*注意*
ここから先、非常に不愉快なお話の閑話休題です。
DJキャラがまともな人間として描かれていません
やおいじゃないです。今回は独りぼっちです。
興味が無い人は回れ右!クイックターンで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に読むんですか?
いいんですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではどうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 具合が悪い。

Kopfschmerzen …Grim[m] Monster… Episode of the Monday -Shem's mutter to himself -

 昨晩から急に背中全体に倦怠感が漂った。今はぐったりとベッドに横たえる自分の姿を、まるで見せつけるかの様にそこに立つ鏡を睨み付けている。眉間に皺を寄せ、表情は険しい。それというのも倦怠感だけが理由では無いからだ。無論、鏡は自分で置いたものではあるが、今になって初めて、そこに置くのではなかったと後悔している。
 「兄さん、具合はどう?」
 ノックの後、静々と部屋を覗き込んだのは、制服姿の妹だった。彼女は私の顔をじっと見つめる。いや、顔以外はタオルケットに包まれて見えないから、顔以外を見る様には出来ないのだろう。
 「ああ、大丈夫…頭痛は酷いがね」
 体調の不良を種別で言うならば頭痛なのだが、それだけではないのだ。さすがの私もこれは応えた。相応しい罰を受けているとでも言えばいいのだろうか。
 「そう…無理は、しないでね。 …後で、薬と夕飯、持って来るから」
 妹はそれだけ言うと部屋から出ていく。朝、部屋に入ろうとしたのをつい大声でダメだと制止してしまった。何の理由の説明も無しにそんなことをすれば、少しは機嫌も悪くなる所を、私の妹は静かにその言葉を受け取って、部屋へは入って来ない。食事も食欲がないので、出ていく後ろ姿に断った。妹がどう思っているかは分からないが、少なくとも私が今は部屋に入らないでほしいくらいに不調を来たしていると理解していればいいな、と思う。
 ただそれだけでもないのだが。

 今朝目覚めて、倦怠感が取れていなくて、ああ、今日は仕事は無理だろうかと脳が独り吐き出した。それに気付いた左腕が、枕元の充電器に手を伸ばして、少々乱暴に携帯電話を外す。エリカ君にメールを、と思い、携帯電話の画面 を見た。
 いや、画面は結局後になるまで見なかったのだ。見られなかったと言った方が正しい。その時既にメールが数件(深夜帯まで起きている御機嫌な連中からだった)来ていたが、それよりも何よりもまず、妹が部屋にいないことを確認した。これは不味い、今日はベッドを出ることもままならないな、驚きと共に焦りが生じる。
 携帯を持つ左腕は、黒い獣毛に覆われた夜の姿をしていた。白っぽいが根元は血管が詰まっていて赤紫が混じっている様に見える爪、合皮に似た肉球、何より毛足の長い毛皮。全てが私の本性を曝け出す様にそこにあった。幸い、布団の中を覗いて見えた部分は人間の形を失ってはいなかったが、風邪による不調だろうか、肉体のバランスが崩れたらしい。左腕にいつもの、夜の散歩から戻ってきて、自分に人間のスイッチを入れる様にする感覚を何度試してみても、全く、寸分も、その毛並みがざわめき毛穴の奥へと引っ込む様子はなかった。

 頭痛がする。昼間の間中ベッドにいるなど、一体いつぶりだろうか。普段こうして転がっている事も無いし、そうであっても大抵は酷い熱を出す事が多いので、ぐっすり一日寝込めば回復する。眠ろうと思わなくても激しい睡魔に教われ、意識などすぐに沈む…それが如何に幸せだったかを今、思い知らされていた。
 頭痛は周期的にズキリと痛み、少し意識がぼんやりすると途端に一撃を加えて遠ざかる。その一撃が眠気を押し退けるからたまったものではない。一応、妹が家を出てすぐにリビングに降りて、買い置きの薬の中から頭痛に効用があるものを選んで、水と一緒に飲み下した。胃が荒れない様に、水は多めに飲む。まぁ気休め程度だな、どうせ胃は荒れるだろうと自棄気味に脳味噌が呟こうとしたが、それも痛みが押し止めた。それから自室に戻り、再びベッドに転がった。手早くエリカにメールをし、今日の業務を任せる。それくらいしか出来ることもなかった。
 薬のビンを開け、その錠剤を受け取ったのは肉球。適当に錠剤をテーブルに置き、コップを握った獣の手。自分で目にするのは別 に何とも思わない。言うなれば自分の本性なのだ、否定したところでどうなるものでもない。ただそれを人前に晒す事が如何に危険か位 は分かっているつもりだ。もしかしたら、セムだから、で済ませてくれるかもしれないが、妹やその親友に見つかるのはなんとしても避けたい。きっと彼女達はそれが本性であるということに気付くだろう、何しろそういうことを良く調べている。その秘密が露出するということは、今まで犯してきた罪…食事の中身にも気付くだろうということだ。別 に根拠なんて無いが、用心はするに越したことないものだ。

 結局、そうして頭痛が弛んだ隙に眠って、夕方妹が帰宅して立てた物音で起きた。聴覚がおかしい、とすぐには気付かなかったが、少なくとも扉の向こうで階下にある玄関先にいる妹の、靴を脱ぐような音が聞こえるのはおかしいだろう。気付くなり反射的に耳に手をやるが、そこの形状は変化していなかった。ただ、妹の息遣いまで聞こえて、まるで傍にいるようで少し安心した。それだけだった。
 そして、妹は一度ふとんにすっぽりと身体を隠した私の部屋を覗き込んでから、台所へと降りていく。私はといえば、相変わらず続く…それでも少しは弱まった頭痛に苛まれて、さてこの左手は明日までに戻るだろうか、と独り溜め息を吐いていた。
 その時、唐突にあの少女の顔が思い浮かぶ。この所は行く度に準備良く待っていて、それでも私の感触にじっと耐える、私の半分しか生きていないあの少女のことだ。彼女の前でこの、今の私を晒したらどう言うだろうか。騙したと喚くだろうか、それとも身近な恐怖に戦くだろうか。もしかしたら賢い彼女の事だ、私が勝てない相手ではないと知った途端に私を捕獲しようとするかもしれない。連続猟奇殺人の犯人を捕まえたとなれば、一躍有名人だ。彼女に名声欲があるかなぞ私の知る所ではないが。

 ぼんやりと痛みとだるさを感じながら、今週が未だ始まったばかりだと言うことにほんの少し憂いを覚える。早く会いたいのに。

 微睡みは優しかった。夢うつつの中で彼女のはにかんだ笑顔を見た気がする。どうしてだろう、彼女は私に週に一度ではなく、二度来てほしいと強請った。もちろん、それは不可能なことじゃない。しかし、それを実行するには彼女の時間を奪い過ぎる。流石に私欲の為に彼女を疲労させるのは面 白くない。彼女が健康でいてくれなければ、あの肌の張りも、瑞々しい肉感もなくなってしまう。芳しい香りだって、きっと不健康であれば失われてしまうに決まってる。健康な、白くてまるで舌先で突ついただけでも削れ取れそうな表皮、その下で弾む筋肉と脂質…さながら食べごろの鶏か。彼女の身体はあまり脂肪がないから、きっと食べるとすればヘルシーな部類だろう。子供の柔らかい肉も嫌いではないが、今は彼女くらいの子をどうにかして捕えたくて仕方ない。津軽を食べてしまえば今のこの楽しみは終ってしまうし、かといって食欲を完全に押さえることも難しかった。同い年くらいの少女を喰らえば少しはこの状況も変わって来るだろうか。
 枕にした腕は上等の毛皮に覆われている。ここには幾人もの血潮が染み込み、幾人もの感触が残っている。だのに、それだけでは満足出来ない…狼の食欲は底なしで、終わりを知らぬ ものなのだろう。今は石鹸と自分の汗の匂いしかしないが、それでも、そこには腐臭もあるのかもしれない。微塵も感じないが。

 

 不意に目が覚める。携帯の時計は午前一時。随分ぐっすり眠ってしまったらしい。新着メールの一つは妹からで、もし目が覚めてお腹が空いているようならお粥があります、とだけ書いてあった。確かに空腹だ、とりあえず何か腹にいれよう。
 左腕もすっかり人間の形に戻っていた。明日はちゃんと仕事に出られる、と嬉しくなる。やはり仕事は生き甲斐だと思うし、何より仕事をしている自分が好きだからだ。自惚れも時には必要、客に直接ニーズを聞いたり、雑談だって楽しいものだ。そして、自分の服と交換に得られる金銭は妹と私の生活を支えてくれる。何にせよ、仕事無しでは私は生きられないのだ。
 その反面で、その生活からの解放も望んでいるのではないか…自問自答に答えはない。
 私は静かに階下に降り、手早く粥を温め返し、少しだけ塩を足して食べる。流し込む、と言った方が適切なくらいの素早さで平らげると、部屋に戻った。今夜は出掛けず、大人しくしていよう…。

 

 

 

Kopfschmerzen ende
2006/10/18

色んな意味で閑話休題です。
セムとしては罪悪感を感じていないつもりですが
めためた感じてますよ!っていうのを出したかったので。
とはいえ身勝手かつ自分勝手なので
津軽の所に行くのは辞めないですが。
あともちょっと続きます。