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復刊ドットコムに「夢の国のリトル・ニモ」の復刊をリクエスト。ご協力お願い致します。
うん、これは平成の猿蟹合戦なお話なんだな、って思った。簡単にいうと火星という場所で、人間モドキの<タヌキ>と(ディックのスクリーマーみたいに凶悪ではなくて、気のいい奴なんだな、この<タヌキ>は)<人間>の間ののんびりとしただまし合いをテーマにした小説なんだ。実は読んでいくとわかるんだけど、誰でも知っているような童話をモチーフにした話なんだ。一気にさくっと読める話だから、気にかかったら手に取ってみて読んで欲しいと思った。
まあ、妄想の力を実現させてくれる<語り手>の視点から物語なんだ。彼女の視点から物語は淡々と続くんだ。両性具有を実現して中性になった紳士とか、SMプレイの効用とか、夢魔(サキュパス)が出てきたりとなかなか盛りだくさんな内容になっていたよ。タブーになっている題材をここまで面白おかしく書かれると脱帽しかいいようがないなぁ。客体と主体の視点の切り替わりが珍奇珍妙でとーっても変。語り手自身は女性なんだけど、妄想を現実へと変える触媒となる存在、という風に読んでいくと「こりゃ、不思議だ!」って思うんじゃないかなぁ。退廃的なヴィクトリア朝のけだるい感じが小気味いいね。(えーっと、です・ます調から突然変えるね。色々と考えた結果なんだけどね。(苦笑))
とにかくスケールの大きな話だなと思った。読んだ後で、ちびちび読んでいたことに深く反省する次第。一気に読むべきでした、はい。こういうスケールの壮大なSFはぼく自身読んでいてぞくぞくする傾向があるみたいで、昔ポール・アンダースンの超大作『百万年の船』で感激したのと同じような気分になってしまった。ネアンデルタール人から21世紀人までが突然、中心に巨大な河が流れる世界に復活させられてその謎を解いていくという感じ。そういえばイアン・ワトスンの<黒き流れ>も滔々と世界の果てまで流れる河を中心とした話だったし、マキリップのファンタジーも大きな河を下っていく話だったことを思い出した人も多いはず。たぶん悠久の時間をゆっくりと果てしなく流れていくという巨大な河の神秘性っていうのがどこかにあるんじゃないかなって思った。
主人公もイギリスの探検家っていう設定がとてもナイス。歴史上の人物、例えばナチのゲーリングとかルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』のアリスのモデルになったアリス・リデルとかがファーマーの想像力によって生かされて、物語の中を縦横無尽に動き回るっていうところがスケールの凄さを感じるね。これこそSFじゃん、って思った。もちろんもっと盛りだくさんなんだけれど、それは読んでからのお楽しみなんで、書きませんけどね。このシリーズは他に未訳分も含めて4シリーズあるから、続けて読んでみたくなった。次はマーク・トゥエインが主人公らしいので、楽しみだなぁ。
日本の建設会社とブラジルの大手企業のコーポレートウォーズに絡んだSF。ここに特殊なケーブルの落札をめぐってブラジルの大手企業が謀略をしかけるというのが大筋の話。面白いのは月で独立したアメリカ企業の存在で、彼らがケーブルを落札した日本企業にそのケーブルをスペースシャトル<アナンシ>で送る途中で、攻撃に遭遇し、飛行不能に陥ってしまう。そうしているうちにブラジルの大手企業の息のかかったスペースシャトルがケーブルと共に<アナンシ>を回収しようとするが……。うまいスパイ経済SFともいえるが、他にも離婚寸前のパイロットの愛の行方とかそれぞれの人間ドラマが絡んでいて面白い。実際は短時間での攻防なのだが。
渋谷の紀伊国屋書店で<ウィルスもの>フェアでこの本がたくさん山積みになっていて品切れでないことが判明。「こらこら」という気分。まあ面白かったのでよしとしますが。一昔前ならば十分SFに分類されていた作品で、斑点熱(たぶんエボラ出血熱をモデルにしていると思う)を積荷としたタンクローリーがイェローストーン国立公園で横転し、それが流出し、人々に感染してしまうというパニック小説。
この小説の面白いのはもちろんこれだけではなく、追うものと追われるものの緊迫感ではないかと思う。汚染の事実を隠蔽しようとする政府系企業は汚染患者を始末すべく、殺しのプロを雇うが、それを察知した主人公達は隔離楝から逃走。孤立無援の中で果たして主人公たちは生きて脱出できるのか?というのが後の展開。カットバック手法による多面的なヴィジュアルが見事で、スピーディーな動きと共に読みどころになっていると思う。広大な大自然を舞台に主人公たちの逃走劇の光景が脳裏に浮かびやすい話でしょう。それなりにお薦め。時間があれば読むべし。
「すごいぜ!マーヴィン・ピーク」の一言につきるでしょう。ゴーメンガーストという迷路のような陰鬱で不思議と狂気が交錯した石の迷宮ともいえる城での物語。最初はこの分厚さにめげたのであるが、主人公のタイタスが産声をあげた辺りから俄然世界の雰囲気に慣れて面白くなってくる。奇妙な登場人物と城の掟、秩序破壊者ともいうべき恐るべき従僕の少年スティアパイクの活躍がすざまじい。(スティアパイクについては山名田さんのページの敵役レビューでたぶん触れられるはず)一番ショックだったのは、ゴーメンガースト第76代城主セパルクレイヴ卿の狂気の元となる事件。これは本が好きな人には一番冷酷で恐ろしい仕打ちで、非常にぞっとする。卿がこのショックのせいで気が狂い、自殺してしまうまでの心理描写が非常に恐ろしい。卿が書斎で本を愛でるシーンは愛書家の人なら涙するはず。いろいろな思いが錯綜する中で、タイタスは名前を受け、第77代ゴーメンガースト城を治める人物になるのだ。
もちろん今まで記したことは物語のほんの一部分であり、全三巻の物語の序章にすぎない。そのタイトルが示すように、主人公タイタスの呻き声(産声)であり、タイタスの運命は二巻以降で綴られることになっているのだ。運命と凶兆、そして伝統と破壊が入り乱れた悪夢のような迷宮たるこの城での出来事を記したこのファンタジーは読むものの心をかき乱し、ぐいぐいと魅了することであろう。読んでいない人は絶対読むべし。たぶん時を忘れて読んでしまう可能性大。今までの最高傑作ではないかと思う。#ただ現段階では入手困難を極めるので、古本屋か図書館でにて読むべし!
銀河辺境シリーズの正伝の14巻目の話で、いつもながら読み終わるのが惜しくなるようなストーリ展開であった。惑星リベリアでの総督の任務を無事(?)果たした我らが主人公グライムズがそのタイトルが示す通り、再び惑星スパルタで一騒動に巻き込まれるというもの。4巻目の『惑星スパルタの反乱』で男だけの世界だったスパルタに女性が加わり、スパルタは様変わりしていた。グライムズの友人のブラシダスはなんと執政官に昇格しており、その妻エレナも良からぬことを企んでいる始末。そうこうしているうちにブラシダスが誘拐されて……という感じで相変わらずいざこざに巻き込まれてしまうという不幸なグライムズであった。このシリーズは加藤画伯のイラストも含めて協力にお薦めしたいのだが、残念ながら外伝を含めて入手が困難。海の男臭さが好きな人にはなじめる一冊かと思う。是非『銀河辺境への道』から読んで欲しい。
ちょっとおセンチな短編集じゃないかと思う。チョコレートパフェに取りつかれた男の話やミュータント化白癬菌の怪(ブラックユーモアあり)など10篇の短篇が収録されている。泣けるのは同姓同名、誕生日が一緒という日本人の子供とアフリカの少年が偶然意志疎通ができるようになったという短篇「夢の神々結社」と異星人にテラフォーミングされた地球の最後の生き残りと心清らかな少年との交流を描いた短篇「"ヒト"はかつては尼那を……」がお薦め。個人的にお気に入りなのは企業連合体の入社試験にいどむ二人の若者の話である「クワバラ商事の陰謀」が就職制度とかシステムに取り込まれた個我の喪失を皮肉っていて実に面白い。やはり梶尾真治は短篇の名手だとつくづく思う。
今まで読まなかったことを後悔。「アメリカ南部の小さな町ゼファーが舞台。主人公のコーリーとその父が偶然目撃してしまった殺人事件の謎解きを中心に、「魔法の力」を失っていない者だけに見える世界と現実世界を交錯させながら語られる。親友の死、不思議な老婆との出会い、天才的な野球少年との出会い、悪魔的容貌を持った少女のいたずら、OK牧場の決闘を見たといわれる老人の話などなど……ノスタルジア溢れる不思議な人物と町並みが想像できてしまう感動的な物語」
あらすじは以上のような感じで、ハードカヴァーにして約800ページ強ある大作。時を忘れて読みふけること請け合い。世界幻想文学賞を受賞していることに納得。そう『少年時代』はただのノスタルジックな話ではないのだ。我々が大人になり失ってしまったと思うセンス・オブ・ワンダー、不思議を感じ取る力を呼び起こしてくれる、そんな作品だ。純粋に正しく生きている人間が体験することになる科学では説明できないような奇跡を、そして死者との交流を描いているのだ。ある人は恐れおののき、ある人は戸惑い、ある人は喜ぶような出来事なのだ。ちょっとした勇気と無垢な心が世界を変えることになのだ。目をつぶるとゼファーの町並みや風変わりな登場人物たちが蘇ってくる。そう、まるで映画のような作品なのだ。主人公のコーリーの回想録でもある『少年時代』は、まさにただの異国の話ではない。我々が忘れていた魔法の扉への招待状なのかもしれない。強くお薦め。ただ値段が上下で4000円強なので注意。 #現在は文庫版が出ています。
グライムズを主人公とする一連のシリーズの最終巻であり、チャンドラーの絶筆でもある。13巻まで一気に読んで、しばらく間をあけていたのは「すべて読んでしまうのが惜しい」という気分が働いたからだ。やはり<銀河辺境シリーズ>が魅力的なのは、想像力を喚起させるような描写と個性豊かな人物たちであろうか。ストーリーの構成などどれをとっても絶品で、15冊を読み終えて改めて痛感した。大の日本びいきであったチャンドラー氏が今回登場させたのは「セイ子」と呼ばれるメイドロボット(日本製)で、<彼女>が大きな役割を果たすことになる。さらにカンガルーの遺伝子操作によって人間へ進化させられたシャールとダルリーンの双子の姉妹、主人公グライムズらが密命を受けてニュー・セイラム星系の知的生物の調査に乗り出すというもの。
結局グライムズが<リム・ランナーズ>でどういう活躍をするかということは謎になってしまったが、その断片は外伝でちょっとだけ垣間見ることができるようだ。しかしながら、グライムズとセイ子が長い年月を経て再び出会うことになるというシーンは涙するものがある。それまでにグライムズがどういう体験をしてきたのか?というのはぼくたちの想像力で補うしかなくなった。これはこのシリーズを愛して読み終わった人にしかわからない特権ではないだろうか?遥か遠くの銀河辺境で<シスター・スー>と共に活躍しているグライムズの姿が生き生きと、そして強烈な思い出として永遠に残ることだろう。お薦めのシリーズなのだが、まとめて入手するのがとっても困難なので、図書館などを利用することをお薦めする。