『ダムネーション・ゲーム』


イラスト:開田裕治

この世を地獄と化す魔人との死闘!

あらすじ

 焦土と化した第二次世界大戦後のワルシャワ市街で、一人の盗っ人がしたたかに生きていた。彼の最大の感心はギャンブルだったが、ある日彼の耳に、絶対に負けたことがない伝説のカード・ギャンブラーの噂が届く。その男の名はマムーリアン。その男と賭けをしたロシア人将校からの情報で、彼は伝説の相手と賭けをすることになるが……。そしてそのゲームから40年の年月が経過した。強盗犯として服役中のマーティー・ストラウスは仮出所と引き換えに、ホワイトヘッドというさる大富豪のボディガードを務めることになった。だが、その大富豪には恐るべき秘密が隠されていたのである……。魅力的で人に有無をいわせない力を持ったこの大富豪に惹かれたストラウスは彼のために何とか役にたとうとなまった体を鍛え、もとの肉体を取り戻そうとしていた。そんな矢先、ランニングをしていたストラウスの姿を見かけたジャンキーでホワイトヘッドの娘であるキャリーズが彼に興味を持つ。そしてそれと同時に<最後のヨーロッパ人>魔人マムーリアンはホワイトヘッドの借りを回収すべく、準備を着々と進行させていたのである……。


著者クライヴ・バーカー(Clive Barker)と
作品について

 1985年に書かれた作品で、1991年に扶桑社ミステリー文庫の一冊として日本語に翻訳されています。イラストは、赤を基調とした惨劇の予感がするような雰囲気の一冊で、上巻と下巻には最後の決戦場となる廃ホテルが中央にかかれており、上巻には虚無を象徴する髑髏が描かれ、下巻には主人公と思われるコート姿の人物が描かれております。

 著者クライヴ・バーカーは1952年生まれのイギリスの作家。生家のすぐそばにビートルズの歌で有名になったペニーレインがあるという。バーカーとビートルズのジョン・レノンは学校の同窓生で、少年のころからヒエロニムス・ボスやゴヤなどのヨーロッパの幻想画家の作品に親しみ、映画「13日の金曜日」などの影響によって、小説を書き始めたと言われる。リヴァプール大学で哲学の学位を取った後、イラストレーター・劇作家として活動を始める。1984年に別の活動をしながら、18ヶ月間という短い期間で書き上げた作品集<血の本>シリーズを発表してデビューしました。この<血の本>シリーズは世界幻想文学賞、オーガスト・ダレス賞を受賞しております。日本では6分冊に別れており、集英社文庫に納められております。(『ミッドナイト・ミートトレイン』『ジャクリーン・エス』『セルロイドの息子』『ゴースト・モーテル』『マドンナ』『ラスト・ショウ』の6冊)そして長篇第一作である『ダムネーション・ゲーム』を1985年に発表、イギリスのブッカー賞候補に選ばれております。その他には自身が映画監督をした『ヘルバウンド・ハート』『死都伝説』(集英社文庫)があります。そして眩惑的魅力なファンタジー『ウィーヴ・ワールド』(集英社文庫)やハルマゲドン的恍惚感で有名になった『不滅の愛』(角川ホラー文庫)、そして4巻の大作テクノ・ダンテもので、壮大希有なファンタジー『イマジカ』(扶桑社ミステリー文庫)があります。彼の作品は比較的絶版・品切れ率が低く、キングほどではなくとも、かなり知名度が日本では高い作家ではないかと思います。


感想

 超自然的展開なのですが、やはり描写の凄さが読者のイマジネーションを想起させる点でしょうか。幻視家という言葉がぴったりくる作家はバーカーだと思うのですが、その辺り本作品では遺憾無く発揮されているように思えます。魔人マムーリアンから力を付与された大富豪のホワイトヘッドの威圧感、そしてマムーリアンの仲間であるレザーイーター(かみそり食らい)のブリーアが死の底からマムーリアンに復活させられて、徐々にその肉体が腐っていく様(蛆がたかり、腐っていくシーンなど)まあ、近いところだと映画『フェノミナ』のラスト的様相になってくるように思えました。個々の描写はまだまだ壮絶なものがあるのですが、主人公が意外とあくが弱く、強いて言うとなると凡人に近い感覚に思えてしまいます。つまり、他の登場人物が一癖ありすぎて、主人公は巻き込まれてしまった可哀相な人、という感じです。あとはやはりホワイトヘッドの娘でジャンキーのキャリーズと主人公との恋愛関係とマムーリアンの精神的なつながり、そしてブリーア・ホワイトヘットのキャリーズに対する異常な愛が見事に絡み合って、何だか気持ち悪くなってきました。

 ストーリーは割とストレートなのですが、魔人の正体が下巻でようやくわかって、なぜ彼が魔人になったのか?がわかります。それを推測するのも楽しいかと思いますが、まあ、不可能に近いです。しかしよく出来た話だと思いました。久々に一気に読んでしまいましたので。ただ、気になるのは目録から落ちているのでたぶんもう本屋 で入手できない可能性が大なので、図書館や古本屋さんで探して読まれることをお勧めします。ただし心臓の強い人にお勧めかなと思いました。実際本作品はグロテスクな描写や本源的な<虚無>への恐怖だけではなく、「悪魔との契約」を底流とした見事な作品だと思います。その意味で読んでいるうちにゲーテの『ファウスト』などの悪魔との契約を念頭に入れて、自分のイマジネーションの奔流とその見事な筆力で描ききった作品だと思います。


本について