そんな私のささやかなる趣味。

ディラ。

 それはほんのささやかな事。ちょっとした事。
 例えば携帯電話のネックストラップ。
 例えばちょっと余ったメジャー。
 例えば繕い物の糸を切る時。
 例えば髪止めのゴム。
 例えばチョーカー。
 例えばネクタイ。
 例えば指輪。

 誰もが気付かないだろう、私がそれらに対してどんな思いでいるかなど。

 ふと、その感触に気付いたのが切っ掛けだった。どうという事もない、メジャーで常連のサイズを測り、余ったメジャーを指に三回ほど巻き付けただけだった。急に、そこに意識が集中した。
 少し締まってる。血流が止まる程ではない、しかし徐々に青くはなるだろうという状態。食い込んでいる感覚はその周辺の肉を盛り上がらせているのを気付かせ、少し曲げようとすると不自由にも動かない。

 携帯電話を忘れてしまうという事態を数回起こした為、私の携帯電話は長いネックストラップで首にかけてある。ネクタイの下に納まっていたそれが、たまたま商品整理中に、棚の端に引っ掛かった。ぐんと引っ張られ、少し首が締まる。喉仏当たりまで上がってきている帯が、ぐっと上から押さえ付け、呼吸が細くなって唾液が混じるとその音を頭蓋の中に響かせた。

 誕生日プレゼントに常連の一人から貰ったチョーカー、一番外側の穴では大き過ぎたので、一つ前の穴に通 す。途端、息苦しい。全体が締まり、溜め息をつくのもやっと。吸い込もうとすればみしみしと革製のチョーカーが軋んだ。

 露店で売られていた指輪、そのどこかアールヌーヴォーを思わせる彫刻に引かれて指を通 す。入ったものの、少し小さい。抜こうとすれば関節に引っ掛かって難儀した。引っ張られて指が伸びていそうな感触、血が止まりかけて紫色の指、捩る事で肉と皮を巻き込み、ますますきつくなる。

 

 もっとこうしていられればいいのに。

 

 男子たるもの避けられない事がいくつかある。週にニ、三度、部屋で一人雑誌を広げ、ティッシュを傍に用意するのもその一つだろう。寝静まった妹を起こさぬ 様に、雑誌を捲る。
 その時、ふと目についてしまったのが運の尽きだったんだろう。きつめのチョーカー、ロングストラップ、髪止めのゴムにメジャー。
 一つは首に掛け、少しきつく絞める。一つは手首にきつく巻く。後の二つは締まった時に不快なら外すつもりで巻き付けた。
 結わえて縛る。きゅっと締まる。

 いつもより時間が掛かった。だけどそれは長引かせたかったからだ。どうしよう、これは不味い、明日からネクタイはきっときつめに、メジャーをわざと余らせたりするだろう。
 メジャーで測る。わざと絞める。珍しく、もう一度出来そうだった。

 あとはもうその繰り返し。ずっと。

 

 

ディラ。end?

2005/12/17
感覚小説とでもいいたいんですがなんだか分かりませんね、マジで。
メジャーやらなんやら
日常的に絡み付いて締まるものとかキツくなるものがテーマです。
しかもそれを独り遊びに使うセムが書きたいとか
とんでもない欲求を発散してみました(笑)
なんかコレ、危ないなぁ。いつか絞殺になってしまいそうで…。
しかも一回で終らなそうで怖いなぁ…。
タイトルは意味無いですが分かる人には解ります。

無機物×セムという新しい発送をくれた
ピヨリ犬さんに捧げたいと思います。
変なもの贈りつけてごめんなさい(土下座)

え、おーこはもちろんチョーカーもネクタイも
きつめに絞める派ですよ。(ギャー)