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復刊ドットコムに「夢の国のリトル・ニモ」の復刊をリクエスト。ご協力お願い致します。
中篇でまとめられてしまったのが何とも惜しい作品。山田正紀得意の脱出・冒険小説の流れを汲んでおり、リーダビリティも高い。『火神を盗め』の設定を変えて、エッセンスを凝縮した作品といえば、山田正紀ファンはわかると思う。登場人物のバックグラウンドもばらばらで、彼らの人物描写から別のストーリーが組みたてられるのではないかと思うぐらい魅力的である。しかし、その反面バックグラウンドの描写や牢獄のイメージがつかみにくいので、山田正紀ファン以外の人はイメージ先行で読み進めてしまうのではないかと思う。逆にゲーム理論的思考になれていると、すんなりと読めるのでオススメ。つまりプレイヤー→戦略対応→利得が明確に作中で触れられているので、わかりやすい。
独裁者が君臨する社会で、反社会分子が容赦なく殺害される社会。そこで、8人の反社会分子の囚人が恐怖城と呼ばれる牢獄から脱出する話。チンピラ、自閉症の少女、男勝りの主婦、テロリスト、元刑事、人気キャスター、人気キャスターの後輩(女性)、城の設計者をしていたと思われる人物がプレイヤー。利得はトラップ牢獄から脱出すること。戦略は個々のトラップに対する最適反応(一応戦略に対する解釈が作中で説明されている)である。このシンプルなゲーム構造を持つ恐怖城には魅力的なトラップが4箇所に用意されており、各人が戦略を練って戦うことになるのだ。誰が死んで誰が生き残るのか、割と早めに想像は中篇という性格上わかるのだが、逆にストレートすぎて多少とまどってしまった。あと『ナース』以来女性を積極的に書こうという氏の態度が見られ、面白い。たぶん模索中なのだと思う。
まとめるとSF的設定を施された『火神を盗め』のダイジェスト版といえましょう。素人にはオススメできない(吉野家度的に評価)。

正直、面白かった。一気に読了。細やかな科学的な検証の部分への批判はさておくとする。もちろん、枚数が限られているためにアイディアが積めこまれすぎで、読みにくい部分もある。しかしながら、作者が読者に与えたいという物語のテーマ性は明確で、よく伝わってきた。物語全体に一貫として主張されるテーマは人工的に与えられた生命の存在について。無敵少女型バイオロボットのシファの心の葛藤に主題が置かれており、あるアラビアの公国の王女を護衛するというプロットで包まれている。シファとジプスとの魂の交流もいい感じ。
ただ、やっぱり326ページはひきました、まじで。それまでのドライブ感が一気にこう、殺されてしまったというか。物語をタイトにするのならば、当該ページは無いほうが絶対魅了的。あのページは叩かれてしまうのは仕方がないでしょうか。ウェブ上では賛否両論色々と言われているけど、何のフィルターなしで読んで見ると、新たな発見がある1冊であることは間違えないでしょう。時間があれば、『プリンセス・プラスティック』もなるべく読んでおこうと思った。
ホラー風味、パロディ風味、神林風SF風味の3つのアラカルトメニューのそれぞれ3つのSF中篇が収められた作品。ベストは表題作「物体X」。今読んでも全然古びておらず、その驚愕のアイディアにびっくりする。読み終えて、佐藤道明画伯の表紙絵をみるとなるほどと納得する。ホラーSFとしてのサプライス度も高い。北方領土のある島におきた異常現象と島民の失踪の謎が最後にきちんとまとまり、収束する所がいい。もちろん後味の悪さもホラーSFとして魅力的だ。
「暗い大陸」は自虐ネタ風味のパロディSF。女が書けないSF作家Yの影響が子孫に変態の影響を与えてしまったという話からハチャハチャSFに転換する。きっとつかれていたんだろうな、山田正紀先生という感じ。でも、ご本人が女性が書けないことを認識していて、それを自虐的なギャグで纏めるのは流石。
「見えない人間」は神林長平風の中篇で、ちょっと『ルナティカン』っぽい。どちらかというとSFミステリ。個々人の生命が救急生命センターと呼ばれる中央集権主義的な機関に支配されている未来。社会的に不適格で、救急生命センターに保険金を支払えない人間は「見えない人間」として扱われていた。そんなある日、元警官で私立探偵を営む「見えない人間」の主人公のところに自分の夫の失踪について調べて欲しいという依頼がくる。事件を調べ始めた主人公はある秘密を見つけるのだが……。という感じの物語。これもミステリ風味のSFで、謎もなかなか面白い。中篇としての出来は高いと思う。

人間は自分の夢によって現実をつくりだす。そんな文中の言葉の迫力がテクストの読み手にひしひしと伝わってくる文学作品だった。感じとしては日本版J・G・バラードとだろうか。ぼくが思うに共通するのは、廃墟や打ち捨てられし者たちの美を讃美する部分だろう。そんな彼の作品と一緒に『廃墟大全』を読むと、現代文明の根底に潜む生々しい死の脈動感を感じることができる。
普段我々が何気なく廃棄しているゴミがこんなに美しく見えるのは、なぜだろうか。ゴミのひとつひとつに想念がこもっているというアニマ的な部分がひしひしと伝わってくる。そんな想念をもったゴミの一つ一つが東京湾で新たに埋められ、東京の土地の一部を形成する不思議さ。この物語は荒涼と佇む東京湾の埋立地に心惹かれた中年男性と、謎めいた女性の出会いから始まる。男性は日常から乖離し、彼の夢はまさに現実となっていく。マネキン人形たちが現実となり、生身の人間がマネキンになる一瞬。猥雑で一見生が支配すると思われるキップルの森に吊るされた白サギの死体。まるで世界を怨むかのように配置されたオブジェのようだ。そんなオブジェの救済は主人公自身の魂と引き換えだった。予言されていた死、タナトスへの衝動。東京という場所に潜む何かを日野啓三は言葉にして伝えたかったのかもしれない。
寮美千子『ノスタルギガンテス』(パロル舎)が脈動感溢れる生命力を題材に描いたのに対し、日野啓三の場合は逆に死への想いを綴っている。死への誘惑は避けがたいものだが、人間誰も持っている衝動である。そんな内在した衝動を、東京湾の埋立地を題材に選んだ日野啓三の視点は見事だと思う。

購入。即読了。掲示板の情報をもとに、渋谷のBook1stで一刷りを確認。すべてのオプションが整っていたので、購入。表紙のB級さもさることながら、マニア心をくすぐる装丁も帯も月報もすべてが凝っていて、感動もの。絶対1刷りを
とりあえず、古書集めという修羅道にはまってしまった人たちは必読。まさに「古書マニアっていうのは、もっと殺伐としているべきなんだよ」という言葉がそのままひしひしと伝わってくる内容(笑)。古本市の話もあれば、本の装丁の話、箱の話、整理の話等、喜国さん自身の体験譚が面白おかしく書かれていて、大爆笑。登場人物も多義に渡り、なんか知っている人たちが巻末で対談(笑)。それもあるし、常に彩古さんをライバル視している喜国さんの冗談とかにも受けまくり。笑いが止まらなくて、終始笑いながら読んでしまったのでした。書痴に処置なしという言葉もあるが、ぼくもきっとそうなのだろうな。でも、現状では初版とかにこだわるわけでもないから(帯は重要だけど)、さほどのマニアではないと思える。ただ本があるだけの、コレクターって感じがしてきた……。とにかく色々な本へのアプローチがあるということを学ばせてくれた1冊だった。オススメ。

大爆笑。これは本当に面白かった。東京と田舎の地域差をさりげなく笑いのネタにした、バカノワール。テイスト的に近いのはマンシェットか。どこか屈折した登場人物たちとクールな主人公の対比もまたまた面白い。主人公は東京からきた大学卒のインテリヤクザ。どんなことにも動じないクールな男である。彼は紛失した金と舎弟の行方を調べるために、この街にやってきたのだ。舞台は閉塞してさびれた街、那木良。街全体がどことなく閑散としていて、ダサい雰囲気が漂っている。そんな街にきた東京ヤクザたちには街全体が滑稽に見えるらしく、笑いをこらえるのがやっとだったのだ。もちろん彼らはパートナーとなった地元ヤクザに助力を頼むも、何とも頼りなさそうな感じである。そんなヤクザたちを使いながら、地道に操作する彼ら。そんなときに彼らの携帯に行方不明になった舎弟たちからの無言電話と脅迫電話がかかってくる。ところはそれはとんでもない事件の発端にすぎなかったのだった。
なんか凄い迫力のあるバカヤクザストーリに萌え。『レイミ』同様、スピード感や緊張感も爆発しているし、今回はなんというか田舎ネタが各所に効いて来るのがナイスでした。主人公の舎弟に関する意外な展開も、ちょっとそう来るかと思いました。主人公のクールさと田舎のバカバカしさのコントラストの落差に笑うのがいいと思う。悪役もどこか間が抜けていて、読んでいて笑ってしまう。登場人物の電波ぶりを楽しむのがいい作品だと思いました。バカノワール好きにはオススメ。
即読了。古書店でプレミアがついて売られている理由もわかった。これなら2000円出しても惜しくはない。タイガー立石の幻想的なカバーイラストに見惚れる。この瞬間「これは読まねば!」と思い、読み始めてしまう。結論−切なさ爆裂!ああ、こんなに抒情的で美しいおセンチな短篇集だとは思わなかった。式貴士はまだ未読がたくさんあり、どうもこの本が入手困難だということを知る。鮮烈なイメージを植えつけられた。SFや幻想文学の形をとった情念物語集といえるでしょう。
表題作「天虫花」がよかった。美しき女アマゾンに惚れてしまった主人公の少年の悲愛を描く。最後のシーンの美しさとおセンチさは群を抜いて素晴らしい。花のような群体をとる虫の群れというアイディアと儚い愛の形が見事に結晶した筆者快心の作でした。他の短篇もなんともいえない抒情感に溢れていて、日本人の心情にマッチした仕上がりになっている。著者の「日記風長いあとがき」を読むと、どうやってこの短篇群が出来あがったのかがよくわかる。相当苦労されて、かかれたようだ。その成果が如実に現れている短篇集だった。
いきなり2冊目でこの抒情的なお話を読んでしまったのだが、式貴士という作家の多才ぶりを知ることができてよかったと思う。ぜひ何らかの形で復刊して欲しい短篇集だ。