『インディヴィジュアル・プロジェクション』感想めも |
いまさらですが、阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』(新潮社)を読み終えました。日本経済新聞の日曜日版で「最近写真を使った表紙が多い」という話しが掲載されていて、その中の一冊としてこの本が紹介されていて、興味があったのですが、先日古本屋にあったので購入しました。
カヴァーには横を向いたナイスボディな女性がCDの棚を見ている(たぶん中古レコード屋ではないかと)表紙が印象的かな?モデルの女性が誰か知っている方がいらっしゃったら教えてくださるとありがたいです。とりあえずヴィジュアル的にははっとする本かもしれません。最近でも藤沢周の新刊(肌がてかてかと水着姿の少年が印象的)とかが気になっているんで。内容と写真カヴァーが違うということが日経新聞には載っていたので。
で、読み終わった後の感想は渋谷を舞台に作者のヴィヴィットな感覚が如才なく発揮されたうまい小説だと思いました。日記調で描かれた淡々とした展開が主人公の映写技師<オヌマ>と重なってくるような気がしました。出だしから、ある歌の歌詞の解釈から始まって、その後から主人公の日常を綴った日記がはじまります。この辺りは村上春樹の<三部作>のような雰囲気を持っているなぁと思いながら読んでいたのですが、その後の展開は予想していたものとはかなりかけ離れていました。ここが阿部氏の凄いところではないかと思いました。正常だと思っていたことが、実は正常ではないという日常から非日常へのスライド(ずれ)の部分がちょっとずつ進行していきます。主人公のオヌマ自体がじつはとんでもない過去を持つ人間だったことが明らかになってきます。
村上春樹の一連の著作に雰囲気は似ています。ただ、村上春樹よりも現実的で生々しく、読んでいて脳の中で映像化しやすいように思えました。前半のけだるい感じから中盤から後半にかけての一種緊迫した雰囲気への移り変わりには驚きましたが、逆にそれが自分の中でスイッチになって、ぐんぐんと主人公へジャックインしていくように思えました。実は主人公のオヌマ自身がパズルのピースなのか、それともまったく部外者なのか?とか、誰が敵で誰が味方なのかがうまくぼかされていい感じになっています。
内容にはあまり触れていないのですが、雰囲気的には現実的な装いを持った非現実的な文学作品という感じです。文章自体も好みだったのでさっとよめました。興味があれば図書館などで借りて読んでみてみてください。