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「蛇の女神」「眠れる人の島」「神々の黄昏」「邪眼の家」「生命の湖」の5編を収録。2編が本邦初訳ということもあり、幻想怪奇作家としてのハミルトンの作品をどうセレクトしたのかも興味があり、わくわくしながら読んだ。
中村融さんによる新たなセレクトは、<キャプテン・フューチャー>シリーズなど、スペースオペラ作家として有名なエドモンド・ハミルトンの違った姿を示してくれる。特に、表題作「眠れる人の島」は幻想怪奇作品としては珠玉の一品で、バラードの暑苦しさを髣髴させる作品で、この作品が1938年に発表されているという事実を知り、驚愕する。ほかにセレクトされた3品はイシュタール神話、北欧神話、メリット流秘境冒険譚の流れなのだが、どれも普通に爽快で面白い。優れたアンソロジーを編集する、ということはアンソロジストの知識などが関係してくる。その点においては、SF翻訳者の中村融さんは日本でも屈指のSF研究家でもあるので、ハミルトン関連のアンソロジーはどれも当たりだったと思う。
とまあ、さくさく読めてとても楽しめたので、前に読んだ『反対進化』とともにお薦めしておきたい短編集だ。編者の力量を感じさせるアンソロジーだったといえる。

川端裕人氏の小説デビュー作。第15回サントリーミステリ小説大賞受賞作。ライトミステリの風体を成しながらも、日本国産の火星ロケットの開発に携わる人々の姿を描く。夢物語ではなく、コスト面などの算段を踏まえてかなりシビアな費用設定になっているあたりなどが面白い。
高校時代より火星へとロケットを飛ばそうと実験を繰り返していた天文部の個性的な面々。それぞれ大人になって、それぞれの道を進んでいたのだが、とある日、過激派による非合法のロケット実験の事故をきっかけに、ロケット少年で、天文部のメンバーであり、新聞記者になっていた高野が天文部の元メンバーがかかわっていることを発見、追跡調査をしていくうちにある事実を発見するのだが……。
個性的なメンバーのもとに、国産のロケットを作り上げていくというストーリー展開はすごくよかった。なんとなく青春の心地よい夢、そしてその夢を追求する5人のロケット少年たちの姿にわくわくしてくる。それぞれ別の進路を進むことになる5人の少年たちが再び結集して、予算制約のもとで、さまざまな知恵を使いながらロケットを作り上げる様はリアリティがある。その点ではSFという枠組みの中で、きちんと作り上げており、予算部分を考慮に入れて現実的な切り口でも考えている部分に好感がもてた。
やや場当たり的な展開もあれども、全体として無理なくそつなく「宇宙への夢」を語り、ブラットベリへのレスペクトも感じられるあたりに、火星への憧れを別の形で表現することに成功していると思う。宇宙開発が血なまぐさい兵器開発にもかかわっており、さまざまな犠牲を払いつつ、現在に至っていることも、きちんと明示している部分は、大変いいと思う。陰と陽があるからこそ、人々は宇宙への夢を捨てず、試行錯誤を重ねて現在に至るのだと感じさせる小説だった。
お勧め。