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Mar.21,2003 (Fri)

乙一『さみしさの周波数』(角川スニーカー文庫)

さみしさの周波数

 こっそりと更新(笑)。ちびちびと読んでいたので、なかなか読めなかった+忙しかったこともあって、読むのが遅くなってしまいました。

 うまいなぁ。『GOTH』(角川書店)は乙一のダークな部分が良く出た快作だったんだけど、こちらは切ない話が詰まった短編集。スニーカーから出ている前2作よりも全然筆力が上がっているなぁ。個々の短編にそれぞれに独特の味わいがあって読者は語り部の乙一の世界に引き寄せられてしまうこと請け合い。個人的には、作者も気に入っているという「手を握る泥棒の物語」が後味も悪くなくてとても素敵。他の三篇は何となく鬱なときに読むと鬱になってしまいそうなので、オススメできません。つまり感情面を刺激するような素敵な話だということです。

 「未来予測」は泣けました。予言が当たったのかどうかはわからないけれども、こういうシチュエーションはなんともつらい。「運命の人」という言葉を聞くことがあるけれども、果たしてこの言葉は正しいのかどうかわからなくなるね。未来は不確定だからこそ、面白いのかもしれないけれども。この話を読んでいて思ったのは、惹かれあっている二人でもどうしようもないときがあるということ。運命は運命として定められているわけではないけど、そうなってしまった状況を素直に受け入れることが大切なんじゃないかなと思う。大切にしようとしていたものは失ってしまうことがあるのだから。自分ではどうしようもできないこともあるということ。

 「手を握る泥棒の物語」はほんわかな気分にさせてくれる話。感じとしては太宰治のダメ人間小説を読み終えた後に、彼が書いた明るい話を読んでしまったぐらいの爽快感がある。ダメな状況にいる主人公がダメなことをしようとしたら、ドジを踏んでしまい、自分自身がダメになると思ったら、実は……という感じ。こういうシチュエーションになったときに、貴方ならどうする?凄い微妙な状況だろうけれども、ね。なんというか、手はすべてを語るのかなあ。

 「フィルムの中の少女」は怖かった。ありきたりといえばありきたりなのだけれども、乙一が書くと、何となく生々しい感じがする。身近にありそうで、怖いというか。フィルムに写った少女が何を語っているのか、そして衝撃的なラストに戦慄。いや、ちょっとしたミステリなんですけど、そう来るとは思ってもいなかったので、結構びっくりした。描写が生々しいので、痛い気分になりました。『GOTH』でも感じたけど、痛みやグロい描写が乙一の場合、感情面に訴えてくるように思えました。

 「失はれた物語」は後味が悪いなぁ。なんというか、江戸川乱歩だったらダークに扱うネタなんだけど、乙一は限定された状況を最大限に生かして実際にありえそうな状態を作り上げたと思う。この話は感じるところが多くて、いろいろと考えてしまったのだけれども、うまいなと思う。ブラックジャックにこういう話があったような気がするけれども、あちらはあくびだったかな?ラストがなんとも悲しい。