『世界SF大賞傑作選2』感想めも


 アイザック・アシモフ編『世界SF大賞傑作選2』(講談社文庫)をようやく読了。エリスンとヴァンスは前に読み終わっていたのだが、ニーヴンをハヤカワ版で読もうかと画策していたため、感想を書くのが多少遅れてしまいました。

 エリスンの短篇(「「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった」「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」)はとても面白かった。両方ともディストピアを描いた傑作である。前者は超時間管理社会での痛烈な批判を描き、後者は生き残った人類の末裔の姿を描く。後者ほど鬱々とさせられるSF短篇も珍しいだろう。よくこんな話を思い付いたな、エリスンと思うと同時に、彼の天才ぶりを痛感した次第だ。

 ヴァンスについては「竜を駆る種族」と類似した世界を扱ったやはり異人たちとの戦争を描く傑作。とにかくヴァンスは異世界描写、コミュニケーションの軋轢、グロテスクなまでの世界描写が半端ではない。思うにウルフやヴァンスという作家は主人公に萌えるのではなく、世界に萌えることが多い作家なように思う。緻密な設定で成功したリベンジSF<魔王子>シリーズはグロテスクでかつ緻密な世界描写がなけれはあの復讐譚は陳腐なものに思えたと思う。それはヴァンスの卓越した異文化への知識があればこそ楽しめるのであって、この描写がなければヴァンスの作品はただの屑になってしまう。ヴァンスは異世界および意思疎通の問題を扱ったら天下一品だと思う。

 ニーヴンはまだ一連のシリーズを読んでいないのであまり詳しく言及しないが、ハードSFの旗手といわれるだけあって面白い。宇宙船の中での謎の死亡事故を調査する男の推理ものなのだが、宇宙に対する知識が乏しいぼくでも面白く感じた。ハードSFの面白さが凝縮されている一冊だと思う。

 フリッツ・ライバー「骨のダイスを転がそう」は巻末の解説を読んでから読むのが吉。この短篇はギャンブラーがであった不可解な出来事を描いたものだが、そこにからんでくるのがもちろんサイコロによるギャンブルである。そのルールが巻末に書かれているので一読するのが吉である。黒装束の謎のギャンブラーと主人公の心理的攻防戦にはらはらどきどきしてしまった。なんというかシェークスピアの「真夏の世の夢」を怪奇的にしたテイストの短篇だった。