『秘密』感想めも |
東野圭吾の最新作。この人の作品は昔から興味があったのだけど、たまたま今回Book-MLで読んだ人の感想を見て読んでみようと思い、今回読んだわけです。感想は「勿体なさ過ぎ」というのがラストを読み終えてからの印象。ラストがああでなければ絶対この話は泣けるし、北村薫の『スキップ』の百倍以上もいい話だったのにと思ったのでした。たぶん意見が二つに割れそうな話で、特に男性と女性の間で意見が完全に割れてしまうように思えた。男性のぼくにいわせれば、はっきりいってラストのせいで『スキップ』を超える嫌悪感を抱いてしまったのだった。ちなみに北村薫の『スキップ』は嫌いな人なのです>私。
お話は単純。妻と子供がバスの転落事故によって、妻が死亡、娘が意識不明になるという悲劇に襲われた主人公だが、運良く娘は生き返る。ところがその娘の意識はなんと妻の直子のものだったのだ。こうして主人公の平介は妻の意識をもつ娘と奇妙な生活をすることになったのだが……。
男性諸氏ならわかると思うが、結構深刻な問題も生々しく描写される。そう、性欲の処理の問題とか、妻に対する思いとかいろいろなものが噴出する主人公平介の姿には涙してしまう。さらにこの平介が底抜けていい人なのだ。ミスを犯したバスの運転手の家族を気づかい、なぜ彼が過労してまで働いたのかという謎まで追う。まあこの部分はたぶん平介のいい人ぶりを強調するためにやっているわけだと思うが、とにかく巧い伏線は張っていると思う。そしてタイトルの「秘密」の意味だ。この「秘密」は前半と後半にわかれている。「前半」の秘密は直子と平介の秘密、そして「後半」の秘密は直子だけの秘密になるのだ。直子は自分の人生を取り戻すべく頑張り、平介は日々成長する娘(直子)に複雑な感情を抱くようになる。そして彼女が高校時代になったとき、平介は嫉妬のため彼女の行動をストーカーするようになる。そう、これは妻への愛がゆえになされたことなのだ。娘の体を持つ妻をどうやって抱けばいいのか?にっちもさっちもいかなくなったとき、ある方法によって直子は問題を解決しようとしたのだが……。この方法、とてもよかったんですが、最後でダメ!にしてしまいました。あー、男性諸氏なら分かると思うんですがね。ひどすぎ。
どうひどいかは読めばわかると思うけど、ああいうラストにするのならああいう落ちは駄目でしょう。それならば平介がせめて再婚できるような歳でやってくれよ!って感じですな。もうあのシーンがなければものすごくいい話だし、東野圭吾の試み(たぶん東野圭吾はアンチスキップ派ぢゃないかと(笑))は絶対成功したと思うのにー。終わり方は最高なんだから、あのシーンでああいう風に気づかせるのは許せないぞ!ということで、いろいろな意味で『スキップ』以上の衝撃を与えられてしまった恐ろしい作品だったのでした。