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Jan.1,2002 (Tue)

峯島正行『評伝・SFの先駆者 今日泊亜蘭』(青蛙房)

評伝・SFの先駆者 今日泊亜蘭

 現役日本人SF作家では最長老の今日泊亜蘭氏と交流のある峯島氏が、氏の生誕から現在までをわかりやすく簡潔な文体でまとめた書。今日泊亜蘭氏については、著書の少なさ、本人の性格などからかなり謎の部分の多い作家であるといえる。さらに現在ではその少ない著作までも入手困難なため、特に若い世代は知らない人が多いのではないかと思う。この評伝の価値は、謎のベールに満ちていた今日泊氏の素顔を少しでも垣間見ようとしている点にあるといえよう。

 水島爾保布(漫画家)の長男として生まれた今日泊氏は、文化的にも経済的にも恵まれた幼年時代をすごしている。幼年期に出会った人たちが今日泊氏の思想形成に大きく影響している。独立自尊を現在までも貫く、氏の姿勢には感銘してしまう。また氏は言語に通じており、8カ国語以上を堪能に話すこともできるという。生涯的仕事として自分の言語学の研究をまとめることにあるという。ハヤカワ文庫JAの『最終戦争』に入っている最初の短編(名前失念)は母音をしゃべらない金属型宇宙人による侵略を描いた恐怖SFだが、言葉に対するこだわりなどを感じた短編だった。

 そんな氏のSFは、文明社会に対する根深い不信と不安がテーマとなったものが多い。それは氏のアナーキーな信条から生じているものだと思うが、非常にペシミスティックな視点からかかれているのに驚いた。SF作家との交流も面白い。今回興味を持って今日泊氏のSFを俯瞰してみた(時間がなくてすべてが読めなかったのが残念)のだが、特に野田大元帥は氏の文体の影響を受けているように思えた。これはたぶん野田氏が心から今日泊氏に心服しているからだろう。他にもミステリ界との付き合い等の部分も、とても面白く拝読した。

 この書において注意が必要なのは、『光の塔』と『我が月は緑』を読んでいない人はネタばれがあるので注意。これは評伝という性格上仕方がないことなのだが、かなり詳細なあらすじがかかれているので注意されたい。ぼくが買ったのは二刷りでした。売れているみたいですね。


Jan.4,2002 (Fri)

乙一『死にぞこないの青』(幻冬舎文庫)

死にぞこないの青

 移動中に手持ちの本がなかったため本屋にて購入。即読了。嫌々感の漂う粘着系ホラーでした。いじめっ子が作られていく過程がとても怖い。ラストに救いがあるので助かりましたが、そうでなければ精神的にはケッチャム並の粘着的ダメージがありましたね。オレ自身いじめられた経験があるので、主人公のマサオ君に共感してしまったというのもある。本を読むにもやっぱり精神状態は重要ということを痛感した。

 クラスをひとつにまとめようとする新任の先生によってある日些細なことで自分がスケープゴートにされてしまった少年マサオ。その日から彼の地獄は始まった。クラスのみんなの冷たい視線、ダメ人間としての自分の役割を先生に押し付けられてしまう。そんな怒りを代弁する存在としてのアオが、彼に抵抗を促すのだが……。

 いじめのプロセスというのはある日突然起こるもので、とても些細なものだったりする。ただここで抵抗しないと、どうしようもなくなるのでどんなことをやってでも抵抗しないとダメというのはある。この生々しさはいじめを受けたものしかわからんものがあるので、ある種ラストまでのおどろおどろしさや生理的な気持ち悪さに読むのを中断しようと思った。でも、このプロセスがよくかけているのでラストのマサオの行動に共感できた。彼の場合、倒さなければいけない敵がとてつもなく巨大だったけど……。暗い話が嫌いな人にはお奨めはできないけど、後で何かが残るであろう作品のひとつ。