『屍の王』感想めも |
牧野修『屍の王』(ぶんか社)を読了しました。いやあ、久々に牧野修の世界を堪能しました。ネタばれがあるので詳しいことは描かないのですが、『屍の王』という表題のとおり、血と腐臭と悲鳴、そして読み進めていくうちにどんどんと引き込まれていくことは請け合いです。
悲惨な事件によって娘を失った売れっ子ライターだった草薙は、失意の底で、どん底の生活を数年間していた。生きていくために風俗ライターとして最低の仕事をして、生活をしていたのだった。そんな失意の彼の前に現れたのは泉守道という彼を発見して育てた編集者だった。彼は、草薙に「小説を書いて欲しい」と原稿依頼をしたのだった。草薙はその小説のタイトルを「屍の王」として、どんどんと書き進めるのであるが……。書き進める彼には「屍の王」を読んだという人物から電話がかかってきたりなど、謎の出来事が続発する。取材を進めていくうちに草薙は、自分が何者であるのかがわからなくなってくる。草薙という人物は存在しないのか?そして小説「屍の王」は完成するのか?
あっという間に読了してしまいました。牧野修の新境地といっても過言ではないと思いました。謎が謎を呼び、蛆が蝿がどす黒く腐った肉塊の山、吐き出された黄色く濁った腐肉が脳の中でイメージされていきます。そして、ラストまで読みすすめると明らかになる驚愕の事実。死者たちは生きている者を嘲笑うわけですが……。どういうラストになるかは読んでみてください。いや、本当に面白かったです。
表題の付け方からピンと来た人もいるかと思いますが、あの話しをモチーフにしています。まああの話しでは妻だけが死ぬことになっているわけですけど。何というかまあ、映画化したらぞっとする話しではあります。イメージしやすい、というか。特に第三部の黄泉へのイメージは単色灰色のイメージ。主人公の草薙だけが色がついている、という感じですかね。エロスと狂気、死臭と腐臭がぷんぷんにおってくるイメージが作品全体に漂っています。「屍の王」というとまあキリスト教でいけば、「蝿の王」という感じでしょうか。実際ある部分ではゴールディング的なテイストが あったように思えます。
とっても面白かったです。ホラー小説が苦手な人にはあまり薦めないですが、ぶんか社のホラーウェーブの一冊として出ているのでぜひ機会があれば読んでみてください。