だって好きになっちゃったんだ。

B-style ZILCH×K-Na [Please Look Me!]

 初めて会ったのはゲーセン。まだ始めたばっかりのゲ−ムをやりたくて、俺は仕事を半ば放り出してゲーセンに行ったんだ。その時、常連のユ−ズと識と士朗と一緒に居たのがジルチだった。
 その時はドマムマニアとニデラを行き来してるなぁ、俺より上手いなぁとか、多分そんな適当なことしか思ってなくて、別 段気にもしてなかった。
本当、あんまり気にしてなかったんだけどな。

 そんな事を思い出しながら、今日も胃ーあーる漢方の打ち合わせと称して、識のゲーセンで弁当を食っている。当の自称リ−ダ−、ジルチと識はギタドラセッションに熱心で、実際には胃ーあーる漢方での活動も何もあったものじゃないような気がしてるけど、向こうで二人はお構い無しだ。やってみて思ったけど、ギタドラと本物はやっぱり違うから、これは練習にはならないなぁ。
 「よし!次だ次!」
 興奮気味に、ジルチがシンバルとハイハットを矢鱈に叩く様を見て、和む。あの筋肉の鎧とでも言えそうな程鍛えられた大きな身体で、子供みたいにはしゃぐ事だって稀じゃない。それでいてまたよく怒るし、よく落ち込む。この前もたまたま出掛けた先のゲ−センで、ドラマニの音が小さいと難くせを付けたと話していたし、またナイアに滅茶滅茶にやられてやけ酒に走っていた。
  俺と会う前から、ずーっと
ナイアに熱心で、負けた数が半端じゃないのは有名だ。でも最近もっと有名になったのは、ユーズより先にナイアに一度だけ勝利したってコト。デート権を手にして、デートはしたみたいなんだけど、結構散々な事になったと、ナイアがぼやいてた。ちょっと俺は複雑だ。ナイアがそんな風にぼやいていたって言う事は、ナイアはジルチにもしかしたら、ほんのちょっとでも、恋愛感情があるかも知れないって事じゃん。ジルチもそうじゃないか、なんて言ってるくらいだし。

 周りからは俺、ナイアに好意がある、なんて言われてる。ジルチがナイアとデートする事が決まった時、一番落ち込んだのが俺だったって言ってたのは多分ユーズだった。確かに物凄い落ち込んで、何にも手が付かないくらいで、仕事の締め切り危うく落としそうになって焦ったっけ。
 デートの後、ナイアとバトルしているのも俺が回数多いみたいだ。ユーズは新人の指導に熱が入っていて、出来るナイアより出来ない奴等のが可愛いとかなんとかで、ナイアは対戦相手に識や俺を呼び出す事もある。もっとも、識は仕事で忙しいし、俺はジルチよりちょっと上手いくらいだから、不足するものがあるとは思っているけど。
 でも俺、ジルチとナイアのデートで落ち込んだのは、ジルチがナイアとデートするからだったんだ。…ジルチがデートするって事実があるからだったんだ。

 手元の弁当は手作りで、大人用だと嫌でも分かる至極シンプルなデザインの二段重ねの弁当箱に、大豆の田舎風煮込みと牛肉のピッツァソース、さらに茹でキャベツが添えられている。別 にして詰められた白米もそうだけど、どれも冷めた今でさえ美味しい。全部ジルチが俺の為に作ってくれたものだ。俺だけに。それだけでうっとりしてしまう。だって…ジルチが俺が最近仕事でまともな食事してなかったのをたまたま聞き付けて、今日こうやって弁当を持って来てくれた。普通 ならしないだろ、精々ちゃんと食ってるのか、とか、無理するなよ、とか、別 に何でもないような言葉だけなのに。
 飯の旨さに、少し胸が焼ける思いを味わった。だって、ジルチにしてみればただ友達。さっき弁当渡しながらの一言は俺の胸に棘を残してる。
 「友達がまともに食ってないなんて、心配になって当たり前だろ」
 所詮友達。この時程男に生まれたことを恨んだ瞬間はなかった。これがもし、女で、仮にナイアだったら…もっともっと素敵なことを言って、きっと俺はもっとうっとりして、ジルチのプロポーズだって余裕でオ−ケ−して、きっと結婚して子供作って一軒家に住んで死ぬ までずーっと幸せに暮らして…
 やめよう、と思考を打ち切る。だって空しいばっかりだ。俺が好きでもジルチは違うから。好きの形が違うから。
 残りの弁当をかっこんだ。

 結局、識が仕事に戻り、ジルチは一人ドラマニに向き合っている。俺はと言えば、ぞろぞろといつもの面 子がやって来て、その背中を眺めているにもいられず、士朗と勝負をするハメになっていた。士朗には曲の選考に寄っては勝てる事もあるけど、大概惨敗するからあんまりやりたくないのが本音。特に、今日はエリカがいるからカッコイイとこ見せたがってる雰囲気。嫌な予感がする。

 案の定、全戦全敗に終った。
 「その程度か、ケイナ?」
 勝ち誇った顔の士朗。ギャラリーも苦笑する程俺のスコアは悪かった。全部が士朗の得意曲で全部が俺の苦手曲ともなればそうもなる。
 「なんだ、随分散々だな」
 その声は、最悪なくらい明瞭に俺の耳に届いた。
 なんで、なんで見られていたんだろう。なんでドラマニをしていてくれなかったんだろう。
 よほど今目の前で天狗になってるこの日米ハ−フの男の少しばかり細い首を絞めてやろうかと思った。
 でも…視界の端っこにいつもみたいに笑ってるジルチの顔が引っ掛かって、まるで身体の中身が全部どこか下の方に落っこちて行って血ばっかりが逆流して頭に登ってくみたいなめちゃくちゃな感覚に襲われる。

 「帰る!」
 「あ、おい、ケイナ!?」

 静止も聞かず、ゲーセンを飛び出した。駅まで走って停めておいたバイクに飛び乗って、もう誰もいない所に行きたくてどうしようもなくて。神様、本当にいるならジルチの記憶から今の出来事を全部消して下さい、そう祈ってしまう。
 ジルチが、見てた。
 俺がボロボロにやられる所を見てた。
 …それを見てもジルチは笑っていた。笑ってた。

 何でこんなに悲しいんだろ…

 

 気が付けば自宅のベッドに籠って泣いていた。
 恥ずかしい。別にジルチ以外の誰が見ていても、どんな酷い成績でも構わないし、策にハメられたと士朗を悪者にする事も絶対なかった。でも、大好きな、大好きなジルチが、良い所見せたい欲に駆られた士朗に陥れられた罠で最悪の成績で惨敗した俺を見ても、笑っていたなんて。
 独り善がりに寂しがりながら、枕を抱いて涙を拭う。白い枕カバーに灰色の染みが点々と残った。ふと、視線の先の真っ平らな鉄の時計盤を見ると、バイクのノーヘルで乗ったのと、ベッドに額を擦り付けて泣いていたので髪の毛はバサバサになってる。
 「カッコわる…」
 あんまり情けない赤いパンダがいるから、シャワーを浴びる事にした。

 湯を沸かしていない風呂場は薄ら寒く、春も近いのに身体が震える。早く暖まりたいと蛇口を捻って、降り注ぐ水がお湯に変わるのを待つ。ほんの数秒で水はお湯に変わり、俺は全部流す様に、頭のてっぺんからシャワーを浴びた。
 どうしてだろう。足元がふらついて、目眩でも起こしてるみたいだ。いつまでも震えは止まらないし、身体は冷えていく。こんなに熱いお湯を浴びてるのに。身体が、もしかしたらぼやけてなくなっちゃうんじゃないかな、もしかしたらこのまま消えてしまえるんじゃないかな、そう思えるくらいに感覚がない。
 目が、変に潤って、熱くなる。そうすると、身体の芯が、何故だかじんわりと固い熱さを持った。けして幸せではない熱さ。暖まると言うより熱くなってしまった身体を、しばらくシャワーに当てていた。

 シャワーを止めて身体を拭いて、もう寝てしまいたかったけど、仕事があるからジャージに着替えた。外出した日で、深夜になる前に髪の毛を下ろすなんて久しぶりだ。ドライヤーが無いからタオルでよく拭かないと。風邪を引いたら仕事に差し障る。
 こんな時でも仕事の事を考えてるなんて。そんな自分に苦笑する。腫れた瞼が洗面 台の鏡に映って、なんだ、ますます酷くなってる、と独り零す。その鏡の端っこに、何かがチカチカと光ったり消えたり点滅て俺を呼んでいた。ああ、携帯か…パソコンのデスクの上に放り投げた携帯を手に取り開くと、着信が三件、メールは五件も来ているのが目に付く。

 メールから、と思い五件目から目を通し始めた。今来たのは識からで、いきなり帰った俺にどうしたのかと気遣うものだった。事情が見えていないのかな、とも思うが、そこ知れない識のことだから、俺が何に対してああいう態度をとったのかを知りたいのかもしれない。次の一件はニ十七分前、セリカからで、笑ってごめん、もう絶対しないからまた来てね、とあった。別 にセリカが謝る事じゃ無いのに。その前の一件は同じニ十七分前、居合わせなかった孔雀からだった。割りとお節介なアイツは、何かあったなら聞くから、何でも言ってと、いつもと変わらない優しい態度。その優しさも今は要らない。話したくないから。次の一件は三十分前、エリカから。セリカと内容は殆ど同じだ。士朗のことについては何一つ触れられていない。最後の一件は、多分俺がゲーセンを出た直後。
 『悪い、選曲全然見ないでさんざんだとか言って。苦手な曲ばっかりだったんだな』
 見てなかったんだ。…苦手な曲、知っててくれたんだ。
 『俺もたまにああやってヒドいスコアになる時もあるのにな。本当、ごめん』
 いいんだ、メールくれただけで嬉しい。
 『今度なんか奢るから、機嫌直してまた来いよ』
 物に釣られてるって思われてもいい。今すぐゲーセンに行こうか。
 「ジルチ…」
 そう呟いた俺の声は携帯の画面を曇らす程熱くて。反射して映る顔は、また赤い目の中で洪水を起こしていた。
 ぼやけた視界の中、着信履歴を見る。…全部、ジルチからだった。

 携帯を持ったままベッドに転がった。いいや、仕事は後で起きたらやればいい。アラームをセットしてごろり、とベッドで寝返りをうつ。嬉しいな、ジルチ、俺の事少しは知ってくれてるじゃん。
 なんだか飛び出してきた自分が馬鹿らしくも思えたけど、結果、ジルチといる時間が増えるみたいで…俺って、実は幸せ者なんじゃないかなぁなんて、一人で呟いてた。

 アラームに起こされて、ベッドと対象の位置にあるパソコンの前に座る。けど、なんとも手がつかない状況で、俺はまだ締め切りまで日のある仕事なのを良い事に再びベッドに潜り込んだ。日が落ちかけて部屋は茜色に染まっていて、俺の考えになんだか肯定的に見える。
 布団を足元へ押しやり、枕を腰に宛てる様にして座り込んだ。
 まだ夕方、とか少し自分の中で咎められた気もしたけど、今日は自分を甘えさせる事にして、俺はここに居ない想い人に、小さい声で、ゴメン、と呟いて、頭にその姿を想い描く。

 高層マンションの四階だから、カ−テンは別に閉めない。夕焼けに当たっているのが気持ち良い気がして、そのまま下半身のジャージをずり下ろす。足首にジャージを引っ掛けたまま、トランクスの上から、少し自分の形をなぞってみた。
 なんでジルチに抱かれたいかは分からないけど、少なくとも俺はジルチが下になって喘いでる所なんか見たくない。俺が見たいのは、いつもみたいにガキみたいな笑顔で余裕で接してくれる感じ。だったら俺、抱かれたいなって、抱くより抱かれてみたいなって思った。ジルチってアレ、大きいのかな。気にし始めた頃からトイレに行く時間、わざとずらす様にしてる。きっと気になって覗き込んで、たったそれだけで俺は興奮しちゃうから。大きいと理想通 りって感じなんだけど…大きいと入らない事があるっていうし、俺と相性の良い大きさだと嬉しいかも知れない。
 そんなことだけで、ちょっと興奮した。右手を突っ込んで、絶対身体の中で一番脈を取りやすそうな所に触る。ジルチならどう触ってくれるかな。俺の、凄いドキドキしてる。先の方、撫でてくれるかな、それとも裏側とかなぞっていくみたいに掻いてくれるかな。手を左に代えると、自分の手なのに動きが少しぎこちなくなって、ジルチの手だって錯覚を起こせる。思うまま、ジルチはきっとこうする…と、眼前にジルチを思い浮かべながら、あの余裕の笑顔を思い浮かべた。
 『すげえな、濡れやすいのか?』
 声を、耳に響かせる。そうやって、少し俺をからかってくれるジルチが好き。そうだよ、俺出る量 多いんだ、そうやって幻聴に答えてやる。
 『へぇ。ぬるぬるするから気持ち良いだろ』
 フッフッと、鼻に掛かったような笑いはニヒルだ。ニクスみたいな冷たさを含んだものじゃなくて、なんだかちょっと格好付けなリズム。そういう所も、なんだか好きになってしまう。小さく笑う、二回の吐息が、俺のもっと近くにあれば良いのに。
 手の動きは加速する。先走った体液でぬるぬるして、左手が不器用に滑ったりしながら俺を高みへ追い詰めていった。いけない、ティッシュが必要だな、と、俺はどこか変に冷静を装って枕元のティッシュに手を伸ばして、いつでも大丈夫な様に準備をする。
 『イケよ』
 響かせる声。少し息が荒くなってるといい。俺を見て興奮してよ、ジルチ。
 「ジルチ…っん」
 声が漏れる。喘ぎに交えてそこに居ないジルチにもっととせがむ。強請る。もっとして、俺と気持ち良くなって…
 「ジルチ、ジルチ…ぁ、あッ!」
 ぱんっ、と、意識が音を立てそうに弾ける。タイミングを逃して、噴き出した白い精液はベッドのシーツの上に、涙に少しだけ似ている灰色の染みを落とした。
 「あーあ…」
 溜息と一緒に、妄想で頭に溜まった熱を吐き出す。ティッシュで空気に触れて死んだ精子を拭って、まあいいや、落ち切らないのは…そのティッシュをゴミ箱に投げ入れた。
 ふと、すっかり日が落ちて真っ暗な窓にも、自分の物が付着しているのを見つけて、俺は良く飛んだなぁと自分に感心しながらもう一枚ティッシュを取り出して、さっと拭いてみる。
 「…あれ?」
 鏡の様には行かないけど、うっすら反射される自分に変な違和感。…なんだろう、おかしいのは分かるけど何がおかしいのか分からない。気になって枕元の鉄板の時計に顔を写 してみた。
 「…なんだ、コレ」
 気持ち良過ぎて失神して夢でも見てるのか、俺。あるべき所に耳が無い。恐る恐る、その場所に触ってみても、やっぱり耳は行方不明だ。
 「なんだろ、病気…?」
 独り言でも言ってないと、怖い。なんでだろう、耳、落としたのか?ってそんなワケないし…現に聞こえてるから、あるにはあるんだろうけど。でも現実に無い…いつもの場所に無い。そんな事がある訳無いっていうかあってたまるか!と思うけど、無い物は無い。
 他の場所にある、と言う可能性に、ともかく頭を探る様に撫でてみる。量の多い髪の毛をかき分けながら、ついに、多分頭の、耳よりちょっと上でちょっと後の方に、二つの薄い楕円形っぽい物を見つけた。見つけたと言うか探り当てた。でも、なんか違う。耳たぶが無い。いや、もしかしたら全体が耳たぶみたいに、とにかく平べったい。しかも、多分裏になる場所が変に毛が生えてて、指にちくちくする。
 正体を確かめるべく、洗面台の鏡に走った。下半身丸出しだけどまあ気にしない。一大事だ。
 鏡に映ったのは、金髪の中から生えている耳と、青ざめ切った俺だった。なんなんだろう。なんで俺の耳、こんななってんだよ?
 目眩を起こしそうになりながら、夢かも知れない、と思い直した。そうだよ、夢だ。だったら眠ればきっと…醒めるんじゃないか?ベッドに戻って一寝入りしたら、きっと元通 りだ、そう自分に言い聞かせながら、ジャージのズボンと下着を一緒に掴んで引き上げる。…引っ掛かった。ああ、絶対アレだ、と思って、背中から尻当たりに手を滑らせると案の定、有り得るはずの無い物に触った。当然、耳ときたら尻尾と、当たり前の様に生えている。固く短いベージュというか褐色というか、とにかく薄い色の毛に覆われた尻尾は、先に行くに連れて少し細くなり、さらにその先にはもっと長い毛で構成された、ふさがついていた。
 「…なんかライオンみてぇ…」
 独り言。さっき鏡に映った俺の頭は、丁度掻き回してボサボサに戻っていて、その間から覗く耳の具合と、今手に触った尻尾が、そのままライオンのものの様だった。
 どうもこうもない、とにかく夢なら醒めてもらわなきゃ困る。無理矢理尻尾をズボンに捩じ込んで、鏡の前から逃げる様にベッドに潜り込んだ。もういい、仕事は明日やろう。今日みたいについてない日はすぐ寝るに限る。何事もなく朝を迎えてくれさえすれば…良いんだ。

 

 「燃えてるか〜?」
 二日後、俺は丁度ドラマニを終って並び直そうかというジルチに遭遇出来た。昨日は結局仕事に集中して、メールだけ返しておいて、とりあえず五月蝿く言って来るエリセリには仕事だから行かないとだけ連絡。…ジルチと、後から謝罪してきた士朗には返事はしてなかったんだけど。律儀な士朗のことだから、昨日当たりは待ち伏せられてる気がしたから来たくなかった。
 「燃えてるぜ。返事もよこさないで何してたんだよ」
 マイスティックで軽く方をポンポン、と叩かれる。嬉しそう。ジルチ、俺が来たの、嬉しいかな。今日は一段と距離が近くて、顔から顔まで三十センチ。ジルチって二重なんだ。格好良いなぁ。
 「ん、ゴメン。仕事」
 そう少しだけ嘘をついて、俺とジルチの距離に泣きそうになる。たった三十センチなのに。
 翌朝は何にもなかったんだ。本当、そのままいつも通りの朝で。…また、仕事を終らせてから、夜一人でしてた。たまたま、鉄板の時計が目に入って、そこに映っているのが、また耳が違う俺で…俺は、予測する。きっと興奮するとこうなっちゃうんだ。…俺には、ジルチとセックスするなんて、一生叶わないんだ、そう、考える。だって、俺興奮してお化けみたいになっちゃうじゃない。きっとジルチに嫌われる。
 「…おい、どうした?」
 ジルチの声に、ちょっとだけ驚いた。悪い癖で、自分の中で全部考えちゃって周りが目に入らなかったらしい。
 「泣きそうな顔するなよ。この前のコトは皆も悪かったって言ってるんだからよ」
 そんなに泣きそうな顔してるんだ、俺。泣けるなら泣いちゃいたいかもしれない。せっかくジルチはそこにいるのに、俺には全然手が届かない気がして…真っ暗な気分だ。
 「違うよ…そうじゃないんだって」
 出来るだけ明るく答えようとするけど、逆効果だった。俺の声は凄く震えてて、ちょっと鼻声。本当に泣きそうな声だなって、自分で分かるくらい。
 ジルチはマイスティックを小さいリュックにしまって、首を傾げながらもう一歩近づく。十センチ縮まった距離。こんなに近いのは、きっと初めてだ。どうしよう、さっきから鼻の奥がツキツキ痛い。手も震えちゃってるし、足もガクガクしそうだ。
 「じゃあ、なんなんだ?」
  腕組みをして、俺を見てる。いつも元気なジルチが、片眉を寄せてちょっと背を屈めて俺のコトを覗き込んでる。

 今はこの距離に甘えていたい。
 俺、もうちょっと勇気が出せたら、告白するよ。大好きだって。
 だからそれまで、俺を見ててね、ジルチ?

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2004/02/12
ひとりえっちかよ!とツッコみくらいそうなジルケ。
…うん、あのー、多分襲い受けだよ、ケイナ。
悲恋臭い雰囲気ですが大雑把なジルチの性格なので
まずもって大丈夫系になると思われます。
ケイナ視点だとここまでが狼の限界なので、一旦区切りです。長いしね。
ケイナがリリカルしててごめんなさい。
いいんですよ、きっとちょっと可愛いくらいで。と自分に言い聞かせちゃいました。
もともとマイナーなカプのせいで他人様からの萌えが少ない事少ない事。
次回も自家発電でお送り致しますので
宜敷くお願い致します。
あ、あと士朗を悪者扱いしてスミマセン…(ヘコヘコ
嫌いなんじゃないんですよ、
なんかこう、ああいう人だからこそ、カッコつけたがって失敗してくれそう、
とか思い込みでああいう感じなのですよ…怒らんでください〜(土下座)