方に柔らかく伸びている。ズボンと下着を前が零れない程度に無理矢理ずらし、尻尾を付け根から外に出してやると、すぐさま猫が飛びついた。
 「はぁ…デュエルの尻尾だ…」
 きゅうっと抱きしめて、上機嫌に頬擦り。
 そう、何故だか俺は首を噛まれると変化を起こす。本当ならセックスに持ち込みでもしないと触らせる事すら出来ないのに、少し前にエレキが悪戯で前戯の最初に首を噛んだ途端、だった。まだ興奮してもいないのに、と最初は戸惑ったが、まあ、エレキが満足してるならそれでいい。仕事をしながらでもエレキの望みが果 たせるんだからな。
 「仕事いつ終るの?」
  尻尾の先の毛が筆の様になっている部分を、指で引っ張りながら、膝を立てて座っている愛しい猫は、俺に言葉を求めて目で促している。
 「まだ掛かる」
 メールの着信を知らせるメッセンジャー。見れば新設したサイトの不備を指摘するメ−ルが、イギリスから二通 。これはマズいとすぐ直しに掛かる。これは…当分終らないな。
 その様子が分かったのかどうかは俺には分からないが、エレキは不満そうにふぅん、と返事だけして、また俺の尻尾を弄り始めた。 毛を梳いてみたり、三つ編みにしてみたり、抱きしめてみたり丸めてみたり。せわしなく俺の尻尾を触り続ける。
 時折根元に触れているのはわざとだろうか。

 そうこうしながら一時間、エレキはたまに尻尾から離れて紅茶を飲んだり、買い置きのビスコッティに手を出しながら待ち続けた。短気なエレキには中々珍しい事だ。振り向こうと椅子の手摺に手を掛けたその時、
 「デュエル!」
 今よく我慢したなって褒めてやろうとしたのに。コイツ。
 「俺もう我慢出来ないよ…構ってよー」
  後ろから頭に重圧。首を抱く様に回された腕と脳天に顎。猫は甘える時も可愛いな…もう俺は士朗を馬鹿に出来ないと、なんだか苦笑してしまう。
 「…ま、残りは明日やる事にするから」
 そのまま上を向くと、拗ねた顔がパっと輝く笑顔に変わった。思う、絶対俺、この笑顔にほだされてる。

 

 椅子からベッドに座り直して、右膝に乗ってきたエレキを抱き締める。シャンプーでも変えたんだろうか、髪の毛から微かに香る香がいつもと違う。でも相変わらず痛んだ髪の毛で、後れ毛に指を入れると、キシキシと絡んで滑らない。
 不意打ちで首の後ろ、背骨の辺りを、その肌の感触を感じるか感じないかの位 置でなぞる。
 「わッ!」
 驚きと共に猫の耳が白髪から勢いよく飛び出した。
 「いきなり狡いぞ!」
 抗議しながらズボンの後に手を入れ、尻尾を引き出すと、ズボンも少なからずずり下がる。これは俺の喉仏を噛むのと同じで、俺にそういうポイントがあるんだからエレキにもある、と二人で散々触りあった結果 、背骨の上だと判明した。
 「さっきから、どこかの黒猫が尻尾の根元に触ってくれるもんだからな」
 大分前から熱と硬さで形の変わった欲求を見せる様に、シャツをまくって股間を晒す。ずり落ちかけたズボンはそこに引っ掛かって落ちるに落ちられない状態だ。
 「…だって、デュエル構ってくれると思ったから」
 そろりそろりと膝から滑り降りて床に座る。反省や謝罪の意思はないみたいで、悪戯だ成功した事を喜んで、小首を傾げた。
 「責任は取るから、さ?」
  開いた足の間で膝立ちになると、俺のズボンと下着を慎重に足首まで下ろした。それから眼前のモノをに触れ、何か確かめる様に眺める。まだ先は濡れていないが、随分硬い。こうまでなって、よく俺も我慢したもんだ。
 まずは先端にキスをする。柔らかい唇に先を吸われ、その唇がもう少し下の方へ動いていく。くびれた部分に舌を入れて、そのまま裏を舐めた。硬く尖らせた舌は、俺の硬さと反発して弾み、ぐっ、ぐっと、押しては押し返されながら、確実に俺を興奮させる。しばらくそうやって裏を突つき、ふと舌を引っ込めた。どうするかと思えば、俺の全体を、唾液で濡れた唇で啄む様にヌメらせていく。そして、もう一度先端にキスをして、ぱく、と、くわえた。真ん中辺まで口に入れて、口を窄ませたり、舌と上顎で挟んでみたり、舌先で穴を弄ったりして、さらに高みへと俺を導く。
 どこで覚えたのやら。俺は強制していないのに、何時の間にかこういうことが当たり前になっていた。最初は歯が当たらない様にするだけで精一杯だったのが、気付けば俺のポイントを押さえた俺専門のプロフェッショナルになっている。もっとも、それでいても俺のを全部口に入れる事が出来ないでいるのは躊躇があるからなんだろう。無理はするな、頑張りすぎだとたしなめても、俺はしたいと言って聞かなかった。全く、フェラなんてマジにどこで覚えたんだ…
 「おい、その辺りで止めろって」
 両手の親指と人差し指で耳を上に引っ張ってやると、以外とあっさり口から放した。ふぅ、と息をついて、満足そうに俺の太腿に頭を預ける。
 「俺上手くなった?」
 口の周りを拭いもせずに、ベタベタにしたまま、うっとり笑う。少し目を細める様子に、何故か色気を感じて、その目を舐めてやりたくなる。
 「ああ、上手くなった」
 それはせず、頭をくしゃりと撫でてやって、マゲをほどいてしまうと、乾いた音を立てながら俺の少し汗ばんだ太腿に白い髪の毛が広がった。
 「嬉しいな…」
 へたん、と足を横に広げた、俗に言うアヒル座りで、手を膝の間にぺったりと置いている。これはエレキも勃ってる証拠、何度かのセックスの間に見つけたエレキのクセみたいなモンだ。
 俺は太腿に寄り掛かる頭を起こして、虚を突かれてきょとんとするエレキの脇の下に手を入れて抱き上げて、ベッドに降ろす。ぽすん、と軽く音がして、ベッドが重みに皺を作った。
 「お前にもしてやる。男には初めてだから覚悟しろよ」
 足を広げてその間に入り込み、ズボンのベルトをはずしてやる。
 「え、ちょっ、いいよ!」
 頭を押し返そうとするが構やしない。ズボンを脱がせて下着も一緒に取って…なんだ、もう必要無いくらい勃ってんのか。横目で脱がせたトランクスを見ると、丁度当たっていただろう辺りが濡れている。…他人のものを口にしてるだけでも、勃つもんなんだな…。今度は絶対俺もやる。
 「…いいよ、イッちゃいそ…」
 真っ赤になって耳をへたんと伏せたエレキは、力が抜けているのか起き上がれないままで、もどかしそうに尻尾で俺の首を撫でた。黒い毛並みが噛み跡に触る。
 「…わかった」
 あまりに静かな動作に、妙に惹かれる。承諾の返事と共に、尻尾がふるり、と小さな輪を描く様に振られた。にわかに表情が微笑に変わる。本人が意識してやっているかどうかはさておき、蠱惑的な笑顔だ。金縛りよりももっと、俺を無意識に縛り付けてるんじゃないだろうか。元々可愛げのある顔をしているせいか、妖しさのある表情が奇妙な程艶を帯びている。
 いつもの保湿クリ−ムを、ベッドサイドの棚から取り出す。前は冬までは奥へ追いやられていたはずなのに、秋口の今、一番手に取りやすい棚の手前に置かれていた。…そりゃ、一週間に二回以上ってペースなら取り出しやすい所に置きたいのが心情。減りも早いから、イギリスから取り寄せるか日本で売ってる何かしらの潤滑剤を使うか、迷い所だ。
 そんなペースでも、慣れて緩む、という感じにはならないらしい。緩くなったような気がしても、エレキが力を抜くのが上手くなっただけなんじゃないかと思う。そっと指を当てると、全身から力が抜けて、溜息が聞こえた。尻尾は震えていて、痛みに耐えようと手はシ−ツを強く握りしめている。毎度毎度この様子を見ていると、ちょっとばかり躊躇してしまって、中々指を先に進める気にはなれなかった。
 「…しない、の?」
 熱く吐息に混じって、薄く聞こえる声。興奮に血が昇った表情。震える耳が一番素直な場所だとすれば、痛みはやっぱり恐ろしいものなんだと思う。
 「痛いんだろ、やっぱ」
 指を遠ざける俺の言葉に、最初は意味を掴めなかったのか目を丸くした。が、すぐにブンブンと首を横に振る。
 「デュエル、その…確かに痛いよ。でも…でもさ、俺は、痛いだけじゃないよ?」
 困った様に眉を寄せて苦笑しながら、俺を見つめる。赤い目が、深い色を持って俺を映していた。
 そろり、小さな掠れた音がして、尻尾が俺を促す。届く限り、片口に触り、鎖骨に触れ、乳首を撫でる。もう一度首の噛み跡を短い毛並みが通 過する。しばらく喉仏に輪を描いて、ゆっくりと、緩く俺の右腕に絡み付いた。
 「痛いだけだったら…何で何回もしようと思うんだよ」
 今度は手招く。こっち、と吐息が告げ、俺は示されたまま顔に顔を寄せた。
 「気持ち良いよ…デュエルとしてるの、気持ち良いんだから」
 ぽすん、と尻尾が解けてシーツに落ちた。それに気を取られる間に、しっかりと頭を抱かれ、少し塩辛いような、苦いような熱さが俺の自制心を奪う。銜えたモノの味が口に残っているのだろうか、普段とは違って苦い。それも互いに舌を触れさせて、絡ませていく内に、いつも通 り、そのまま蕩けて一緒になってしまいそうな興奮に変わる。
 「…ふ」
 意外な程しっかりした腕が俺を解放する。力が抜けて、腕は白いシ−ツの上に再び皺を作った。
 煽られてしまった。すっかり俺は獣になりきった気分だった。食ってしまいたいと、欲望が口を開く。
 「うわっ!」
 断わりもせず身体を反転させてうつ伏せにさせる。反動で広がった髪の毛が、背中に張り付いている様がまた綺麗だと思う。膝を曲げさせれば腰が浮いて、やるべき事が何か確認させられた。すぐにクリームを指に取り直し、押し付けるなり中へ滑らせる。
 「ッ…」
 押し殺した声。構わず指を進めて痛みに萎える前に、弱点を半ばひっかく様に押した。
 「ひゃう…!」
 気の抜けた声が少し笑える。笑いをかみ殺す様にしながら、そこに指を掛け、受け入れやすい様に広げていく。もっと、もっとだ。まだこんなんじゃ俺もエレキも痛い。
 「にゃぁ…でゅ、…デュエル…ふッ…」
 ますます伏せられた耳の、黒い毛並みの間から、ちらりと見える肌が赤い。肩が震えて、髪の毛がぱさんと一束擦れて落ちた。震えてとろとろした蜜のような液体が先からぽたぽた間隔を開けながら滴る。
 そそられて、指を引き抜く。多少痛くてもいい、今すぐがいい。
 エレキの腰と自分のモノを掴む。濡れて広がったそこに、一気に押し込んだ。
 「ぁああッ!」
 痛みなのか悦楽なのか、高く声を上げてシーツを一層強く掴む。そのまま間髪入れずに動き出すと、あとはもう意識が犯される程の快楽に侵蝕されるだけだった。
 「にゃぁ、は…でゅ…ああッ!」
 名前も呼べなくなるくらい息を弾ませて
 「ひぃっ…ふ、ぁ、う…ッ」
 口を閉じる事も出来ないくらいに力は抜けて
 「にぃっ…にゃぁああ、ああ…っ」
 盛って鳴いて、限界を訴える様に、締め付ける力が強くなる。
 「いっ、く…ふあッ…!」
 「イっていい…俺も、ヤバ…」
 大きな耳に囁けば、絶頂を望んで腰が一緒に動く。
 「にゃああッ!」
 「ふッ…!」
 全く、といえそうな位同時に、達した。

 はっとする。思わず、エレキの意思を完全に無視して進めてしまった事を後悔した。いくら煽られたとはいえ、異常な程強引に進めてしまったのは確かだった。
 「わ、悪ィ、エレキ!」
 すぐさま抜いて、ぐったり力の抜けた胴を抱きかかえ、風呂場へ急いだ。湯の張られていない浴そうに、深長に座らせる。
 エレキは小さく何度も浅い呼吸を繰り返しながら、余韻が残っているのか伏し目がちで、視点もちゃんと定まっていなかった。
 やりすぎた、そう思っても手は止めない。エレキをこのままにはしておけない。急いでシャワーのコックを捻り、注がれる水が湯に変わったのを確かめてから 肩からゆっくり流してやる。
 「エレキ、大丈夫か?エレキ?」
 顔を近付け、様子を見ながら流しつつ揺すると、目がいつもの様にぱちりと開いて、俺をぽかんとした顔で見上げた。
 「デュエル…」
 手が伸ばされて、ぎゅっと首に重みが掛かる。
 「ごめん…ちょっと、びっくりした…」
 顔は見えないが、声は震え、尻尾が開かれた足の間に入る。怯えさせた。なんて馬鹿だ、俺は。
 「…悪かった」
 謝れば良いってモンじゃない事くらい分かってる。でも謝らずにはいられなかった。
 「…今度は、ちゃんと言ってね。…いきなり激しいとびっくりするからさ」
 頭が摺り寄り、首がくすぐったい。
 「全然大丈夫だから。だけど、ちゃんと言ってね」
 もう人の形に戻ってしまった俺の耳を、ちろりちろりと舐める舌が熱い。
 「分かった、約束する」
 「絶対だよ」
 重みが不意になくなり、くすぐったさの原因だった白髪が遠ざかる。顔を見れば、照れた様に笑う、いつものエレキがいた。

 シャワーがまだ響く。俺は愛しい黒猫の寛容さに、深く、感謝した。

 

end

2004/02/21
ありゃ…当初の予定とは違うものがお目見えしました。
実はエロ無しの予定だったんだケドなぁ…
まあいいや。その辺りはエロい狼がなんかやっちゃったってコトで。
ラヴは大好きですが
擦れ違いとかちょっとやり過ぎて反省とか
そういうシチュが書きやすい私はラヴだけでは物足りないみたいです。
ちなみに私の感性で言うと
デュエルさんはあんまり性欲旺盛な方じゃないので
エレキのがむしろヤリたい盛りな感じなので
デュエレにすると誘い受け満載です。
エレキがますます女々しく…うう。
ちなみに二日で書いたコレと、一個前のきつねこだと
文体が違うのでデュエルさんがどんな正確だか曖昧。
馬鹿にしてやってください…