『ロボット貯金箱』感想めも |
風見潤・安田均編『ロボット貯金箱』(集英社コバルト文庫)読了。「ロボットのいろいろな使い方教えます。」の帯文句に書かれているように、いろいろなロボットが登場、活躍します。本邦初訳の5編が収録されております。ちなみに表紙イラストのロボットが貯金箱を持っていますが、内容とは関係ないです(笑)。選者の趣味がよく出ていて、なかなかいいアンソロジーになっています。ミステリ仕立てのものもあれば、馬鹿(笑)SF入っている笑える話もあります。全体的にバランスがとれていて、SFのセンス・オブ・ワンダーが垣間見れる一冊でした。
ヘンリィ・カットナー「ロボット貯金箱」は馬鹿SFとして楽しめました。たぶんギリシャ神話の「触ったものは黄金に変わってしまう王」の話をネタにしていると思うのですが、そのネタをひねってみるとあっという間に馬鹿SFとなってしまうあたり、才人カットナーの一面が見られたように思えました。「ある特許からダイヤモンドを人工的に生み出すことに成功した会社の経営者がダイヤモンドを盗まれないようにと、ダイヤモンドの保管用のロボットをつくったのだが、運が悪いことに協力者の技術者が敵の会社に殺されてしまう。疑心暗鬼に陥っていた技術者は、彼だけが知っているパスワードとともにこの世から去ってしまう。ロボットを捕まえてダイヤモンドを取り返そうとした経営者の試みは果たして?」というのがあらすじ。うーん、経営者が不幸だけど笑えてしまいました。まあ、もともと悪徳経営者だったから別に不幸になっても構わないわけですが、ロボットが逃げ回るさまには笑えます。思わず「韋駄天!」とか叫びたくなる気分になってしまいました。
ケイト・ウィルヘルム「アンドーヴァーの犯罪」はミステリ仕立てのSF。結婚しなければ出世できない社会でのある男の悲劇を描いたSFなんですが、これは面白い。主人公が哀れといえば哀れなんですが、予想通り○○の手段としてアンドロイドを利用するわけですが、オチが結構びっくりします。まあ犯罪というところでぴんとくる人は多いと思いますが……。ミステリの人もたぶん面白く読めるのではないかと思います。
テリイ・カー「ロボットはここに」はおせっかいロボットもの。才人カーが書いただけあって、ネタもなかなかひねられていてよい感じです。導入部もちょっと不条理系が入っていて、一瞬カフカ的な様相になるのかと思ってしまったわけですが。ところがちょっと思いもよらない方向に物語が進行するので、びっくりしてしまいました。どうびっくりするかは読んでみてからわかるのですが、まさかロボットの目的が○○にあるとは思いもしませんでした。そういう意味では○○社会ものなんでしょうけれども。
キース・ローマ−「BOLO」は侵略系ネタ。ストーリー自体は単純明快なんだけれども、戦闘マシンBOLOが暴走して街へとつきすすんでいくところと昔のパートナーだった老人がBOLOを説得するシーンにジワリときました。うーん、久々にいい話を読んだって感じです。あ、ものいう戦車っていうのが正しい表現なのかもしれないですが……。
クリフォード・D・シマック「地球のすべての罠」は自立系ロボットもの。長らく裕福な一族に仕えてきたロボットが、法による「記憶の消去」を拒否して逃亡するという話。逃亡の仕方がダイナミックでかっこいいんだけど、ラストがちょっと弱いかな。○○能力を身につけたのならば、もっとドラスティックな展開をしてもよかったように思えるのに、なんだかちょっと物足りない感じではあります。ただこじんまりとまとめたところに、シマックのシマックたる所以なのでしょう。
全体的にバランスがとれていて、読みやすい短編集でした。こういう良質のアンソロジーがコバルトから続けてもっと出て欲しかったなーと思う次第。