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Mar.1,2002 (Fri)

宇沢弘文『好きになる数学入門1』(岩波書店)

好きになる数学入門1

 宇沢弘文先生が書く数学入門の本。試験の合間の疲れたときに読んでいたのだが、面白かった。一巻目は方程式の考え方を中心にまとめた本で、表題もそのものずばり「方程式を解く」。小学校のときに学んだ「つるかめ算」「ニュートン算」などの未知数を使わないで、様様なシチュエーションに応じて計算を解く。ここでのポイントは「差」。つるとかめならば足の本数。ニュートン算なら仕事の能率とか。小学生時代には理解できなかったことも今読めばかなり明白なので、方程式を使っての考え方の比較をしながら読める点もユニーク。

 中学生には高度な議論もあるけれども、読んでいくうちにますます面白さを感じた。例えば、バビロンの数学やエジプトの数学、ギリシャの数学の歴史を交えての説明は好奇心をそそる作り方になっている。バビロニアの数学の例で面白かったのは、面積の話。面積を導出するために「二次方程式」の考え方を導入して、解を導き出す話などは数学の歴史を感じさせる。このほかにもユークリッドの互除法(最大公約数・最小公倍数を求める方法)の話や、算術平均・幾何平均の関係、等差数列・等比数列の考え方などが豊富な例を交えて説明されている。

 岩波は数学書に関してはかなり力を入れていて、松坂和夫先生の『数学読本』や『解析入門』などの初心者向けのいい本が多かったのだが、本書は特に入門書としてよくできている。高校数学の重要さは経済学をやっていると感じることなので、時折何らかの機会があればこの本を読むことにしている。二巻目は幾何(三角形の角が180度であるという証明からはじまる)なので、これまた楽しみながら読みたいと思う。


Mar.27,2002 (Wed)

矢野誠『ミクロ経済学の応用』(岩波書店)

ミクロ経済学の応用

 読了。カオスと経済成長理論、数理経済学などの分野で幅広く活躍されている世界的な学者である矢野誠先生の最新刊。去年、「秋頃に発売予定」ということを知っていたので、日本に戻ったときに即本屋で購入。姉妹篇の『ミクロ経済学の基礎』(岩波書店)と読むと、より理解が深まる。実際、本書はそのように作られている。本書の特徴はなんと言っても、「市場の質」を経済学の観点から取り上げていることにある。特にアメリカの判例を例に挙げて、寡占市場の理論をわかりやすく説明する部分は、「現実と理論」を結びつけようとする新たな試みである。独占禁止法、知的財産権、鑑定市場、証券市場における情報開示制度などの、経済学ではあまり取り扱われていなかった経済モデルを明快にミクロ経済学の理論でわかりやすく述べている。極力数学を排除し、図による解説は経済学を学んでいない人でも安心して読める。1章は基礎概念を説明していて、本書から読む人も大丈夫。特に総支払用意(ある品物に対して、どれだけのお金を払う用意があるか)という概念が理解できれば、大丈夫。

 『ミクロ経済学の基礎』が完全競争モデルという、現実からは乖離した経済学の基礎モデルの説明をしているのに対し、本書はより現実とのつながりを重視した、不完全競争の理論をコンパクトにまとめているのが面白い。特に独禁法に関連する判例は、アメリカの経済法が過去にどのような判決を出して、その結果アメリカ社会の経済法がどのように発展してきたかということもわかる。市場の質・ルールなどをミクロ経済学の立場から、これほど明快に書かれたテキストは初めてであろう。多少理論的に難しい部分もあるかもしれないが、きちんと読めば理解できる。時には手を動かし、図を自分で書くことで理解できる部分もある。色々な意味で、従来のミクロ経済学のテキストとは一味違う。

 なんというか、経済学を実際にどう当てはめるのかということを考えるときは実力を発揮する本だと思う。経済学に興味を持っている人は、何らかの機会があればぜひ読んでみて欲しい。