『残酷な方程式』感想めも |
ロバート・シェクリー『残酷な方程式』(創元SF文庫)読了。シェクリーの短篇集を読むのはこれが二冊目だが、予想もつかないようなオチであっといわせるものが多く、とても楽しむことができた。ひねりのきいたプロット、ウィットと饒舌に満ちた短篇集はどれも一癖二癖もあって素晴らしい。シェクリーのうまさは「視点の切り替え」「コミュニケーション不全」にあると思う。そのことはこの短篇集でも「残酷な方程式」「それはかゆみから始まった」「架空の相違の識別にかんする覚え書」「消化管を下って、マントラ、タントラ、斑入り爆弾の宇宙へ」「疫病巡回路」「シェフとウェイターと客のバ・ド・トロワ」の短篇群を読むとわかる。融通の気かないロボットにキャンプを守らせた男が新たに設定されたパスワードを忘れてしまい、ロボットを説得してキャンプに戻ろうとする話、「残酷な方程式」には笑ってしまった。どう笑えるかというと、オチにある。オチがあまりにも強烈だったのでぼく自身あっけに取られてしまった。
シェクリーの本を読み終えたあとの感じは、中学生のころから愛読している筒井康隆に似ている。シェクリーの方が筒井の作品よりは上品な感じを受ける。シェクリーの作品の特徴はいつの間にやら主人公がまったく違ったものに変容しているとか、主人公を取り巻く環境がいつの間にやらすっかりと変わってしまっているような話を扱ったものが多いことにある。個人的に思うにシェクリーは自分とは異なるものとの交信の難しさを扱う(筒井康隆でいうケララ星人、ネットでは(戦略的撤退))ものが多く、このズレ・視点の切り替えをうまくオチにまとめられる作家の一人だろう。宇宙人という言葉にはきっと「知らない(理解できない)ものに対する恐怖」という意味を含めているのではないかと思う次第。日常とのズレを楽しみたいひとには強力にオススメ。