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復刊ドットコムに「夢の国のリトル・ニモ」の復刊をリクエスト。ご協力お願い致します。
これはお薦めの短編集!短篇が12編収録されていて、どの短篇もうまく<ズレ>を表現していて楽しめる。短篇の妙味を肌で感じた一冊。実はシェクリイは今回初めて読んだ作家で、純粋に<ズレ>を楽しみながら読めた。実は加害者と思ったら、被害者に転落とか、墓穴を掘るような皮肉な話が多数。このブラックさは今読んでも十分楽しめるし、今だからこそ読むべき短編集ではないかと。しかし現在品切れ……ああ、これを重版してくれぇ、早川書房。って感じですか?
魂の叫びはおいておいて、収録作品でお薦めなのは「狩猟の問題」「無から有」「時間泥棒」「触るべからず」「最後の戦い」「宇宙市民」「愚問」の7つ。「最後の戦い」はまあ世紀末が近いので是非一読を。旋律のラストに大苦笑。「愚問」はちょっとレムっぽいかも。「触るべからず」はかなり<ズレ>をうまく表現した作品。「狩猟の問題」もやはり<ズレ>の問題を鋭く描写。「時間泥棒」はコミカルな円環作品。「宇宙市民」は希望あるおセンチもの。他の収録作も捨てがたいのだが、もしこの本を見かけたら是非読んでみて欲しい。現在でも立派に通用する素敵な短篇集だ。

今月はあまり小説が読めない予感がするので、多少専門書も交えて読了記録を更新する予定。とりあえずディヴィッド・シェンク『ハイテク過食症』(早川書房)を読了。この本は情報スモッグの危険について述べていて、如何に我々が膨大なデータの海で戸惑い、ノイローゼになっているのか、そしてコンピューター中毒になっていることを著者自身の実体験を交えて記述。実際のところマクルーハンの先見的なアイディアが実現している現在、効率的に自分にどのような情報が必要で、どのような情報を発信すべきか?という問題は今後の我々の課題である。実際ホームページやMLへの投稿について自分自身深く考えさせれらた本だった。

この本はキリスト教において異端とされる図像について様々な視点から述べた本だ。例えば、ガーゴイルの役割やら目隠しされた女性の像、そして黒い聖母や葉人間の彫刻などを扱っている。これらの異端の図像の大半はキリスト教が広まる前の宗教の名残りであると考えられており、例えば黒い聖母はケルト人のドルイド教と関係があるとか、目隠しされた女性はシナゴーガと呼ばれ、ユダヤ教の象徴とされ、キリスト教の象徴である女性、エクレシアと比較されていることなどが本書で説明されている。我々からは多少なじみの薄いこれらの由来を丁寧に分析して示しており、興味のある人は是非一読を。
なんとなく気晴らしに読んでいたアルフレッド・ベスター『虎よ!虎よ!』(ハヤカワ文庫SF)を読了。u-kiさんの日記&おすすめSFで熱く書かれており、ちょっと場所を把握できていない自分の本棚をごそごそと探して、発見して読み始める。……くそぉ、めちゃくちゃ面白い!この作品を長らく読んでいなかったことをかなり後悔。こんな冒険活劇、実にクリス・ボイスの『キャッチ・ワールド』以来。こういう復讐劇、大好きなんです。実際、<魔王子>シリーズのガーゼンに主人公ガリヴォー・フォイルは似ているかも。ここまで情念で突き進んでしまうと、なんかもう凄いというか<魔神>の領域に入っているように思えるんですけれどね。
あらすじは書いてしまうと面白くないので書きませんが、SFのあらゆる要素が詰まっているともいっていいかもしれない話です。だからデーモン・ナイトもああいうことを言っているんですな。ジョウント効果の説明から始まって、いきなり何者かに破壊された宇宙船<ノーマッド>でしぶとく生き残る主人公、そして6ヶ月の間虚無に取り残された主人公の前に現れる宇宙船ヴォーガの姿。無残にも救助の夢は潰されて、希望は怨念に変わる。そしてフォイルはヴォーガに復讐を誓い……という感じで物語は始まり、そして過去から未来へ、未来から現在へ、すべての謎が解決してまるで映画を見ているような雰囲気で物語は完結。これはもうただの復讐劇ではない、まさに<魔人>になった男の伝説の物語であった。重版され続けている理由がよくわかったような気がする。今月上半期のお薦め本に指定!
家から出ない日々が続く。溜まった本や論文をひたすら読む。途中疲れて、高津春繁『ギリシア神話』(岩波新書緑)を読み終える。紀元前11、12世紀以後ギリシア半島に居住したアーリア民族とその子孫が残した奔放で人間臭いギリシア神話の成り立ちを解説。トロイア戦争や人々と神々の成立についてなどかなり詳細に書かれていて面白い。高津氏訳のホメロスの『オデッセイア』(ちくま世界文学全集)はかなり昔に読み終えているのであるが、オデッセウスの苦難に満ちた冒険とその後の復讐劇が凄い。呉茂一氏訳の『イリアス』も併せて収録されており、この全集の<ホメロス>はお得ではないかと思った。
朝早く起きて、マーク・レイドロー『パパの原発』(早川文庫SF)を読了。う、う゛む…という気分が募る。この本は原文で読んだら死ぬほどパロディを発見できそうだなぁと思った。個人の自由とキリスト教世界のアメリカならではのパロディ。よくカルトのセクトというが、宗教臭さを無くしたコミュニティを想像するとわかりやすい。行動、思想とも家族単位で「パパ」が出来事の決定をすべて握っている。自衛のためにならミサイルも、そして本編の主人公の家族ジョンソン(笑)もまた対抗して原発を置くというとんでもない話になってくる。家族内でもかなり問題があり、ホモの遺伝子を植え付けられたP・Jはショックで家出して、カルトにとらえられて洗脳されるし……という感じで家族崩壊を見事に描いたブラックユーモア溢れる怪作。
ただピクニックのシーンなどプラグ・インによってヴァーチャル世界に入って休暇を楽しむとかそういうシーンはかなりサイバーパンクな作品ではあります。実は入手してから1年間の間を開けて読んでいたのですが、このくらい間をあけないとだめな作品っぽかったです。そういう意味ではブルーなときにあまり読まない方がいい作品です。アメリカ版筒井康隆という感じですね。とにかく変な毒に溢れた作品なので、取り扱いには注意が必要ではないかと。
<ダーコヴァー>の邦訳3巻目に当たる。「地球帝国市民として育てられた孤児ジェフ・カーヴィンは常に奇妙な気分に囚われていた。惑星ダーコヴァーは彼が幼少から夢に見てきた故郷であった。地球帝国の官史として赴任してきた彼は自分の失われた記憶について調査を開始するが、彼とその両親に関するデータはすでに何者かに抹消されていた。彼の出生にまつわる謎とは?」というあらすじ。
このシリーズはいつもとっかかりが悪いが、読み始めるとやめられなくなるという不思議な魅力を持つ。そして主人公の出生が明らかになり、意外などんでん返しがあるのだが、このどんでん返しが小気味いい。どちらかというとダーコヴァー人と地球人とのカルチャーの考え方の違いや、コミュニケートの話などが文化人類学的な視点で描かれていて実に楽しい。こうなるとやっぱり未訳分のダーコヴァーのシリーズが出版されて欲しいと思うのだが……。とりあえず読み進めて、いけるところまでいけたら未訳分を読んでみたいと思う。
荒熊雪之丞シリーズの最終作である。相変わらずハチャハチャ、駄洒落の連続体な作品でナンセンスものでは抱腹絶倒、奇絶怪絶、摩訶不思議な一冊である。『謎の宇宙人UFO』からの続編であり、主人公たちのおとぼけぶりは絶品。まあ要約すると雪之丞をいぢめるシリーズともいっていいかもしれないが…。こういうノリが好きな人なら絶対読んでもらいたい一冊ではある。
家で作業を続ける。(涙)作業の間に読み終えたのが次の二冊。こんなことをしていていいのか?って感じなんですけど、脳が英語を受け付けなくなってきて骨休みに読んでいたら見事にツボにはまってしまった。そのツボにはまってしまった本というのは、横田順彌『ヨコジュンのびっくりハウス』(角川文庫)。疲れた頭に清涼飲料水な本である。大笑いしてしまったのはやっぱりSF用語解説とかひねりの効いた駄洒落ギャグである。言葉をちょっと変化させただけで、まったく違うものになってしまうという言葉遊びが脳を刺激してくれた。あとはやはり鏡明・荒俣宏との渡米記が爆笑もの。途中伊藤典夫先生と合流して、ワールドコンに出る話がおかしい。フレデリック・ポール(<ゲイトウェイシリーズ>の作者、偉いSF作家)がヨコジュンに話しかけるも、ヨコジュンは「I can't speak English.」といってポールを撃退したという……。(唖然)こういうエピソードがつまった面白い本。ヨコジュンが好きな人は買うべし!(といっても古本屋にしかないですが…。)
続いて『ヨコジュンのびっくりハウス』の中にもヨコジュンの解説が載っていた平井和正『超革命的中学生集団』(ハヤカワ文庫SF)を読了。ヨコジュンの本を読むとこの『超革中』が出来たいきさつがわかるのであるが、主人公はヨコジュンそして他の一日の会のメンバー。鏡明、伊藤典夫先生らの名前がつけられたSFはたぶんこれが初めてなのではないか?ストーリーは主人公のヨコジュンが自分の身に覚えのないいいがかりで級友で巨漢の鏡明に呼び出されて神社で決闘をしようとしたところ、UFOが現れて6人の中学生を超能力者にしてしまう……。という話。これだけならとてもまともに思えるのだが、その後は平井流ハチャハチャが展開される。永井豪のイラストも加わって、ジュヴナイルながらも大満足。この話は80年代前半のSF業界に詳しい人なら絶対笑えるはず。そうでなくとも奇妙キテレツ抱腹絶倒なこの話、人によってはツボにはまること請け合い。
タイムトラベルものの古典みたい。今読んでもそこそこ読める作品かな。内容はまったく古びていないのだけどねぇ、訳が……(自主規制)。(矢野徹さんなんだけどね。)どの人物がどういうところでかかわってくるのかとか、突然シーンが切り替わっていたり、状況説明がかなり分かりにくいだな、これが。ストーリーは「ある女の子を事故で殺しちゃった主人公が、ある日死んじゃったはずのその女の子に再び出会って、「殺される」ために未来に連れていかれ、いろいろな場所の抗争に巻き込まれちゃう」という感じの話。しかしこれだけぢゃないがヴォクトのいいところかも。最後のオチはひねりがきいているし、SFの要素がいっぱい詰まった作品になっているんぢゃないかな。その中で一番面白いのは女の子の微妙な心の動きかもしれない。主人公への態度がいきなり軟化しちゃうことが実は結構物語のターニングポイントだったりするのだ。こういう細かい部分がうまいのは流石ヴォクト。
角田純男の緑色の赤ん坊のイラストが不気味である。内容も表紙に負けず、かなりアブナい話。「白色人種の両親から緑色の子供が産まれた−−この話は最初は好奇心の的でしかなかったが、緑色人の人口が急激に増加することによって、イギリス政府は高圧的な人種差別政策によって白人の権利を守ろうと画策した。ではなぜ緑色の子供が産まれるのか?この謎について大きなヒントをつかんだ若き医療統計学者のインド人のヒューマヤンはイギリスの「人種関係局」に招聘されたのである。そんなイギリスに滞在することになった彼の身を襲う災厄は……」というあらすじ。
暗いテーマ(人種差別、アイルランド問題、イギリス国内の人種軋轢の問題など)を扱ったSF。緑色人がケルト系に多いという辺りから、アイルランド問題を彷彿させる過激なテーマ。そして、インド人の主人公に対する肌の色の差別など読むべきところは多い。そして東洋と西洋との邂逅でもあり、コミュニケーションのずれ、因習になじめないアウトサイダーの悲哀、突然変異の遺伝子の謎、急変するストーリー展開など読むべき部分も多く、個人的にはお気に入りの一冊。管理社会に対する痛烈な批判の書ともいえる。
以前風野@サイコドクターあばれ旅さんに薦められた探偵金大事包助シリーズもの。「まだらのひもの」が最高にくだらない。くだらなくて、しばらくぼう然。同様な話に「外人二十面相」とかありますけど、とにかく「うそぉ、そんなオチにするかぁ!」という恐ろしいダジャレひねりが加わっている一品。この作品は蟹丸刑事が事件を依頼してくる<地球物>とレンズマンに雇われてしまった<宇宙物>に分類でき、一応並行して書かれているらしい。宇宙物の方はものすごいパロディの連続。<宇宙船ビーグル号>ならぬ<宇宙船ビーゲリ号>とか、<HAL2000>じゃなくて<HAT4126>とか、有名外国作品を知っている人にはたまらないギャグに仕上がっていて、雪之丞シリーズとはまた違うギャグのテイストを持った作品になっていると思う。
こちらはどちらかというと大人のテイストのハチャハチャSF。一応シリーズ物が数篇入っている。板垣退助ならぬ、板垣進助を主人公とした松戸歳圓博士の発明したタイムマシンものがメイン。松戸博士は<雪之丞シリーズ>にも知らぬ間に加わっているので、興味のある人はそっちも参照のこと。この短篇集もハチャハチャな話がものすごくくわわっていて、「日本ちんぼ*」なんかは女性の前では話せない話ではあるし、オチのヒネり方のくだらなさではたぶん「STAR BOWS」でしょう。(まさかこんなオチになるとは思わなかったとしかいいようがないオチで、「まだらのひもの」同様唖然としてしまいました。)疲れたときの清涼飲料水、そんな笑いを求める人はヨコジュンの作品を読むべし!です。