『白い女神』


光と闇の姉妹、続編!

あらすじ

 成長の儀式の途中、ジェンナはジェンナの影と呼ばれた親友バイントと共に<ニルの郷>への道半ばで、深い霧に遭遇した。その深い霧の中で聞こえてきた奇怪な声に驚き、二人は話に聞く霧の怪物かと思い、二人は背中合わせに剣を抜き、敵を待ちかまえた。この奇妙なうなり声に追われるように、若い男が彼女らの前に飛び出してきた。この若い男は後にわかるのであるが、王の第三王子であるカルム・ロングボウといい、学者になる訓練を受けていた。彼は、彼女らに古式にのっとって、彼女らに保護を求め、彼女らは彼の身を守ることを誓った。彼女らは霧の中で、彼を追ってきた男、<猟犬>と呼ばれるカラス卿の戦王を殺したのである。3人は<ニルの郷>へと到着し、<ニルの郷>の女司祭のもとへと案内されたのである。彼女は大いなる力を持つ教母で、アルタ教母はジェンナが予言を成就しつつあることを指摘したのである。ジェンナ一人のみがそのことを信じることができなかったのである。ジェンナたちはカルムを古の誓約に従って安全な場所である、<安息所>と呼ばれる場所へつれていかなければならなかった。そして、道半ばでカラス卿の配下に襲われることになったのである。バイントは重傷を負い、カルムに<ニルの郷>へと運ばれ、その戦闘で、ジェンナは<牡牛>の手を切り取ったのである。こうして彼女は<牡牛>の頭をも垂れさせたのである。そして、バイントを女医師の手にゆだね、カルムを<安息所>へと導いて、急いで<ニルの郷>へと戻ったのであるが、郷は静まりかえっていたのである。女たちは皆殺しにされ、無数の死が郷を覆い尽くしていた。その死体をきちんと並べ、女司祭の部屋の大鏡で彼女は<闇の妹>を呼び出す呪文を無意識のうちに唱えていた。その呼びかけに応じて、鏡の世界から闇の妹スカーダが表れたのである。

 鏡を持ち上げたとき、秘密の戸口が開き、そこに通路が見えたのである。奥には<ニルの郷>の子どもたちと、バイントが生きていたのである。ジェンナは彼女らを連れて、この惨劇を知らせるべく、<セルデン郷>へと戻ることになる。そこから、本書『白い女神』は始まるのである。


著者ジェイン・ヨーレン(Jane Yolen)と
作品について

 1989年に書かれた作品で、1991年に日本語に翻訳されています。本作品は前編『光と闇の姉妹』とセットになった作品で、本作品は1990年度のネビュラ賞の最終候補に残った力作です。最近、第3部が出たという話があり、確認している所ですが、単独でも十分楽しめる一冊になっています。カバーイラストは幻想的で、繊細な女性を描くのに定評のある加藤洋之&後藤啓介画伯のコンビです。今度は黒を基調とした、ジェンナとスカーダが左側を向いた形で、運命の糸のようなもので回りを囲まれている、という繊細なイラストです。

 今回も、物語、説話、神話、歴史の4つの視点から物語が形成されております。これについてヨーレンは、「歴史といわれているものは、かならずしも神話や伝承よりも真実味が濃いわけではないということを示したかった。」と述べ、「それを神話や伝承を使ってちがう側面から示そうとした。」とのことで、各話の間でホログラム的な立体構造を想定していたようです。なお、『白い女神』のあとがきによると、本シリーズが出来たのは短篇を膨らませてできたもので、主なストーリーとしてはジェンナとスカーダがカルムを救いにカラス王の城へ侵入し、おさげで王を絞殺するというストーリーだったそうです。短篇版の雰囲気はどちらかというと冷笑的で皮肉な物語だったそうですが。最後にヨーレンは日本の読者へのメッセージとして以下のように述べております。「この作品を通じて伝えたかったのは、感覚を研ぎすまして世界を見てほしいということです。わたし自信はクエーカー教徒で、クエーカーのポリシーとは常に人に向かって心を開くということですが、わたしの心の中ではそれがインターナショナリズムにつながっています。そのような視点で文化をとらえ直すには、どうしたらよいのだろうと考えたことが、この作品を生み出す原動力になりました。かならずしも世界を区切ったりしないで、さまざまなカルチャーをみつめ、統合するにはどうしたらよいか、ぜひ考えてみてください。現在わたしの作った小さな物語はさまざまな国で翻訳されていますが、それは、国境を超えてわたしたちが何かを共有しているという意識をもてるということではないでしょうか。そしてそのことは自分にとって本当に幸福なことだと思います。」

 著者については、『光と闇の姉妹』のページを参照してください。


感想

 この作品は『光と闇の姉妹』の続編で、『光と闇の姉妹』を読み終わった人は、「ジェンナはどうなるんだろう?」って思った人が多いのではないかと思います。今回、ちょっと古いイギリスの伝説のような下りがあります。それは、なんと女神といわれたアルタ女神とジェンナが出会うというシーンがあります。案内役もたぶんですが、ブラウニーのような小人族で、その不思議な森に数日いるだけで、なんと数年間が経過したという不思議な時間の流れを持った森でしたが、後にこの森での体験が予言を成就するのに必要なファクターであったことが物語を読み進めていくうちにわかってきます。この森の存在は、アーサー王伝説に似ていて、英雄は最後に妖精の世界へと旅立っていく、という部分が非常に神秘的で印象的でした。こうしてまた白いジェンナの伝説が人々によって語られ、人々によって神話化され、物語が歴史的な意味を持ってくるのではないかと思いました。その過程をヨーレンは見事に4つの構成によって描き、それを口述伝承(歌詞によるバラードなど)で民間の人々がつたえた物語として、この一つの物語を描いたのではないかと思います。大人になったジェンナとカルムの自然な愛の形、そして宿敵カラス卿との因縁の対決などなど、見所はたくさんあります。できれば、『光と闇の姉妹』から読むことをお勧めしますが、『光と闇の姉妹』のあらすじが本書は書かれているので本作品単独でも、読むことが可能です。残念なことに本書も品切れですので、地道に古本屋を当たられるといいかもしれません。


本について