『ヘミングウェイごっこ』感想めも |
ジョー・ホールドマン『ヘミングウェイごっこ』(福武書店)を読み終えました。存在は聞いていたのですが、先日苦労して入手して本日一気に読んでしまいました。#すみません、どうも読み逃した本がたくさんあるみたいで、今ひたすら読んでいるという感じです。読み終えた後、何だかタヌキにだまされた気分になりました。
あらすじは以下のような感じです: 「ヘミングウェイの小説についてある日主人公大学準教授のジョン・ベアドが詐欺師のシルヴェスターと酒場で出会い、ヘミングウェイの作品を贋作することを薦められ、意気投合したジョンは自分のベトナム戦争の経験なども相俟って、贋作作りに夢中になる。ところが、夢中になってヘミングウェイの贋作をつくっていると、ジョンの前にヘミングウェイその人が現れ、原稿を書くのを中止しろと彼に告げる。さもなければ大変なことになると。そしてこの出来事は、消失したといわれるヘミングウェイの幻の原稿にも関わってくることになるのだが…。」
福武書房からいくらか海外文学が出ていることは知っていたのですが、これはカテゴリーが難しい作品でした。しかし、あえて分類するとなると並行世界系SFということになるのでしょう。ホールドマン自身が、ヘミングウェイのアマチュア研究家ということもあって、ヘミングウェイがどの年代にどういうタイプライターでどういう作品を書いたかとか細かい部分が実に面白い。ヘミングウェイの贋作が世界を変える?という辺り眉唾なはなしなのですが、それは置いておいてもなるほど、見事なオチとヘミングウェイの消失原稿ミステリーとも相俟って、何だか奇妙なテイストになっています。ヘミングウェイを愛する人なら、この作品を読むときっと笑えると思います。(私はそんなに読んでいないので一部わからなかったのですが。今度読んでみます。)
他はやはりジョンの妻とジョンを恐喝するために出てきた売春婦のパンジー、それとキャッスル(詐欺師)の3者との関係、心理描写が面白い。並行世界に移動することによってジョンの立場は微妙に変化してくるわけですが、そのズレが本人のみのずれであり、女性たちについてはあまり変わらず男性の二人のみがかなり変化してきているという点など非常に読ませてくれます。実際ぱらぱらめくっていたらやめられなくなり、一気に読んでしまいました。新たな小説への実験ともいえるのではないかと思います。
発売された年度が1991年ということで本屋で見かけたことがないので、図書館などを当たるといいと思います。こんなにキツネにつままれたような作品は外国人作家では久々でした。考えてみたら、ホールドマンは今回'Forever Peace'でヒューゴー賞を受賞しているとのこと。今後が楽しみな作家です。