僕達ピンクの…
エロトピア
「こんなこと何所で覚えた?」
いつも金曜日に彼を買う「男」は 口を歪めた。嫌悪感ではなく、快楽に声をあげそうになるのを堪えての笑みだ。
「ん…秘密」
色の薄い唇が彼の雄をまとわりつくように愛撫する。
「口でやんのさ…そんなやり方初めてだよな」
金色の髪を撫でられて、どうしようもなく今口元にあるそれを求めてしまう。しかしまだだ。男は彼が勝手に繋がることを嫌がる。主導権は常に自分が持ちたい男なのだ。元は一族の長の跡取りだったと言う。しかし負けたのだ。今は一匹狼である。人狼であっても狼の掟は変わらないらしい。
「ほら、もういいからケツ出しな」
既に彼の中には暴れるピンクのバイブが仕込まれている。これを出すのは男ではなく彼の役目だ。
「…っん…」
彼が抜けそうな力をなんとか込めて、動き続ける物体を外へと無理矢理に出す。ごとん hhhhh
「ハハ、クソしてるみてえだな、何度見ても」
床に落ちたそれを気にもせず、青い皮膜の羽を掴んで男は彼を力だけで引き寄せた。
「ほら、お楽しみだ」
金色の目が彼を視姦する。否応なく昂り、目を伏せて催促すれば、彼は男の下でもがく他無いのだ。
一週間前
「おヨ?」
彼が出勤すると、緑色の髪の華奢な同僚が目を丸くした。
「珍しいねェ、キスマーク?」
跳ねるような足取りで彼に近づいて、首筋に指を這わせる。そこには赤く吸い取られた跡が残っていた。一ケ所だが、強く吸われたのかはっきりとしている。
「ああ、うん」
彼はその指を軽く払う。ふざけているだけなので別に同僚を嫌ってはいない。
「コイビトいたっけェ…?」
それは明らかに質問だったが、まるで聞かなかったかの様に彼は更衣室に入ってしまった。男娼に宿を提供する代わりに、ストリップショーを展開する異色のストリップ劇場、エロトピア。この建物が出来たのはつい最近で、地上階は時計屋と眼鏡屋になっている。二手に分かれた出入り口はそれぞれの店の奥にあり、傍目からは奥に続く道は関係者専用扉にしか見えない。完全会員制の劇場に入るには、ネクタイを白に代える必要がある。ブラックライトでエロトピアのロゴが一番広い部分に浮かび上がる仕掛けだ。入り口でそれを確認して、案内される。
中は中央に円形のステージを備えた円形の部屋だ。壁には距離感を失うような極彩 色の螺旋が幾つも描かれている。暗いライトは陰気ながらいやらしさを加速させる。テーブルや椅子も用意はされている。しかしこれはあまり意味がない。客は途中で椅子もテ−ブルも橋に寄せてしまうからだ。
ステージからは楽屋まで真直ぐに花道があり、カーテンの奥には控え場所と楽屋がある。ステージ中央にはバーがあり、必要に応じて中に引っ込んだりもする。
ここで毎晩淫猥なショーが行われる。そして特待会員にはレイトショーへの招待券が配られる…特待会員になるには特別 な条件が必要で、その条件は中々明かされない。常連客は皆、特待会員になるべく、毎晩通 うのだ。「ジュリ?」
「何?」
ジュリ、というのは彼…金髪碧眼で、青い皮膜の羽を持つ吸血鬼の名前である。本当は別 の名前があるらしいが、ドイツ語で名前を書いた所、ジュリ、と読まれたのを気に入ったらしい。
彼は元々はドイツの吸血鬼の貴族だったと噂されている。彼が来た頃に、ドイツである大きな貴族階級の一派が陥落したのだ。気位 の高い吸血鬼は、下級の魔族達に滅ぼされた。
「今日のショー、お相手いるって」
何人かの同僚が、その一言に羨望の眼差しを向ける。お相手がいる時、宿代を引いた給料とは別 に、高額の手当てが出る。というのも、企画された内容をこなさなければいけない上、お相手の希望であれば、その体液全般 を飲み干したり顔に浴びたり体に塗り付ける仕事でもあるからだ。
「へえ、どんなヒト?」
「オーカミだって」
どうする、ジュリ食べられちゃうよ、そんな野次が飛ぶ。しかし誰もが知っていた。ジュリを食べようとして逆に従うハメになった男が何人いることか。
「でもなんかァ…ウチの社長の指示らしィねェ…」
先ほど話し掛けてきた華奢な同僚が立ち聞きしてしまったと前置きして着替えながらジュリに話す。
「社長のやりたいようにってさァ。企画事態結構びっくりだヨ」
舞台上の設定等は明かされていない物の、普段の様にお相手が攻めてくるわけではないらしい。通 常なら半ば強姦のような状態で犯される痴態がショーなのだ。それ以外のケースは珍しいと言うより前例がない。
「しかもレイトショー。よっぽどお楽しみなんだねェ」
ジュリは自分の衣装を軽く叩いて、小さく溜息を吐いた。長い長い待ち時間の間に、ジュリは爪のマニキュアを全て塗り直した。赤いマニキュアの色つやは最高の状態だ。ペディキュアはわざと紫色にした。シルバーのラインを入れてトップコートを塗ると一層淫猥な印象を与える。
少しだけ目元にラメを入れる。泣くまではこれが輝いてアクセントになるのだ。そしてガーターベルトを調整し、すぐに脱げる様にする。今日はネグリジェ一枚以上の服を着てはいけないと専用クロ−ゼットに貼り紙がしてあった。下は好きに着ていいが貞操帯だけは避ける様に、そんな付け足された一言に笑いたくなる。今まで一度だって貞操帯など付けたことは無い。
タイツは履かない。ハイヒールは素足で、あとは何も身に付けない。あとは呼び鈴を待つだけだ…独り言は響く嬌声の中に消えた。仕事が終った同僚が着替えている中、ようやくレイトショーの呼び出しがあった。
花道を歩く。真ん中の舞台にはまだ何もない。気分を盛り上げる為の音楽が静かに流れている。既に床には幾らか染みがあるが、今いる観客達は皆少しも乱れていないスーツ姿を保っている。無論、股間に目をやればそうでもない事が窺えてしまうのだが。
「さあ、今宵も妖艶な吸血鬼ジュリのレイトショー、お相手は狼だ」
静かなナレーションが入り、花道にスポットライトが当たる。ジュリが先行して歩き、そこにスポットライトの追跡、そしてもう一つのスポットライトが映し出したのは…
手術台に縛られた緑の髪の毛の狼男だった。拘束する器具をを引き千切ろうとしてるのか、ガタガタ暴れている。口には猿轡をはめられて、声も出せない。四肢と胴を鉄か何か金属の拘束具で台に磔にされている。上半身は裸で、下半身はズボンだけ。その下半身には性的な変調は見えない。
その台が部隊の真ん中に運ばれ、ジュリがそこに並ぶ。どうすればいいかはもう分かっているが、ジュリすらそんな普段とは違う状況下に多少戸惑っていた。しばしの間が開いたが、ジュリは一つ深呼吸をするとそっと台に乗った。男の腹の上に跨がり、その頬にキスをした。音楽はゆったりと流れ、それに会わせてゆるゆると動くジュリはピンクのライトの中で一層艶かしい。何度か頬にキスをすると、向きを変えて男の身につける唯一の衣服のチャックを探った。ジュリはすぐには開けず、上から性器の形をなぞる。それは口付けにすら動じず、未だ柔らかくそこに存在した。
すっとチャックが緩む。赤いマニキュアの指が弛んだ入り口へと進入する。下着の無い素肌に指がすぐ届いて、中々に逞しい、とジュリが感想を持つような逸品が顔を覗かせた。その感触に男はまた暴れたが、ジュリは気にもせずそれに舌を近付けた。
ジュリへの行動指定は、相手をヤる気にさせる事。つまり、相手には全く行為に及ぶ気が無い状態を無理矢理にでもヤれる状態にしろ、ということらしかった。
そっと口に先を入れる。相変わらずゆったりとした音楽が部屋に響き、それに合わせるジュリの動きは緩慢で、やわらかく曲がるそれを口に収めてしまうまでに長い時間を要した。口に収めながら、ジュリは膝立ちになり、丁度下腹部が男の真上に来る様に背筋を伸ばした。
誰かが音楽に合わせて手拍子を始める。ジュリは手拍子に合わせながら、舌を動かした。拍手の度に口の中で質量 が増し、ジュリはまたその大きさに驚嘆する。顎は外れないが相当に多きなそれに、ジュリも興奮を隠せない。
一方、男は眉をしかめ、堪えようとしているが、直に反応する体に自ら戸惑い、また眼前にある自分に比べれば幾分か小さな男の印が下着の中で興奮し、少し先がはみ出てしまう様を見て、どうにも淫らな気分になるのを抑えられなかった。もし女にもっと大きな性器がついていれば、きっとこんな風にピンク色に染まって虚勢を張る様に膨れるのだろうと、おかしな方向に思考が働いてしまう。
ジュリがそっと、口からだしていくと、欲を抑え切れずに膨張したそれが周囲の目に触れる。観客の中にはそれを見ているだけで自らを慰め始める者が出る始末だった。
彼はハイヒールを脱いで、目隠しをポケットから取り出し、手際良く自分に巻き付けた。そして手探りでゆっくりと方向を整え、また男と向き合う形になる。男はもう暴れなかった。ジュリはそれを確認したのか、目隠しのまま男の体中をまさぐった。胸に触れた時、男の耳が跳ねたが、ジュリには見えなかった。そしてヘソに触る。ジュリが顔を近付けて、そこに舌を入れると、金色の髪が体中を擦り、男はそのくすぐったさに体を震わせた。
しばらくそうやって遊ぶと、ジュリは先が濡れ、大きさを増した逸品に背を付けて座り直した。誰もが息を飲む。ジュリが軽く立ち上がり、そのまま男の腰の上に腰を降ろした。ジュリには大き過ぎるのではないかと思いたくなるような膨れたそれを、ジュリは抵抗もなく体の中に受け入れ収めていく。そうなると観客もたまったものではない。机や椅子を蹴飛ばし、近隣の客と性行を始める。最早恒例行事だ。ジュリの痴態を見て、客は自らもその性行の快感を感じようとする。時折、上下関係的にペアが組めない客が出るが、一人でもできるので問題はなかった。
あとはジュリも感じ入ってしまう。男の大きさに恍惚とした表情で腰を上下に動かし、自分の気持ち良い場所を何度も擦る。相手の顔は見えていないが、猿轡と鼻から漏れる息の音が荒くなっているのを感じて、嬉しくなって増々激しく腰を動かした。「ジュリ、お疲れ」
まだ残っていた同僚に差し出されたコップを受け取り、一気に仰ぐ。結局ステージで二度も絶頂を迎え、終ってすぐに退場した。その時ちらりと見えたお相手の顔が、どうにも目の奥に焼き付いている…ジュリはそれをも飲み干したい気分だったが、脳細胞が許さなかった。最後に、お相手の男は赤い顔でジュリを見つめながら、酷く優しく笑っていたのだ。ジュリにしてみれば、今までの様にもっともっと、と求めたり、いやらしい顔で舐める様に眺められる事はあっても、ある種愛おしそうな表情など向けられた事もなかった。
「なんかさ、あのお相手さん、初めてみたいだったな」
一人がステージの方向に目を向ける。
「僕、結構彼好みかも」
その一言に、ジュリは溜息をつく。
今首筋についたキスマークは、お相手の男と同じ、狼男が付けたものだ。赤い髪の毛の狼男は、一度ジュリを買ってから、毎週土曜日になった瞬間買われ、翌朝までホテルで長い時間を過ごす。ジュリの仕事は日曜日と水曜日なので、仕事にこそ支障はなかったが、その気持ちは狼男に向けられていた。ジュリの仕事を知らない彼は、毎回彼をエロトピアの仕事ではないような犯し方をする。ジュリは彼が好きなのだ。
一瞬、ジュリはお前になどやるものか、と言いたくなっていた。それからジュリはレイトショーの度に緑色の髪の彼をお相手に、技を磨く事に終止した。狼男の性感帯を知るのにもってこいだったし、何より、お相手が彼に似ていると、どうしてかやりやすかった。
新しいやり方を覚える度、赤い彼も、緑の彼も、酷く喜んで自らを奮い立たせ、またジュリを快感の最上階へ導くのだ。一周間後
「何が欲しいか言ってみな?」
赤い髪の毛の彼に、今日も嬲られる。今、彼のものを舐め終り、広がった己の門を寂しく痙攣させているジュリは、迷わず答えた。
「貴方が欲しいな…」
エロトピアの経営は、国家公務員の希望によって行われている。
その事実が新聞のトップを飾ろうとして、闇に葬られた事を誰も知らない。
End
2003/09/14
言い訳しまくりたいですよー…
エロも上手じゃないんです。むしろ下手なくらいで。
必死で雰囲気出そうとしたけど、中々…ね…
多分加筆修正はありますが一応世に出してみます。
cari≠galiさんの歌詞はよろしいです
これなんてモロにホ@。
途中のあえぎ声も全部メンバーのみたいで 萌え萌え(笑)
一度聴いてみて欲しいかも…です。
これはいつも言ってますね(苦笑)