SF用語集その1


◆世界のSF賞◆

 書店で、SF本を見かけたときに、”ヒューゴー賞受賞作”、”ヒューゴー/ネビュラ両賞受賞作”、”ローカス賞受賞作”などなどと表紙に大きく書かれた単行本やハードカバーを見かけることがあると思います。一体何だろうかと思うかもしれませんが、この賞について少々知識があれば「なるほどね:)」ということになるでしょう。ここでは、主に世界のSF賞について簡単な用語説明を試みたいと思います。

 なお、この部分は主に早川書房編集部編『SFハンドブック』の講座Part2の「世界のSF賞総まくり」(大森望先生による)とサンリオの『SF百科図鑑』(ブライアン・アッシュ編、山野浩一監修)のファンダムとメディアに準拠しています。問題点、不都合点がありましたら下記のメールアドレスにメールをください。


  1. ヒューゴー賞(The Hugo Awards)

     最初のSF雑誌の創刊者、ヒューゴー・ガーンズバックにちなんで名付けらられた賞で、正式には「SF功労賞」(Science Fiction Achievement Awards)と呼ばれている。創設は1953年で、1955年の第2回以後、年度賞になった。受賞者に与えられるロケット・シップ型のトロフィーで、ヒューゴーと呼ばれる。世界で最も権威のあるSF賞であるが、主にアメリカ中心の賞であると言われている。(事実、非・英語圏の作品が受賞したことはない。)

     現在、ヒューゴー賞は、長篇(ノヴェル)、長中篇(ノヴェラ)、中篇(ノヴェレット)、短篇(ショート・ストーリー)、ノン・フィクション、映像、プロ・アーティスト、半商業誌、ファン・ライター、ファン・アーティスト、ファンジンの12部門に分化している。

  2. ネビュラ賞(The Nebula Awards)

     ヒューゴー賞と並んで、知名度を二部する賞。この賞は「アメリカSF作家協会」(SFWA)から授与されるもので、まず会員全員による二度の予備投票で候補作を絞り、最終投票を行う三段階方式。予備投票の過程は逐一SFWA会報で報告される。この賞はオリジナル作品の年間アンソロジーをつくるというアイディアから生まれたもので、実際に印税がトロフィーの制作費にあてられている。第1回ネビュラ賞は1966年、4部門(長篇、長中篇、中篇、短篇)に与えられている。候補作はすべて、前年度にアメリカで発表された新作に限られる。受賞者に与えられるトロフィーは透明なルサイトのブロックの中に、メタリックに輝く螺旋形の星雲と水晶の標本が埋め込まれている。

     なお、同一作品がヒューゴー/ネビュラ両賞を受賞することも珍しくなく、そういう作品は「ダブル・クラウン」と呼ばれてペーパーバック化のときになど(日本でもそうだが)最大限広告に利用される。希に駄作も含まれている時もあるが、SF初心者としてはこの二つのヒューゴー/ネビュラ賞受賞作を一つの指針として読むのも手であと思われる。

  3. ジョン・W・キャンベル記念賞(The John W. Campbell Memorial Award)

     ネビュラ賞が会員間で政治的な取引に利用されるようになって、SFWAの選定が必ずしも当初の意図に沿った批評的な客観性を持ち得なくなってしまってしまったことを受けて、ハリー・ハリスンとレオン・ストーヴァーはイリノイ核研究所をスポンサーとして、ジョン・W・キャンベル記念賞を創設、これは国籍を問わず前年度に初めて発表された最優秀SF長編に与えられる。この賞はSF作家と評論家による国際的会議で決定される。受賞者に与えられる物は、ブロンズ製のメビウスの輪と賞金である。

  4. ジョン・W・キャンベル賞(The John W. Campbell Award)

     ファン投票で選出され、ヒューゴー賞と一緒に発表される、最優秀新人賞のことである。上述のジョン・W・キャンベル記念賞とは異なるので、注意。

  5. フィリップ・K・ディック記念賞(The Philip K. Dick Memorial Award)

     1982年に急逝したSF作家フィリップ・K・ディックを記念して設けられた記念賞。ペーパーバックライターであったディックを偲んで、ペーパーバックオリジナルで発表されたSF長編が対象となる。第1回受賞作はルーディ・ラッカーの『ソフトウエア』で、他にはティム・パワーズの『奇人宮の宴』などが受賞している。

  6. ローカス賞(The Locus Poll)

     アメリカのSF情報誌『ローカス』の読者による読者賞。きっかけは、1971年のヒューゴー賞のとき、投票者数があまり少ないのに腹を据えかねた同誌編集長のチャーリー・ブラウンが始めたのがきっかけである。『ローカス』には業界人をはじめとした熱烈なファンが多く、その母集団の少なさにも関わらず、ヒューゴー・ネビュラ賞に次ぐ権威を持った賞となっている。

  7. BSFA賞(BSFA Awards)

     イギリスSF協会によるイギリス国内の年度最優秀長編に与えられる賞。

  8. ディトマー賞(Ditmar Awards)

     オーストラリア全国コンベンションによって毎年発表される賞で、アマ・プロ両方の活動を対象に三部門に分かれており、一部門は出版国籍には無関係の最優秀作品賞である。ディトマー・ジェンセン博士にちなんでつけられた賞で、1969年に第一回の授与が行われた。『SFハンドブック』によれば、国外部門の受賞作の渋さでは定評がある賞らしい。

  9. アポロ賞(Prix Apollo)

     毎年メッツで行われるフランスSFフェスティバルで発表される。第1回は1972年にロジャー・ゼラズニィが受賞。英語圏の作品の受賞が多いのが特徴である。

  10. 星雲賞

     日本SF大会参加者のファン投票によって決まる賞。ヒューゴー賞をお手本としている。