DJ女子が、俗に言うヲタ娘設定です。
それでいて話の内容は H O M Oです。
ついでにちょっと高年齢層向けです。
あんまり快い話ではないので、男性DJが同人誌に直面するような話(!)は
読みたくないぞ!って人は、遠慮なく脱出してくださいませね。
大丈夫!っていう人のみレッツスクロール。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親友と恋人、どっちとる?
…その質問って、超ナンセンスだよな。

D.D.D.

 憧れの女の子の部屋。オカルト系白黒アイドル、高校のプリキュア(っと、コレって時事ネタだから通 じねえのかな)、そのキュアホワイトの一人で暮らす家に初めて踏み入った同級生男子、それが俺ってこった。今、まさに俺は女の子のプライベートって奴の目一杯詰まった部屋に案内されてる。真っ白いシーツのかかったベッド、可愛い小物と怪しい(コレがなけりゃと言う奴が多い)品物が整頓されて並べられた棚、茶色のクローゼット。ガラス張りのテーブルの足はピンクだ。壁に掛かる帽子もピンクや白、パステルブルー。まさに白魔法使いにお似合いの配色だ。
 「じゃ、ちょっと待っててね。お茶のお代わり煎れてくるから」
 はにかんだ笑顔が可愛いと思う。くるっと振り返るとオレンジ色がふんわり広がって、それだけでマイナスイオンが発生してそう。いい匂いもしてそう。あー、まさに、女の子ってモンだよなぁ…。
 扉が閉まって静まる部屋。空気が心無しかピンク色だぜ、ちくしょう。ここに来る間に「私の部屋に入るのって、生きてる男の子だと鉄火君が初めてなんだ」とか…ええと、まあちょっと怪しい発言は聞かなかったことにしてだな…なんだか男としちゃ名誉なセリフを頂いた。なんで今日彩 葉ん家に来てるかっつーと、ちっと前に白黒コンビと黒い方の店長に寿司を握ってたら、どうも穴子が好物だったらしく、穴子のお返しにって気に入りの店のケ−キを食わせてくれるってんで…テイクアウト専門だからって、呼んでくれたってこった。さすがだぜ、俺が今まで食ってきたケーキなんかより全然旨かった。ショートケーキとモンブラン、結構大きかったけど、女の子は別 腹ってやつかな、俺とか男子高校生ってのは年がら年中腹が減ってるモンだってよくお袋が言ってるけど、女の子は甘いモンは別 腹らしい。俺でも結構重たいなぁって食ってたのに、もう一つ買ってくれば良かったかな、なんて、可愛い顔でさらっと平然と言ってた。…女の子って未知の存在だ。
 にしてもアレだ、女の子の部屋って、みんなこうなのか? すっげえすっきりしてる…っていうか、ちゃんと収納するべき物が納まってるって言うか。俺の部屋、いつもライダースだのジャンパーだのが引っ掛かってるし、まあ親父に叱られるからなんとか誤魔化して押し込んでるけど、漫画とかCDとかもちょっと散らかってるし…いや、そいでも他の男連中の部屋より全然マシなんだけど。ちゃんと寝る場所あるし、足の踏み場もあるし。
 俺の目に一つ止まったのは、そんな綺麗な部屋に相応しくない、トレンチコートの引っ掛かった一角だった。ベッドの足元、なんか、積み重なってる薄い紙の山。それを隠すみたいに上からトレンチコートがかぶさってて…なぁ、綺麗な部屋ん中にさ、不釣り合いだと、気になるじゃねえか。俺はつい好奇心に負けてトレンチコートを捲ってみた。

 えーっと。これぞ、未知の世界。なんだろう、明らかに薄っぺらい本が積み重なってる。俺は雑誌の付録とかでこういう薄っぺらい本は見たことあるけど、なんかそういうんじゃない。一冊手に取ってみりゃ、俺の知ってる漫画のタイトルと、それに良く似たキャラクターの描かれた表紙。ひっくり返しゃ裏にはその漫画の出版社じゃなくて、全然知らない名前とサイトのURL。バーコードもねえ。他のも取ってみると、なんか、オンリー、とか、なんとかキャラ本、とか、よく分かんねえ表記ばっかで…そんなら、と思って、とりあえず絵が綺麗なのを選んで一冊開いてみた。
 なんていうか未知の世界。遭遇したものがあんまり自分の知識を越えてると人間て本気で固まるモンだな。

 男同士がキスしてる。そんなコマがしっかり俺の目に飛び込んで来ていた。しかも、その後の展開がまた驚く。片っぽのキャラがもう片っぽのキャラの服脱がせて、触って…っていうか、アレだ、セックスしてる。衝撃だぜ? 高校のヒロインの部屋にだ、俺とかでも知ってる漫画のキャラがホモってる本がある。しかも見ちまった。…とりあえず、本を戻してコートも掛けた。証拠隠滅。彩 葉はタイミングよく俺が元の場所に座り直した所で帰って来た。
 「お待たせ。はい、紅茶」
 トレイの上のカップとソーサーを差し出してまたはにかみ笑い。あーあ、この裏ッ側にああいうモン読んでるなんて現実、知りたくなかったっての。でもあれがなんだったかなんて当人に聞けるわけないだろ?だから…ポーカーフェイスでその場を後にした。こういうちっちゃなデートがまた続くと良いなぁとか、心の奥で飛び上がりそうになりながら。…反面 、帰宅したらあの本がなんだったのか調べよう、とも、思ってた。

 

 翌日ゲーセン。生憎女子連中はいない。ナイアの店で中華のお菓子を御馳走になってるんだそうで。三年生になり、授業が午前中で終ってしまう俺は、今日も兄貴に勝負を挑んでボロ負け、がっくりとベンチに座る慧靂に声をかける。
 「慧靂、俺昨日彩葉ンち行ってきたんだけど」
 落ち込んでいた慧靂が目の色を変えて俺を見た。…これは怨恨系、だ。ヤバいかと思いつつ、受け付けに仲裁の識店長がいることを横目で確認して、慧靂の隣に座る。
 「そんで…ちょっと気になるモン、見付けたんだ」
 「何」
 あーもー、怒ってる怒ってる。別にやましいことなんかあるわけねえじゃん。俺が好きなのはツーテイル。ロングでもストレートは好みじゃねえって。
 「ホモの本」
 ストレートに伝えれば、目をぱちくりとさせる。こういう子供じみた所が女子連中に可愛がられる要因なんだろうな。パードゥン? なんて聞き返すから、もう一度答えてやる。
 「だから、男と男がキスしたりヤってる本があったんだよ」
 「嘘だ」
 即答の否定。俺が嘘吐くかよ、と吐き捨てれば、それもそうだと納得顔。でもさ、と更に質問。
 「なんでそんなモンが?」
 「俺が知りたいよ」
 お手上げだなぁ、なんて。だって、俺にも慧靂にも未知の領域のことだぜ?一体全体、なんだって彩 葉んちにあんなモンがあったんだか…しかも、隠してあったって事はやましいってか、後ろめたい?んじゃねえのかな…とかさ…。
 「いっそ聞いてみるか?」
 「それはマズくねえ?」
 「それには及ばないよ」
 慧靂の提案に俺が否定をしめしたところで、キュアブラックのお兄様が登場為さった。あんまりナチュラルに会話に混じって来るモンだから俺も慧靂も一瞬言葉を失う。が、当の店長は気にもせずにごつい指輪の着いた指を顎に宛て、面 白がる様に俺と慧靂に笑いかける。
 「これでも年頃の女子高生の兄だからね。 彼女達が何を読んでるか位は知っているさ」

 セムさんの案内で一度店に行く事になり、俺は一体どんな種明かしかと、ほとんど不安な気分でセムさんの後に続いて歩いていた。慧靂も黙ったまま、というか、多分、ショッキングなんだろうな。ちょっと顔が青い。だってさ、考えても見てくれよ、好きな女がホモ好きな変態さんかもしれないんだぜ? セムさんは到って普通 にしてるけど、俺らには異常事態発生中で心理的にゃハラハラもんだ。
 店に着き、セムさんはリリスと彩葉が部屋にいない事を念のため確認しに家に入り、数分もしないうちに数冊のペラペラな本を持って来た…そう、彩 葉の家にあったのと同じようなの。
 「俗に同人誌と呼ばれるものでね」
 ぺらり、とカウンターの上に広がる数冊の本。
 「このバツ印がクセ者だな。 前にある名前が俗に攻め、後にある名前が受け、攻めと受けは名の通 り、攻めがセックスの際の男役、攻める方で、受けが女役、まあ、受け止める方、といった所だ」
 見れば確かに。これまた良く知ってる漫画のキャラクターがホモってるシーンを…直視したくねえんだけど、見てみると、表紙で名前が先になってた方のキャラが名前が後になってるキャラのケツにぶっ込んでるトコだった。隣で一緒になって本を開いた慧靂は真っ赤になって硬直してる。調子に乗って一緒に見るからだよ…年上ながらそういう浅はかっていうか、あんまり先を考えない行動は子供っぽく、なんとも無しに苦笑が漏れる。
 「これは二次創作と言ってね、漫画の作者本人の知らない所でひっそりと行われてる…ことになっている」
 「店長、何その曖昧な表現」
 俺がペラペラとページを捲りながら訪ねれば、なんとも言えない、半ば笑ってるような、それでいて眉をしかめる、苦笑とは言い難い奇妙な表情を作った。
 「作者本人がこの…同人誌を購入したりする事もあるし、年に二回、とある埋め立て地の上の施設で大々的にこういった本を売るイベントも行われてるのさ。 幾ら秘密とはいえ、これは最早公然の秘密といった所だ」
 ちなみに、と、セムさんはさらに付け足す。
 「リリスと彩葉も二人で同人誌を書いて売っているらしい」
 それこそ聞きたく無かったよ! と叫び出しそうだった。

 男二人、ちょっと途方に暮れながら帰路に着く。セム曰く、こんなものは女子高生にしては一般 的な趣味、ってことだったけど、でも俺には…多分、慧靂にも、理解し難い趣味であることに間違いはない。でもそれが事実かどうかは、セムに地図を印刷してもらったある店に行けば一目瞭然だった。
  まだ門限に時間があった俺と慧靂は、今店から歩いて一時間もしない所にある、大型のアニメ専門店に足を運んでいた。いつもはぼさぼさ頭の男とか、デブだのガリだのって要するに秋葉系しか見えてなかったけど、それとなく中を覗いてみると、放課後の今の時間帯、客の大半が女の子だった。歳も見掛けもピンキリ、みたままオタクなのもいれば制服の女子中高生、果 てはギャル系なんて分類をされるようなのまで居る。それでアニメや漫画のグッズとか、さっきのペラ本、同人誌を買い漁ってたりするのは、ちょっとショッキングな光景だ。中にはカップルも居たりするからオタク業界、侮れない。いや、侮るも何も、マイナスイメージしかなかったんだけどな、こういう場所…。
 「なぁ」
 低く、慧靂が呼び掛ける。
 「俺、ちょっとめげそうかも」
 同感だ、と溜め息を漏らす他無かった。今も真横を喋りながら店のロゴの入った青いビニール袋を下げてあるく女の子達。信じ難ぇよ、と、俺も呟いた。

 

 数日後、俺は興味本位で知ってる漫画の同人サイトという奴を見ていた。表って位 置は単純なファンアート、裏、ってなると…うん、もう説明なんていいよな。そういうこった。その内、そういう本を通 販してるサイトに当たった。それも、大手のコミュニティみたいな、ちゃんとした会社。
 出来心だった。

 「で、コレ、買ったんだ」
 「おう、ちょっと小遣い貰った後だったし」
 慧靂を呼んで俺の部屋、二人で並べて見てるのは、同人誌。しかも女性向け、18禁の文字入りの、ゲーセン仲間も読んでる漫画のやつ。適当に同じ組み合わせの…×がついてるのをカップリングって言うらしい…本を買ってみた。
 「でも、なんでだよ?」
 慧靂は先日よりは慎重な手付きでページを捲る。もちろん普通に人には言えないような内容なんだけど。
 「…いや、なんか、さ…これ、本当に気持ち良いのかなって」
 気になるんだ、これだけ色んな人間が描いてる漫画で、ホモ同人誌…やおいってので描かれたセックスは、全部気持ち良さそうなんだ。これが本当なら、ちょっと気になる。正直、俺は気持ち良い事が好きだし、それは年頃の男ならみんな…多分、みんなそうだ。…まぁ、童貞男の言う事じゃないかもしれねえけど、その、シてんのは、好きだし。
 「まさかお前…」
 慧靂が目に見えて青ざめる。うん、俺、お前が予想してる通りのことを考えてる、ごめん。
 「試してみねえ?」
 しばらく、気分の悪い間が開いた。それから、ふう、とどちらともなく空気を吐いた。
 「あのさ」
 声は重なった。俺と慧靂は顔を見合わせる。 慧靂はほとんど無表情だ。俺もちょっと、硬い。上手く話せない感じで、喉が乾いてる。
 「…先、話してくれよ」
 俺が先を促せば、慧靂は少し息を吸い込んで、それから長く、吐き出した。
 「俺も、ちょっと考えてた」
 何を、と促せば、だから、と呆れたような即答。
 
「本当に気持ち良いのかどうかって」
 いつもよりも歯切れ悪く、俺よりも年上のはずの男は、悪戯がばれて舌打ちをするみたいに俺に吐き捨てた。なんだ、やっぱりなんだかんだ言っても気持ち良い事が好きなんじゃん。
 「じゃ、やっぱり」
 「じゃんけんだからな!」
 俺が言わんとする事は先を制されてしまって言葉にならなかった。じゃんけんで、何を決めるかなんてもう分かってる。俺は自分の勝ちを祈る。試すにしろなんにしろ、俺が「攻め」をやりたい。それは慧靂も同じだろうな。「受け」をやることは即ち男としてのプライドを失う事になりかねない気がする。その男のプライドを賭けてでも、男同士のセックスは試してみたいと思わせる魅力があった…んだと、思う。
 「恨みっこ無しだぜ!」
 「最初はグー!」
 「「じゃんっけんっポン!」」

 結果、一発で勝負は決まった。俺がもしあの瞬間にパーを出していたら負けていた。慧靂は何故かピースが好きなのを覚えていた、俺の頭脳に感謝。俺は綺麗にグーでストレート勝ちして、慧靂はすっぱりとチョキで負けた。つまり、同人誌的な表現をすれば、鉄火×慧靂とめでたく決まったわけ。ま、御愁傷様ってやつかな。

 

 あとで慧靂が散々ぐだぐだ言ったものの、それを聞かないふりでその日を定めた。まず場所が決まらなくてどうしようか、と散々話し合っている内、俺はカレンダーに書き込まれた家族の予定表の中身に気付く。再来週金曜日から月曜夕方まで親父とお袋が久々の休暇を取って旅行、その間は家には誰もいない。チャンス、俺は慧靂にその間泊まりに来てもらうことにした。それなら誰の目にも触れないで好きなだけ好きな事ができる。慧靂も結局、しぶしぶ了承した。ったく、ここまで来ちまったら腹括れって。

 

 

 そして決戦の金曜日が来た。…なんてのは大袈裟だけど、いつもよりも大きいバッグを肩から下げて、夕日の中、慧靂は青い顔で俺の家の前に来ていた。この二週間、ゲーセンでもバイト先でも覇気の無いツラばっかしてやがって、決まっちまったモンにぐだぐだ言うなんて日本男児として恥だぜ。…あ、ハーフなんだっけ。じゃああれだ、侍らしくねえ。それでもちゃんと誠意はあんだよな。ちゃんと来てくれたし。
 「ま、とりあえず上がれよ」
 「…おう」
 俺が手招きして荷物を受け取り、裏口…一階、店の奥の台所と茶の間に繋がる玄関から上がり込み、それから長い階段を上がって三階の俺の部屋へ。誰も無い事に加えて、俺の家は店に家庭内で起こる音を響かせない為に、俺が小さい頃に全部の部屋が防音処理されている。外にも響かないから、何してるかもばれない。だからファーボの存在もなんとかバレないでいるんだ。あいつ、すっげえ爆音でデラすんの好きだからなぁ…。ちなみに今日は前々から預かってみたいと言っていたセリカの家にいるはずだ。名目上は俺がテスト前の勉強をするからってことにしてあるし、ファーボも俺がテスト勉強をするものと思ってるが…畜生、ちょっと羨ましいぞ、ファー坊。
 階段を上がりきり、俺の部屋に慧靂の荷物を置く。慧靂は脱力したみたいにすとん、とベッドに座り込んだ。
 「はぁ…で、どうすんだよ」
 今日もまた恨みがましい目つきで俺を睨む。いい加減にしないと猫けしかけるぞ。
 「とりあえず、風呂。 それから、な」
 先入って来いよ、と、俺は風呂場に案内する。来る時間は決まっていたから、先に沸かしておいた。慧靂が脱衣場の扉を閉めたところで、俺は部屋に戻って本を開く。同人誌と、いわゆるさぶ系というジャンルのサイトのプリントだ。身体は綺麗に洗い、最初は互いにスキンシップ、気分が乗って来たらキスして…なんか手順も決まってるのかどうかよく分からない。少なくとも、俺の買った同人誌の内一冊を除いて痛くなさそうだったけど、実際はベビーローションが必要だし、ゴムも必要だし。女の子とスるのと変わらない。慧靂は女みたいに扱われたら嫌がるかな…そんなことを思いながら、ちゃんと出来るか今更の様に不安になってきていた。いや、絶対上手くいく。そう自分に言い聞かせながら、慧靂が風呂から上がるのを、ゆっくりと待った。

 慧靂と入れ代わりで風呂に入り、洗いざらしのジーパン、それに適当なシャツという出で立ちの男が二人、部屋のベッドの上で向かい合うまでには日が落ちて外は暗くなっていた。電気も付けない部屋、散らかった机の上、ロックにパンクにテクノにユーロと俺の趣味だけで並べたCDラック、ゴツいのをわざわざ選んだコンポ、アクセサリーも机の上にバラバラと散乱してるし、読みかけの漫画がベッドの下に押し込まれてる。こんな部屋で童貞喪失…いや、俺の理想としては女の子の匂いが一杯の部屋とか、ある意味妄想の範囲を出ないような事を考えてたんだけど。こういうのもリアルな感じでいいかも知れない。
 普段セット済みの髪が、濡れて重力に任せるままになっている。互いに互いが見なれない姿だ。
 「髪の毛落ち着いてると、鉄火結構イケてる系じゃん、立てるのやめたら?」
 「お前は女みたいじゃねえか、いっそセムにそれに合うスカート作ってもらえよ」
 悪態の応酬は発展しないものの、緊張を解そうとするかの様に互いをけなし合う。そうしながら、俺は慧靂の左手をなるべく緩く握った。くすぐったいな、と慧靂は目を伏せて笑む。今度は右手でゆっくり、指先だけで顔のラインをなぞった。意外に華奢っこいし、顔は丸い。目も結構大きくて、なんだか猫みたいな顔に見えた。こいつの猫嫌いは同族嫌悪なのか、と、下らない事を考える。
 唇に指先が触れると、怯えたみたいに身体が小さく震えた。けれど、俺はその身体が後ろに引く前に顎を、漫画でするみたいにくいっと持ち上げて、そこで動きを止めてしまう。キス、しちまうかどうか…いいや迷っても仕方ねえ、勢い込んで唇と唇をくっ付けた。ちょっと失敗、歯同士ぶつかってコツッ、と籠った音がしたけど、まだ躊躇ってる慧靂の口と歯を無理矢理舌でこじ開けて、口の中に舌を入れる。今度は俺が少しだけびくっとした。人の舌に舌で触る事なんて、普通 に生活してりゃ無い事だ。こんなに柔らかいモンが口に納まってるなんて、自分のですら解らないのに、相手の口の中の舌は柔らかくて触ると気持ちよかった。滑るようでいて、それでもちょっと互いの舌が引っ掛かり合う。口の周りは唾液でベタベタになるけど、その水音がまた変にヤらしい。慧靂の白い髪の毛がそこに少し貼り付いてる。
 「ふ、んんん…」
 鼻息が荒い。口での呼吸が難しいもんだから、そろそろ苦しくて、口と同時に顎を放す。ぼすん、と慧靂は尻餅をついて、俺は大きく溜め息を吐いた。どっちの息も長距離マラソンをしたみたいに短く吸って吐いてを繰り替えしていて、傍から見たら相当滑稽なんだろうと思ったらちょっと笑える。ひひ、と笑い顔が出てこない様に食いしばった歯の間から息が漏れたら、慧靂も口の片端だけ上げて、噛み潰したみたいな顔でいた。
 「…もう、終り?」
 寸前、鼻で笑ってデコピン一発。意外に痛い一撃を食らったが、俺は首を横に振るなりぐいと挑発してる奴の肩を押して思いきり後ろに倒して、べったり身体の上に寝そべる。
 「まどろっこしいことしてると、なんか、さ…」
  耳の横、慧靂の声が少し震えてる。
 「俺、逃げそうだから、早く、な」
 ぐっと腕で身体を持ち上げ、慧靂と目が合った。息切れで涙目になってる所為で、大きな目がまるで綺麗な水たまりみたいだった。うん、と頷くと、慧靂はまた、目を伏せる。湖面 が見えなくなってしまうと、俺は一瞬目のやり場に困ったが、時間を掛けまいと少し後ずさる。
 逃げられない様に、素早く。まどろっこしいことは抜きで、いきなりジーパンを脱がせてトランクスも脱がせた。褐色の身体がビクリと痙攣して短い息の音がしたけど、構わずに下は全部ベッドの下に投げ捨てて、膝を押して足を広げさせた。…つーか、タンニングってここも真っ黒なんだ…ちょっとビビる。だってさ、自然の日光じゃなくて機械の光だぜ? なんか火傷しそう…いや、俺はしないし、実際股間は綺麗なモンだから火傷なんかしねえんだろうけど、ちょっとここまで真っ黒とは思わなかったなぁ…
 「何、しげしげ眺めてんだよ」
 慧靂は手の平で多分赤くなってるほっぺたを隠しながら少し首を持ち上げて、照れ隠しなのか足を跳ね上げて俺の肩を蹴った。さっきのデコピンのが痛かったな。
 俺は答えず、何も悟らせる機会を作らずに即座に屈んで股間でプラプラしてるアレを軽く握ってやった。大きさも長さも俺とあんま変わらない。ただ、黒いけど。悲鳴でも上げかけたのか口を押さえて一瞬逃げそうになる慧靂の腰をしっかり左手で押さえて、右手でゆるゆる擦ってやる。最初は興奮の兆しも見えなくて、やっぱりホモじゃないから勃たねえかな、と思ってたんだけど、それがちょっとずつ大きくなってくのを感じて、少し動きを早めたら慧靂の短い悲鳴と一緒に、勢いを増して膨らんだ。あんまり露骨に感じるからちょっと面 白がって強く握ったら今度は…えーと、なんだっけ、先走り?だっけ?が溢れて、俺の手と慧靂のアレを濡らして、ぴちゃとかぬ ちゃとかいう音がして、しつこく何度も音を立てながら擦るのをやめないでいると、慧靂はもうシーツを破けるんじゃないかってくらいに握りしめてて…ちらと、外から差し込む街灯の光に、慧靂の顔の、目の下、頬のあたりが、そこだけがちらちらと反射の仕方が違った
。もしかして、泣いてる? ちょっとやり過ぎたかと手を放すと、ふくぅ、と、手に抑え込まれた口か鼻から声が、控えめに俺の耳に入る。
 「ごめん、やりすぎた…?」
 背を起こし、顔を覗き込むと、手を少し首に避けて、長いのに浅い息遣いで、微かに首を横に振ってから、囁くみたいに答えた。
 「わ、かんね…」
 それから、少し下半身を見て、ふっと、また息を吐く。
 「でもっ…も、イき、そ…」
 きっと慧靂の声の中で極小音量の言葉は、静かな部屋にはちゃんと聴こえた。震えてる慧靂のアレは張り詰めて今にも弾けそうな水風船みたいに、最後の一刺激を待ってる。息の合間、続けて、という囁きは俺の錯覚だったのかもしれないけど、それに従う様に、元の位 置まで戻って、慧靂の顔を見つめながら、しっかりと握り込んで親指で筋を擦る。それまでは俺の行動を見ていた慧靂は、ぎゅっと目を閉じ、口を手で覆う事もしないで、喉から高い快楽の声を上げた。女の様に、じゃない。それこそ男としてのプライドを守るような、可愛げなんてない、そのくせ他人から与えられる気持ちよさに抵抗をするための声じゃない。イかされても男であるプライドを守ろうとするような、そんな忍耐の声みたいに聴こえた。
 最後の垣根が壊れて、最後に飛沫と一緒にまた声を上げた。びくっびくっと余波的な射精を二三回繰り替えし、それが納まるとソレは全体の緊張を無くして、萎みながらダラリ、と垂れ下がる。
 そこまできて、俺は初めて自分のトランクスが湿ってる事に気付いた。そろりとジーパンの前に、それとなく触れる。痺れが走る。他人をイかせるのは当然初めてで、ましてその相手は男だけど、俺は確かにそれを見て、して、興奮していた。ジーパンの硬さがそれを露呈しないだけだ。性的であるというだけかもしれなくても慧靂にエロい気持ちを持ったことに偽り様がなくて、俺は盗み見る様にして慧靂の顔を窺う。まだ大きく呼吸してる慧靂は声を上げたその口を開けたままで、唇は唾液でぬ るぬるした粘着質に照り返してた。薄暗がりにも赤くなってるほっぺたは汗ばんだ所為か艶を持ってたし、涙は流していないけど、目は潤んでしっとりと睫 毛も光らせてるみたいだった。白い飛沫の掛かった細い腹筋までヤラしい。可愛いとか、綺麗とか、そういうのとは程遠いけど、でも。
 「え、慧靂っ」
 俺の声は震えてるのかな。俺のこんな、男に興奮してるとこ、気取られてるのかな…。
 「続き…いいか?」
 なるべく、平静を装いたかった。親友の、ある意味羞恥的なこんな場面を、自分がしているとはいえそんな場面 に興奮してるだなんて、悟られたくなかった。何故か俺は臆病にそんなことを思って、なるべく平淡な声で問いかける。
 「嫌なら、いいから」
 こちらを、ぐっと肘で上半身を持ち上げた慧靂が窺ってる。お互いの位置までは暗がりが支配してる。互いの姿は街灯が照らし出してる。
 「鉄火、こっち」
 手招き。逡巡するが躊躇いと感じられないくらいのギリギリのタイムラグで膝歩きに慧靂の身体を跨ぎながら、ベッドサイドの板に寄りかかった慧靂の前まで行った。
 慧靂は少し俺を見上げていて、少し目を伏せて、それから、今度はちゃんと見上げて言った。
 「続きっても、その…鉄火のが、勃ってなきゃできないだろ…」
 言ってからまた目を伏せた。どうしよう、もう勃ってるんだって、言うべきか?
 迷ってる暇は無かった、遅かった。慧靂は俺の股間に手を添えて、はっと息を飲んだのが聞こえる。
 「鉄火」
 「ごめん、慧靂…」
 手を合わせて頭を下げる。だって、なぁ…これじゃホントに、ホモじゃん、俺…。
 「…続き」
 小さな溜め息の意図は汲めなかった。けど、慧靂がしようと言った以上は続行だ。俺が下がろうとしたら、慧靂がジーパンのボタンを外し、チャックを下ろした。小さな開放感。圧迫から逃れた俺の息子は存在主張をするようにトランクスを突っ張らせてる。そのトランクスも、一瞬手を引いて、でも何か力強さを持ってぐいと慧靂の手が引き下げた。反動でバネみたいに揺れて、俺は溜め息を吐き出した。元気さも有り余る俺のアレが、慧靂の指に触られてる。くすぐったいような小さな刺激はもどかしくて、そのぬ るつきがもっと強くなれと、願ってしまう。けど、慧靂の手はそこから離れて、床に投げたズボンへ伸びた。そのポケットから薄っぺたくて真ん中にリング状のものが浮き上がってる袋が出て来て、あっという間にそれを開けてしまう。ゴムはちょっと独特の臭いがした気がしたけど、慧靂は構わず液溜を摘んで俺のモノの上に押し付ける。そしてくるくるくるっと丸まっていたゴムを根元まで被せた。初めて着けるゴムは慧靂によってきっちり破れることなく付けられた。
 「ちゃんとローション付けろよ…」
 染まる息が注意を促すけど、俺はいや、と牽制。
 「先にちゃんと、お前の準備してから」
 後ろに下がって慧靂の足の間に座り、慧靂を元の様にベッドに横たわらせ、腰を持ち上げて俺の膝をその下に潜り込ませる。股間のさらに奥、これから俺が押し入る予定の場所が、ぎゅっと閉じてそこにあるのが見えた。俗に菊、と言われるのが納得出来る。見た所、同人誌みたいに入れることなんか出来そうにないけど、時間をかければそれも可能…ザブ系のサイトは親切丁寧に記述してくれていた。慧靂は慧靂で、持ち上げられて見えた自分のモノとぬ めりを見て目を伏せている。
 ベッドの後ろ、俺のコンポやらなんやら並んでる低い棚から隠す様にして置いてあったベビーローションを手に取り、頑に閉じているそこと、指に少し垂らす。さらさらしたローションで指は滑り、その指をちょっと押し込むと、滑って入った。けど、快いものじゃないのは当たり前で、慧靂はぐっと唸った。それてもゆっくり人差し指の第二関節くらいまでは埋まって、どっちかっていうと俺の方が驚いた。その指をくるくると動かすと、きゅうっと音がしそうなくらいに指は締め付けられた。それを解さなきゃいけない。指に這わせる様にして更にローションを中に流し込み、俺は耐久戦にチャレンジを始めた。

 もう何分たっただろう。湿った音と俺が動かす指の音がずうっと続く。慧靂も黙り、俺も黙ってる。指はもう二本入っていて、それぞれがまだ第二関節っていう所だ。その指を、やっと少し奥へ進めることが出来そうなくらいに広がって来て、ほんの少し、強く押し込んだ。
 「あっ!」
 ずぶっと、一気に指は根元まで、文字どおり
飲み込まれた。まるで誘い込むように慧靂のそこがぐっと、入りかけた指を引っ張ったんだ。びっくりしながら、まだもう少しだ、と自分に聞かせる様にまた指を動かすと、今度は慧靂が
 「あっ!」
 と声を上げた。痛かったんだろうか? 思いながらもう一度指を動かすと、また声が上がる。人差し指の触れるぷくりとした感触の場所、そこに触ると、声が上がってる。しかも、少しずつ前のモノが元気になってきてる。最初は解らなかったけど、段々膨らんできて、何度もつっ突くみたいに触ってると、目に見えて大きくなった。
 「やだっ、鉄っ…!」
 自分で自分のモノを見て、慧靂は白い髪の毛の中に身体を捻って顔を埋めてしまう。
 「どんな感じ…?」
 興味本位に聞いてみると、ふう、ふうと荒く息をしながら、慧靂は俺か、もしくは自分の下半身をちらっと見た。そして拳で額を押さえながら、
 「アレん中から、触られてるみてぇ…あっ!」
 そう呟き終るか否かで、ぴくん、と震えて、先走りがとぽりと音を立てる。大分拡がった慧靂のナカで、俺の指はまだ動いている。ますます興奮で先走りが溢れて、またイっちまうかくらいの所で、俺は指をゆっくりと抜いた。
 今度は、もう慧靂はプライドを守り通そうとする意思の見える声を出す事はなかった。代わりにただただ声を堪えていた。でも、俺はゴムの上からローションを滴るくらいぶっかけて、容赦なく、慧靂の腰の真ん中に突き立てる。
 「入れるぞ」
 答えは返ってこなかった。小さな溜め息が何度も聞こえるだけだ。俺はそこに、自分のモノをしっかりと押し込んだ。驚く程すんなり入ったけど、でも途中で詰まって、じりじりと押し拡げていく。その時は慧靂も呻いてたけど、俺の腰と慧靂の尻がぴったりくっつくと、お互いに長々と息を吐いた。溜め息ばっかりだなあ、セックスってこんなモンなのかな。現状が急に恥ずかしくなって誤魔化すような思考の中で、慧靂の中の熱さも感じる。人の体内は熱く、しかも狭くて、俺は締め付けられたような状態だった。慧靂は今、俺の拡げて着いた腕の間に、少し眉を寄せて、俺から目を逸らして居る。けど俺の視線に気付いて、ふと腕を伸ばして来た。
 「…眼鏡、外せよ…」
 日焼け色の指は、する、と耳から外れた蔓を折り畳み、ベッドの端から眼鏡を転がして落とす。こうなると慧靂の顔がよく見えなくて、なんだか不安になった。肘を折って、慧靂の上にさっきみたいに寝そべった。ひ、と小さな声は、慧靂のアレが俺の腹に擦れたからだろうな。熱くてぬ るぬるしたソレは慧靂と俺の腹の間に挟まってる。慧靂はなんとかしようともぞもぞしているけど、俺はどうする気もないから慧靂の顔を眺める事に集中した。
 ぼやけた視界にようやく鮮明に映る慧靂の汗ばんだ肌はやっぱり褐色で、暗い中でもぼんやりと茶色く見える。睫 毛は士朗と同じ色の、灰色で、白くない。あとで下の毛も見てやろ。
 「ちょっと、鉄火ッ!」
 動くのは辞めたものの、慧靂は俺の胸をグイグイ押しながら身体を起こさせようとする。
 悪戯心で、そのまま少し腰を引いて、ぐっとつっこんだ。
 「ひゃっ!」
 びくりと慧靂のアレが腹の下で震えた。本当、まさしく同人誌の世界だ。男同士のセックスでこんな気持ち良いのは、本当だった。
 慧靂が、緩く俺の首に腕を回した。
 「鉄、火ぁ…」
 力は入らないのか、腕だけが緩く。
 俺を見つめて、何か言おうとして言わない。多分、俺もだけど、もどかしいんだ。こんな生殺しの状態は辛い。
 断わりも入れず、腰を引いて、また押し込む。あとはひたすら突き上げる事に終止した。慧靂は俺の名前を呼んで、何度も何度もひゃあ、とか、ああ、とか、本当、同人誌みたいに叫んだ。あ、でもやぁあは言わなかったかな。ふぁ、とかうわ、とか、くううって長く唸ったりとか、でも、半分くらい聴こえてなくて、もう本当、初めてのセックスが気持ち良くてそれしかなくて、一人でシてんのと比べ物にならなくて、ひたすら慧靂の腰を押さえながら動いてて…慧靂がもう、と言った所で、俺もヤバくて、思いきり早く動いたら、慧靂の中に突っ込んだ所で、イってしまった。
 「うあっ!」
 慧靂も、叫んで俺と自分の腹にまた射精した。
 はぁ…と、長い溜め息はどちらも吐いていた。ゆっくりと腰を引いて、中から抜くと、ゴムの中に俺の出したモンが溜まってた。何となく気恥ずかしくて、すぐに口を結んでゴミ箱に投げ入れる。慧靂はぐったりとしたままだ。
 「慧靂?」
 何故か心配になって声をかけてみると、ゆっくり、でも顔をしかめて背中を起こし、肩を落としてはぁ、とまた溜め息。それから俺を見て、バツが悪そうに、目を逸らした。それから、あー、とまた溜め息。溜め息ばっかだな、ホント。

 それから、慧靂も俺も身体だけ適当にタオルで拭いてすぐに寝てしまった。セックスって結構体力使うんだな、疲れて風呂に入り直そうとも思わなかったし、二人で裸のまま同じベッドに転がってても気にもならない。ただ凄く、スッキリしたのに、一言も言葉を出せなくて気まずかったけど…。

 深夜になって二人して空腹で起きた。慧靂が風呂に入ってる間に、俺は自宅冷蔵庫にあるネタで適当を握っておく。時々聞こえるシャワーの音…多分、タオルを取るのかなんかで扉を開いてるから聞こえる…その音さえ、俺を責めてるみたいに聞こえる。変態めって。確かに変態だよな、童貞喪失の相手は親友、その親友の男イかせて自分も興奮してて、しかもそれを誘ったのは俺と来た。なんでそんなこと思ったんだろ…一重に俺が変態だから、その言葉でかたが着く。
 風呂から上がってきた慧靂が、きっちり並んだ寿司を一瞥して、顔を上げる。俺は逆に顔を伏せた。何を言われるだろう、ああ、俺の馬鹿!
 「…」
 沈黙の気まずさは続く。
 「…鉄火」
 呼ばれ、思わず顔をあげると、慧靂は椅子に座ってテーブルに肘ついて、真っ白なタオルで顔を隠してた。
 「…俺、変態かも」
 それは俺が言いたい言葉だった。何かと単純に口に出す慧靂の言葉に、多分嘘は無い。嘘ついてどうこうなるモンでもないしな。
 「…また、したいかもって…思った…」
 ごめん、と小さな声はタオルが吸い込んじまったけど、なんで謝るんだろう、俺だってまた…したいと思ったしさ。
 「俺も」
 隣に座って、さっきから震えてる肩を少し腕でこっちに引き寄せる。
 「俺もだから」
 タオルをひっぱると簡単に取れた。泣き顔でぐしゃぐしゃの慧靂の涙を、タオルで丁寧に拭った。目は俺を見て、途中から大きくなった嗚咽と一緒に涙をぼろぼろ零しながら閉じた。

 結局、その後もう一日は妙にギクシャクと過ごす事になる。夕方、どちらともなくお互いの身体に触りあい、同じ夜がもう一度やってきた。そうしていて、やっと、俺は気持ち良い事に抵抗なんて無駄 だと悟った。終ってからも同じベッド、同じように深夜に起きだして二人で風呂に入った。狭くてどう足掻いても身体が密着する空間だけど、不思議と普通 の雰囲気だったように思う。
 こうして、俺と慧靂の同人誌から始まったおかしな状態は一度終った。

 それから時々、二人で通販共同購入したり、俺んちに泊まりに来たりする事が多くなった。夜になってお互いおかしいな、と笑いながら身体を交わす。同人誌もかなり読んだし、ネットの上にある漫画やらショートストーリーなんてのも目を通 す。まったく、女の子の想像力ってのは凄い。本当のことも、そうであってほしいという望みも、二次創作の中に描き出してる。男が書いた下手なセックス描写 ばかりの小説や漫画なんかより、ずっと気持ち良いことを知ってる…もしくは、想像している。それを見て、俺と慧靂はまた試してみようか、とか良いながら色々と手を出すんだ。
 一緒になって踊るのは、親友なのか、恋人なのか。ありきたりの質問に、どっちも、と答える俺がいた。
 「鉄火!」
 いつもと何一つも変わらない識さんとこのゲーセン。いつもと変わらない、俺と親友。中身だけが、少し、変わっていた。

 

D.ance with D.arlin' or D.ere.  End
2005/06/01
後半がややグダグダに感じますけど、
想像してください☆的な終わりにしたくなかったんで。
なんか最初はそれでいいかなぁって思ったんだけど、そうやって書いてみてから
それじゃアカーン!と気付いてしまって(笑
ともあれ、どこの二次創作サイトにも無さそうなテーマで一発。
自分も男では無いのでどこまで本当かなんて判りませんし、
まして小説の中に本当は盛り込みたい単語とシチュを出せないのが
二次創作とは分かってるんですが…ね。
本当はアレコレソレっていわないでちゃんと書きたいのですよ、男が使う言葉で。

ともあれ、こんななっがい駄文読んでくださって有難うございます。