『刺青の男』感想めも |
レイ・ブラッドベリ『刺青の男』ですが、SFセミナーで野田氏が「死ね!」といった理由がよくわかりました。この作品は自分の感覚にぴったりきました。夢がある、やさしさがある、残酷もある、気まぐれもある、不思議もある、驚きもある、ユーモアもある、とにかくそんな話しがつまった18編だと思います。だから普段は平行読みしている自分も知らぬ知らぬ間に引き込まれて読んでいたわけです。
全身に18の物語の刺青が彫られた男、彼の刺青が18の物語を演じ始める。そんな不思議な物語の中に、「万華鏡」がある。ブラッドベリがなぜ「万華鏡」というタイトルをつけたのがなんとなくわかるような気がします。一人一人の思いがまるで走馬灯のように走り去っていくその様が実に荒々しく、情感がこもって書かれているように思えます。実は他の短篇のほうが自分は好きなのですが、それは「ロケット」という最後の最後の話し。金屑屋をやっている貧しい一家が、道具を購入するために貯めていた3千ドルでひとりだけ火星旅行へと行かせてあげようとする話しなのですが、じーんときます。オチは書きませんが、読めばわかります。夢があり、希望があり、ユーモアがある。
やや描写が古いこともありますが、それを除いても名作だとぼくは思いました。最後に流れ星になった男が想った想いは何だったのであろうか?善きことなのか?と想像力豊かに感じてしまいましたが。まあ、評価は分かれると思うのですが、他のブラッドベリの作品も読みたくなったのは確かです。