『リバイアサン』



夢、掘り当てます!

あらすじ

 ぼくの名前はジャイルズ・ピーチ、変な名前かもしれないけど、これでも一応いろいろな発明品を作っているんだ。ぼくの親友のジム・ヘイスティングスのおじさんのエドワード・セント・アイヴズはファンタジーやSFの本の収集家で、ぼくの好きなエドガー・ライス・バロウズの大量のペーパーバックや、ターザンもの、ペルシダー物に夢中になったんだ。「するとペリーは彼の発明を見せ、わたしはそれに興味を引かれた。彼はその長い一生の大半を機械的な地底探査捜査の完成にささげてきた老人だった。」ぼくは本を閉じて、表紙を再びしっかりと眺めて、一言もしゃべらないで、ふらふらと玄関を出ていったみたいなんだ。(ジムの話によるとね。)その日の午後にぼくは機械モグラ−堀削リバイアサン−の着想をそこで得たんだ。それから数カ月してそのリバイアサンは完成することになったんだ。(もちろんそれまでにいろいろなぼくの発明実験が実を結んだのだけどね。(^_^))

 この機械モグラ−堀削リバイアサン−は、上の表紙のような機械なんだ。極地探検家のジョン・ピニオンがぼくの機械づくりを激励してくれて、部品とかを援助してくれたんだ。それで、今この”リベット打ちの鉄製のものが鉄道の枕木でできた架台の上にのっているような、想像力と不思議の世界の荒地を区画整理してしまった宇宙時代の夜明けの何年も前に、パルプ・マガジンの画家たちが設計したようなもの”のような外見をしたこのすばらしい機械が完成したんだ。じつはぼくには秘密があって、なにしろ自分の体に謎の鰓と水掻きがあるんだ、どうしても「地底世界こそは神話にあるユートピア、ベルシター!かの地に住まうのは魚人間である」ことを確かめたくなったんだ。

 さてさて、ここでおれ、ウィリアム・ヘイスティングスがこの地底散策にまつわる話をしておこうか。おっ、おれの家の庭にまたペンフリ−婦人のしつけの悪い犬が糞をおれの庭にしているな、また何かの陰謀か?ふざけやがって!また連中がおれに何かをしようとたくらんでいるな。連中?連中のことを知らないって?連中っていうのはあの糞ったれの悪魔精神病医、ヒラリオ・フロスティコスのことだ。また俺を病品に戻そうと何かたくらんでいやがるんだ。まずは犬の糞を何かたくらんでいやがるペンフリ−婦人の庭におかえしししてやらないことには気がすまん。ほうら、そっちへおかえしするぞ!ふう、ペンフリ−婦人のやつ、びっくりして家の中にもどっていきやがった。ざまあみろ。で、おれの実験は成功したかな?ハツカネズミとアホロートルを使った水中での習慣を助長する実験だけどな、エドワードどうだったかい?

 ウィリアムが実験に夢中になっているので、私叔父のエドワード・セント・アイヴズとウィリアムの良き理解者でもあり親友でもあるラッセル・ラツァレル教授がそれまでに何が起こったのか説明しよう。我々は潜水鐘と呼ばれる機械で、もう一人の友人ロイクロフト・スクァイアズの協力を得て、前から注目していた海の底へと潜っていったのだったが、その時我々は、確かにプレシオザウルスの姿を見たのだ。ほら、その証拠だってあるぞ。これがその歯だ。その帰りに信じられない情報が我々の元に舞い込んだのだ。それは、ジムとジャイルズの悪友のオスカー・ボルチェックの死体がラ・プレア・タール・ピットで掘り出されたという記事だったのだ。それにもう一点奇妙なことに彼の皮膚には鱗におおわれ、髪の毛はほとんどなく、皮膚は奇妙に透き通っているということで、どうやら状況から見て殺人事件だったらしい。その後我々はとんでもない珍奇で怪奇な事件へと巻き込まれていくのだが……。


著者ジェイムズ・P・ブレイロック(James P. Blaylock)と
作品について

 1984年に書かれた作品で、1989年に早川SF文庫の一冊として日本語に翻訳されています。イラストはアメリカ本土のものからの転載だそうで、中央にリバイアサンに乗った地図をもって大きな水中眼鏡とシュノーゲルを口にくわえた少年(たぶんジャイルズ・ピーチ)が描かれています。なかなか夢のある表紙です。

 本作品について一言ですが、解説を書かれた中野善夫さんによれば”人物がなんだか分からなくなる”とのコメントをいただきました(自分もそう感じていて、某MLでうかがったところ)。そこでこの物語の構造を本書の中野善夫さんのあとがきを引用して、どんな物語かを説明します……『少年ジム・ヘイスティングスと少し頭のおかしい父親ウィリアム・ヘイスティングス、それにジムの叔父エドワード・セント・アイヴズとが、不思議な機械をそこらのがらくたから作り上げてしまう能力を持つ少年ジャイルズ・ピーチと共に地底世界に行こうとする話だ。ピーチを誘拐して、ヘイスティングスたちの先を越そうとするのが、ドクター・ヒラリオ・フロスティコスとジョン・ピニオンである。』この解説を下に、この作品を楽しまれるといいかもしれません。

 著者ジェイムズ・P・ブレイロックは、1950年、カルフォルニア州ロング・ピーチの生まれ。カルフォルニア州立大学で英語を専攻し、作家になってからもパートタイムで大学などの語学や創作を持っているそうです。SFとは12歳の時に出会い、ジュール・ヴェルヌ、H・G・ウエルス、エドカー・ライス・バロウズは全作読破したものの、大学に入るまでは現代のSFはまるで読んだことがなかったとのことです。(しかしながら、本作品『リバイアサン』はその著者の読書が大いに活用されています。特に19世紀の詩人、ウィリアム・アッシュプレスについては権威で、本作品にも”彼”が登場しています。)作家デビューは1977年の短篇で作家としてデビューとして果たし、日本語で読めるものとしては、第5回フィリップ・K・ディック賞を受賞している『ホムンクルス』(早川FT文庫)、および『夢の国』(創元推理文庫SF)を読むことが可能です。現在書店で後者はまだ購入することができるので、是非読んでみてこの作家の独創性を味わってみてください。


感想

 この作品は一言で、「一気に読んで、うひゃあ」と 感じるっていうのはこの『リバイアサン』にまさにぴったりな言葉です。 この作品は地底世界への冒険への”準備段階”を繰り広げるどたばた紙芝居劇 だったなあと私個人では、思いました。登場人物がみな一癖あっておかしいですね。一番目立たないのがジムとスクァイアズかなと思うくらい、一癖も二癖もある人々が多くて、大笑いしました。結構血なまぐさいことが起こっているわりには、キーパーソンのジャイルズ・ピーチが淡々としていて、発明おたく(それに”パワーズ”さんの 書籍・煙草店でバロウズの小説が安売りされるという下りを見て、笑いましたが(これは親友ティム・パワーズのことです。)) かつバロウズ+ヴェルヌおたくでまわりのどたばたは何のその、研究をさせてくれればそれでよしみたいな、典型的なマッドサイエンティストタイプ。その点主人公といってもおかしくはない、ウィリアムはパラノイアで、彼の実験はむちゃくちゃマッドだし。(なぜアホロートル?を使って実験をするの?でしたが。(笑))でも、ああいう人っていそうな感じで、 にやにやしながら読んでしまいました。 一言でいうと、”痛快ドタバタ劇”(笑)。でも表紙の機械の、”リバイアサン掘 削機”は失敗におわっちゃってあまり関係ないのには笑いましたが。 読み終わった後ちょっとほっとしました。(何だかどたばたから解放された気分)

 あともう一つ、敵役のフロスティコスは訳が分からない、まさに怪人物。何故に彼は 人間を魚人間に改良(っていうか生体解剖するのか)しようとするのか本当に謎な敵役で、イグナチオ・ナルボンド=フロスティコスということが『ホムンクルス』や短篇で掲載されたという「ケルヴィン卿の機械」を読むとにやりとするみたいですが。それと、何歳まで生きているのか不明な老詩人アッシュブレス(インパクトある名前ですねぇ。)はよくわからないし。 ピーチ一族の出生の謎もわからないし(いまいちですが……)、ヤマトの 正体も不明。ううう。不明な役回りが多くて、ちょっと混乱しました。 #フロスティコスって相当巧妙な医者ですねぇ……。 個人的にはウィリアムの”ぼやき”と狂った科学理論が好きでしたが。 しかしまあ、鼻洗浄機にはまいりましたが……。 その意味ではわけの分からない怪人物と気が狂ったと思われていた人物が実は正しいというぽかーんとしてしまうような結論で、結構どたばた痛快劇でもすごい痛快劇だと思いました。とにかく一気に読め!それだけです。


本について