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ようやく読了。なんというか、無限の書を作る話だと思ってわくわくしていたのだが、後半になっていきなり大航海時代モードに突入し、奇想天外な冒険物語になってしまった。本のみを扱った話、というわけではない。本書はむしろ奇想天外な冒険や奇妙なエピソードが物語の中に組み込み、読者を物語の連鎖に引き入れようとする。これが著者の目的だったのではないかと思う。要約すると、究極の本の材料を求めて印刷工である主人公のフラットが旅をして、色々なエピソードを持った人たちと遭遇して、モノにまつわる物語を聞くというのが中盤から後半にかけての物語になっている。物語の始まりはフランスとイギリスのケベック争奪戦からはじまる。そこでブーゲンウィル中佐は印刷工の格好をしたフランス語が堪能な麗しき美女に出会う。彼女は自分が遭遇した数奇な出来事を中佐に話すことになる。回顧録の形で物語は進行する。これこそまさにスプロールフィクションと定義できる作品で、幻想的な物語空間が好きな人には安心してお勧めできる一冊ではある。ただ、本だけに着目した物語ではないので、前半と後半のギャップに驚いてしまう人も多からず少なからずいるのではないかと想像する。訳は非常にこなれていて読みやすいし、訳者あとがきも丁寧に書かれているので、読了前でも読了後でもお好きなときに読んで欲しい。気分次第かな。
ロンドンの印刷工フラッドはヨーロッパでも名声の高い印刷工。彼はとあるスロヴァキアの伯爵から不思議な依頼を受ける。彼の依頼とは、「始まりも終わりもない本を作成せよ」というもの。作成の間、伯爵の機械仕掛けの城で出会った伯爵令嬢イレーナに惹かれた彼は、伯爵が旅に出ている間、イレーナと肉体関係を持ってしまう。イレーナの変化に気がついた伯爵は激怒し、張本人であるフラッドを城の地下へと幽閉してしまう。11年後、フラッドは娘と名乗るパイカによって救出され、イレーナの行方を探ると同時に、極上の本の材料を求めて、めくるめくる旅へと出発する。
前半は問題なく素晴らしい。スロヴァキアのからくり仕掛けの城、自動人形、巨大な図書館と厳選された書物類を持つ伯爵と完璧な司書役であるイレーナ。城全体が巨大なからくりになっていて、何が起こるかわからないという設定はもう最高。このあたりはスチームパンクに通じるものもあるし、マーヴィン・ピークの<ゴーメンガースト>的な迷宮世界を狭い空間ながら作り出した、という意味でも評価したい。ただ伯爵が絶対神なので、、逆らうものは容赦ない。彼にとっては完璧な世界であり、完璧に傷をつけたフラッドの罪は大きかったといえる。前半部分はラブロマンスも絡み、非常にぼく好みな物語になっている。
しかし、後半がなぁ。材料探しもいいし、究極の本をつくるというアイデアもいいのだが、むしろ無限の書をどうやってつくるかを追及してほしかった、というのがぼくの正直な感想。二作目、ということで今後もますます活躍が期待されるカナダ人作家なので、スプロール・フィクション者としては今後も彼の活躍を見守っていきたい。

かつて永吉という男がいた。彼の数奇な人生を異様な迫力を持って描いた作品である。往年の筒井康隆のどたばた劇を彷彿させるような流れるような文章は非常にいい感じ。どうしようもないダメ人間を書かせたらこの人の右に出るのは若手ではいないだろう。ストーリーはいたってストレートだけれども、結構後半に入ってくると戸梶自身の倫理観が強調されるストーリーが入ってくるので面白い。物語の前半はこれでもかと言わんばかりに悲惨な光景が永吉の前に広がる。なんというか、悲惨な境遇がダメ人間永吉を作り上げたをつくりあげるための舞台立てみたいな感がある。生まれた場所がボタ山というところから期待感が高まる。戸梶圭太、早速やってくれる(笑)。ということで、一気読みしてしまいました。あー、このスピード感がたまらない。
労働者を搾取し、平気で使い捨てる鬼社長の所有する炭鉱に生まれた永吉。ろくに教育も受けれず、ダメな子供として生まれた彼はある日突然やってきた来訪者の女性(共産党員)に一目惚れし、ヘッペしたいと願う。社長の魔の手から奇跡的に助かった彼は、その後ダメな転落人生を送る。全共闘時代には、女とやりたいためになんちゃって大学生に成りすまし、デモに参加したりする。そして、あるときには怪しげな電波本を読んで恐怖におののいたと思えば、某所で盗んだSM本を読んで女子高生をレイプしようとたくらむが、逆に事故とはいえ殺人を犯してしまう。そのため刑務所で数年間暮らした彼は、出所後、問題児を集めたペット学校で何の縁か、教師をやることに……。
いやー、コレでもかといわんばかりに無気力でダメな男の一生を描いた作品はないでしょう。ヘッペしたい彼はいつもそればかり考えているために、どうしようもない感じ。一番受けたのはやっぱり人類畸形化計画という本を読んで、本当に信じ込んでしまった永吉のところ(笑)。『なぎら☆ツイスター』でも仰天した電波系設定がより毒を含んでいい感じに仕上がっています。とまあ、後半はかなり問題ありなんだけど、実際こういうことはありえそうで恐ろしい。戸梶のモラル感は実はかなりまっとうなのかも、と思うときがある。やっぱり、ラブアンドピースが重要なんでしょうかね?
面白いのは彼と対比して出てきている警官。彼もまただめ男なのだが、彼は警察官ということから、永吉とは対比したまっとうな人生を送るのだけれども、彼がつぶやいた台詞が印象深い。人生のダイスはどう転がるかわからない、ということだろうか。とりあえず救いがない作品なので、明るい話を読みたい人には薦めません。ダメ人間が好きな人たちには超お勧め。かなり飛ばしていると思います。過去作品を比べても、かなり好き勝手をやっているような印象を受けました。