『マッド・サイエンティスト』感想めも |
スチュアート・デイヴィッド・シフ編『マッド・サイエンティスト』(創元推理文庫SF)読了。
読了して、SFというよりもホラーの短篇集だと思いました。狂気の科学者をネタにした話というのは好んでSFで取り扱われることが多いのですが、本書は代表的な短篇を集めたアンソロジー。巻末で編者の荒俣氏の解説によれば、編者のシフ自体がホラー畑出身の人のようで、全体としてホラーテイストになっているのかもしれません。この短篇集には現代で話題となっている医学的な諸問題(医師の倫理、臓器農場など)を扱った短篇が多く、その多くが破滅的な結末を迎えていることは興味深い。
旧カバー版の狂気に取りつかれた白衣の博士絵は、まさに「マッドサイエンティスト」そのもの。新装版も悪くないんですが、旧装版の方が好みですね。復刊当初、相当売れたようですね。(宮部みゆきがベスト5に挙げてくれたおかげで復刊したので大感謝。)こういう良質のアンソロジーはホラーとSFを読む読者への興味の架け橋になるので、貴重なアンソロジーだと思います。
作家陣も実に豪華。ラムジー・キャンベル(『母親を喰った人形』で有名、ホラーの大家)、ロバート・ブロック、レイ・ラッセル、ワグナー、ラウクラウト、リラダン、ロング、ブラッドベリ、クラークなど豪華な作家陣による短篇が収録されています。今読んでも決して古びることのない狂気と恐怖が、タベストリーのごとく織り込まれていて実に見事です。例えばリラダンの短篇「ハルリドンヒル博士の英雄的行為」のハルリドンヒル博士がした行為は合理的行為に思えました。博士自身は動学的最適化(未来を考えての最適行動)をしており、その点を考慮すれば裁判所は理性的な判決をを彼に言い渡すことになるでしょう。
短篇すべてがクオリティーが高く、時間があれば個別の作品の感想を紹介したいと思ったのですが、時間が足りず残念。東京創元社さんがこの本を復刊したのは大正解だと思います。おすすめの1冊です。