『プロジェクト・ライフライン』


イラスト:佐藤道明

SETI?

あらすじ

 宇宙軍士官学校を修了したアダム・ケイブは重大な決断をしようとしていた。アダムは美しい婚約者ケイリーンとの婚約も破棄し、実力者たちが集う彼の親戚達の忠告も振り切って「プロジェクト・ライフライン」計画に参加することを決意した。「プロジェクト・ライフライン」とは外宇宙との知的生命体との交信を図ろうとする一大プロジェクトであった。彼は「プロジェクト・ライフライン」計画に参加していた自分の父が月面基地で悲劇的な最期を遂げた理由が知りたかったこともあって、一見無謀とも思える決定をしたのだった。

 すべてを失ったアダムは「プロジェクト・ライフライン」が行われている月面基地へと向かった。月面基地に赴任する前、アダムはとても不思議な魅力にあふれた男と出会う。彼の名前はジェイソン・ケイン、<無限の生命社>の社長をしている男だった。アダムは彼の話にとても興味があったのだが、巧言だと思うことで必死にその興奮感を押さえた。ケインはアダムとの別れ際にコイン型の通信機器を渡し、「困ったことがあったら連絡してくれ」とアダムに告げてわかれた。アダムは「プロジェクト・ライフライン」の関係者の一人であるエキゾチックな美女ポーリー・ミングと出会い、「プロジェクト・ライフライン」の位置づけを聞く。30年もの間行われていた「プロジェクト・ライフライン」は世界各国の国家予算に大きな負担をかける厄介なお荷物プロジェクトと化していたことを知り、アダムは何とかできないかと腐心する。

 そんな状況の中、アメリカ隊の仲間でプロジェクトに対して失望してしまっている男、ソロモン・スミスとともに父の死亡理由をつきとめるため、アダムの父が墜落死したとされる場所に二人はクローラーで調査へと向かった。彼の父と仲間が搭乗していたステーションは無残な姿をさらしていた。たくさんのステーションの破片から彼らはなんと録音テープを発見する。その録音テープには世界を変えてしまうような遭遇の記録が隠されていたのである!


著者ジャック・ウィリアムスン(Jack Williamson)と
作品について

 1967年に書かれた作品で、1981年に早川SF文庫の一冊として日本語に翻訳されています。イラストは『宝石泥棒』(ハヤカワ文庫JA)版や『恋人たち』などのイラストで有名な佐藤道明さんです。手のひらに地球が他の知性体に向けて情報を発信しているありさまを描いた透明な板を掲げた美女が描かれています。

 著者ジャック・ウィリアムスンはアメリカを代表する作家の一人です。「懐かしい」と思う方もいらっしゃると思いますが、「誰、それ?」という方もいらっしゃるかもしれませんので、彼の略歴を含めてどんな作品があるのかを記しておきたいと思います。ジャック・ウィリアムスンは1908年アリゾナのピスビー生まれ。教育養成の単価大学(テキサス州立師範学校)に入学し、オールA(!)というすばらしい成績を収めるほど優秀であったらしいです。そのころ、短篇「メタル・マン」(『パンドラ効果』に収録)がアメージング・ストーリー誌に採用され、学業の方をきっぱりあきらめ、SF作家業に専念する。そして1938年にアスタウンディング・サイエンス・フィクション誌に本書『航時軍団』の連載を始める。その時の編集者J.W.キャンベルはその号の後記をこの『航時軍団』に費やしている。その他にも日本語の翻訳として、<三銃士>をベースとしたといわれている『宇宙軍団』、外宇宙との生命体との交信をテーマにした『プロジェクト・ライフライン』や短編集(初期の「メタル・マン」を含む)『パンドラ効果』、ロボットものの古典と謳われる『ヒューマノイド』、そして<ゲイトウエイ>シリーズで有名なSF作家フレデリック・ポールとの共作<スターチャイルド>シリーズなどがあるが、どれも品切れもしくは絶版という状況です。なおご本人は高齢にもかかわらず精力的に執筆活動を続けているアメリカSF界の長老ともいうべき存在です。


感想

 ジャック・ウィリアムスンの作品はどれを読んでも外れがないなとつくづく感じました。本書はざっくばらんにいえば現在世界中の人たちが参加しているSETIの話を先取りするようなアイディアを凝縮した「地球外生命とのコンタクト」ものでした。前半は希望に燃える青年アダムと「プロジェクト」をとりまく環境に失意を覚え、何とか解決策を見つけようとする彼の苦闘の姿が生き生きと描かれており、共感を覚えます。物語の本番からがらりと趣がかわり、進歩主義対保守主義(あるいは宇宙人は危険派対宇宙人は友好派)の戦いになります。コミュニケーションが難しいあるいは理解不能というイメージの強い宇宙人とのコンタクトは危険である、だからコンタクトするとろくなことがないと思う勢力と宇宙人は善意で人間に知識を与えてくれると思っている勢力との間にもまれてしまうアダムの選択はとても難しいものだったと思います。(まあここで前者を選んでしまったら物語がここで終わってしまいますが)このあたりのアンビバレンスな心理的な戦争状態には考えさせられるものがあります。

 物語は中ごろでドラスティックに変化します。この変化に戸惑う人も多いかも知れませんが、一連の謎がつながってきてようやくすっきりしてくることでしょう。アダムの父の死と宇宙人のコンタクトがどのようにかかわっているのか、そして謎の勢力との関係はどうなっているのか、人類は果たしてコンタクトから恩恵を得られるのか?などなどスリリングな展開になってきます。まあでも反対勢力については援助勢力に無理があるように思えるわけですが、逆に代理戦争と考えればそんなにおかしくはないかなぁとは思いました。古本屋で見かけたら立ち読みしてチェックされることをオススメします。


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