『奇人宮の宴』



超能力と宇宙人のボディスナッチなホラー仕立ての物語!

あらすじ

 馬にひかれた真紅のシボレーが大通りを走り、通貨は希少な蒸留酒、昼夜を問わず武装自転車暴走族が略奪のかぎりをつくす奇妙な世界。だかこれこそ核戦争後の廃墟から甦ったロサンゼルスの姿だった!しかも、妖しげな”儀式”を行って信者を獲得している新興邪教が不気味なまでに勢力を拡大していた。

 ミュージシャンのリーヴァスは、かつての恋人がこの教団に囚われたと知り、元奪還者である彼は娘の父親の依頼を受けて、その奪還を決意した。しかし総本山<奇人宮>へ単身潜入した彼を待っていたのは、想像をはるかに越える異様な光景であった!


著者ティム・パワーズ(Tim Powers)と
作品について

 1985年に出版された作品で、1988年に日本語に翻訳されています。
作者のティム・パワーズは1952年、ニューヨーク州のバッファロー生まれ。カルフォルニア州立大を中退し、仕事のかたわら作家活動に入っています。1983年に発表したロンドンを舞台とした伝奇ものである『アヌピスの門』が第2回ディック記念賞を受賞し、一躍脚光を浴びることになった。この作品(『奇人宮の宴』)も第5回ディック記念賞を受賞しています。好きな作家はフリッツ・ライバー、サバチニ、ヘミングウェイ、ウッドハウス、キャベルなど。また彼は晩年のフィリップ・K・ディックを囲んだ「木曜会」のメンバーとしても知られており、「PKDニュースレター」の寄稿家の一人でもある。またディックの晩年の作品『ヴァリス』(創元SF文庫)の登場人物ディヴィットのモデルであると言われる。ちなみに彼とK.W. ジーター、ジェイムズ・P・ブレイロックの3人が、SFでは「スチームパンク」と言われる流派を形成しています。

 ティム・パワーズといえば、他にも早川FT文庫から以下の3作品が訳出されている。まずは18世紀のカリブ海を舞台とした歴史ホラーファンタジーである(ヴードゥー教なんかも出てきます。)『幻影の航海』、19世紀のイングランドが舞台の吸血鬼ものである伝奇物語である『石の夢』、第2会フィリップ・K・ディック記念賞受賞作であるヴィクトリア朝を舞台に展開される奇想天外な伝奇物語である『アヌピスの門』が有名です。

 彼の作品は現在入手困難ですが、最後の『アヌピスの門』はまだ大きな書店に行けばかなりの確率でおいてあります。彼の作品は日本語に訳出されたものはどれも外れがないので、もし古本屋や書店で見かけたら一読してみてください。特に『奇人宮の宴』はホラー・SFの好きな人にはたまらないと思います。


感想

 この作品は核戦争後のアメリカを舞台にした実に奇妙で奇怪な物語に仕上がっています。荒廃したアメリカを扱った作品は多く、キム・スタンリー・ロビンスンの『荒れた岸辺』(早川SF文庫)やデイヴィッド・ブリンの『ポストマン』などがあります。この『奇人宮の宴』は特に怪しげな新興宗教が町の外で布教活動をしており、放浪者風の人々や町の人々をさらって強制洗脳してしまうというカルト団体が重要なファクターになっています。あらすじにもかかれていますが、主人公は凄腕の”救出者”であり、カルトに誘拐された人々を救出するという、カルトにとっては危険な人物です。この2つの陣営の闘いが、重要なファクターになっています。

 もう一つ重要なファクターとして、”赤色、血”、”異形の者、超能力、幻覚”の2つがあります。特に前者については非常に重要な役割をしています。途中主人公とある登場物とが、「血」を絆として物語をさらにおもしろくしています。それから、<血>の役割が、後者と深く結びついていて、物語の最後でこれらのファクターがどのように絡んできたのかが、読み進めていくうちにわかってきます。 この作品はとにかく読むことをお勧めします。ただし、心臓の弱い方はご注意ください。血生臭い要素が多いので、ホラーが苦手な人は嫌悪感を抱くかもしれません。

 個人的にはこの奇人宮で宴を楽しみたくはない((^^;;)と思っています。


本について