『アードネーの世界』 |
カバー:生頼範義遥かなる未来、ハルマゲドン(最終戦争)後の地球は、不思議な魔法の使える世界であった。この最終戦争後の世界は、大きく分けて<西方>および、<東方>に別れていた。<東の帝国>に対する唯一の希望の光である勢力、西方の勢力である<自由の民>は第一作『西の反逆者』にて主人公ロルフによる<象>の力を借り、圧制を引いていた<東の帝国>に忠誠を誓っていた君主の一人、太守エイクマンの<城塞>を陥落させることに成功した。そして、第二作『黒の山脈』にて、<死者>ソムの城塞を陥落させた西方の勢力(西方軍)は日々、<アードネー>を信じた<アイランティア>のダンカン公を中心として、東方に向けて彼の軍隊を堰を切ったように大陸の中心部へと注ぎ込んでいた。<東方>の強力な皇帝オミナーは、この状況を打開すべく宿敵<アードネー>を自分の宮殿へと招いていた。しかし湖のさざ波となって現れた<アードネー>は皇帝の罠を見抜いて立ち去っていったのである。皇帝は麾下の侍従武官長であるアブナーに命じ、<アードネー>の正体を見破るように命令したのである。
そんな一方、我らが主人公ロルフは9人の仲間のいる偵察隊に加わっていた。とりわけ優秀な<西方>の兵士達、それはあの元東方の大守の一人であった豪傑チャップもその一人であったのであるが、ある日ロルフは<アードネー>からの声を受け取る。<アードネー>はロルフに「おとなの拳の大きさほどの、一見宝石のような、黒い物体を奪取してほしい」というお告げであった。その物体はどうやら<東方>に属するものの手の中にあるようである。メイウィックを隊長とする偵察隊は<アードネー>の導きに従って、東方の侍従武官長アブナーの率いる一行を尾行し、奪取するチャンスを狙っていた。メイウィックは巨鳥が携えてきた指示によって、その目的を確実にしたのである。ダンカンからのメッセージによれば、偵察隊はいかなる犠牲を払ってもその宝玉を奪取せよというものであった。アブナーがある隊商宿にとどまることが決定したとき、多少なりとも好機がおとづれたのである。そこでチャップとロフォードとロルフは商人に変装し、どうやって宝玉を奪取しようか案を練っていた。そんなとき、ロルフは水袋の栓をする間、井戸の近くにたったままでいた。一人の下女が井戸に水を汲みに井戸の側に来ていたのである。彼女の名前はキャサリン、元チャップの妻で美しき悪女のチャーミアンの側女であった。ロルフは彼女を逃がすことを条件に、宝石箱の中に入ったその物体の奪取に協力して欲しいという願ったのである。果たして彼らは奪取に成功するのか?そして<アードネー>とは何者なのか?東方と西方の闘いには終止符が打たれるのであろうか?
1979年に書かれた作品で、1983年に早川SF文庫の一冊として日本語に翻訳されています。イラストは株式会社光栄の歴史シュミレーションゲームのゲームパッケージのイラストレーションや平井和正さんの<ウルフガイ>シリーズの一連のイラスト、<ファウンデーション>シリーズで有名な、生頼範義さんです。黒を基調とした(夜をイメージした)鋭い剣を持った主人公ロルフと弓を持った将来の伴侶になるであろうキャサリンが中央に描かれ、核爆発のキノコ雲が不気味に赤々と描かれています。イラスト自身は緑と赤を基調とした、荒々しい感じです。
著者フレッド・セイバーヘーゲンについてはこちらをご参照ください。
この<東の帝国>のシリーズも本巻で終わりです。第一巻の冒頭から出てくる<アードネー>の正体がこの巻で漸く明らかになります。いままでは何となく漠然としていた<アードネー>が巻が進むにつれてその全貌を明らかにし、ついにその全貌を表すのである。<アードネー>の正体が実は……ということを知るといかにセイバーヘーゲンが凄い作家だと思う人が多いと思います。なぜかというとこの作品は明らかにSFとファンタジーの融合を目指していると思うのです。それは第二巻目の獣王ドラフットの存在(実は人間に飼われていた犬)などが顕著であると思います。そして魅力的なキャラクターたちの存在、特に一巻目・二巻目では主人公と敵対をしたチャップは武骨で魅力的なキャラクターですし、たぐいまれな美貌を持つチャーミンアンは以前レビューしたジャック・ウィリアムスンの『航時軍団』に出てきた美しき悪女ソライニャに匹敵するほどの悪女ぶり。(まあ、自分よりも美しいものを置かないとか、利用するものは利用するっていう徹底ぶりがすごいんですよね、両方とも)だからむしろ、この二人を中心とした物語(実際『黒の山脈』では主人公はチャーミアンとチャップであるともいえるかもしれないです。)本巻にて漸く主人公のロルフにも恋人ができるのですが、チャーミアンに比べると見劣りもするし、実際セイバーヘーゲンの描写も結構冷ややかです。(若さだけがとりえ、みたいな)しかし、最後にフィナーレを飾るべく、主人公は精神ともにバランスのとれた男性へと成長したように思えます。また、最後の悪魔ザブラノと<アードネー>との闘いは壮絶なものがあります。<アードネー>亡き後の世界がどうなるかはたぶん、読者の想像に任せることによって素晴らしい余韻を含んでいるように思えます。絶対読んで損はありませんので、是非古本屋で見かけたら購入なりしてみてくださいませ。