『電子恐慌』感想めも |
藤原征矢『電子恐慌』(KSS出版)読了。どんな話しかっていうと……っておぢさんはどきなよ!って……。ここからはあたしアリスが説明するわ。突然出てきて何?って感じ?えーっと、あたしは14歳の天才女子中学生っていってもいいかな。一応プログラマーやってるの。え、どこでって?アブロサム&アーサー投資信託って会社であたしのプログラムの腕を買われてプログラマーやっているの。でもあの事件は忘れられない出来事だったわ。時は2020年、日本の金融市場は外資系金融機関に取って代わってしまったの。どうしてかっていうと、日本の金融機関はバブル後の不良債権処理に手間がかかって(というよりも自分で首を絞めてしまったといってもいいんだけれどね。)体力がないうえに、無能な日本政府の指導者によってぼろぼろにされた揚げ句、魅力的な金融商品を提示した外資系金融機関に制覇されてしまったの。で、あたしはそんな外資系の投資信託で働いていたの。なぜ、そんな若い歳で働いていたって?ああ、説明していなかったわね。あたしはプラチナム・チャイルドなのよ。つまり、この時代のデリバティブ取引はトレーダー同士のゲームみたいなものなのよ。1秒の遅れが数十億ドルの損失をもたらす世界に25歳以上のおじさんを使えるわけないじゃない。だから小さいころから優秀な子供たちをスカウトしてデリバティブ取り引きをデータ空間でやっているのよ。そういう子供たちのことをプラチナム・チャイルドっていうのね。
まあ昨今のタイのバーツ危機とかロシアの危機なんか見てもらってわかっていると思うけど、世界は今や一つの経済体になってきているの。投機って要するにゼロサムゲームでしょ。つまり儲かった人の裏には損をしたひとがいるのよ。プラスマイナスゼロっていうことなの。だから、タイのバーツ危機だって投機筋対タイの中央銀行だったんだけど、タイの中央銀行は破れてしまったの。あとまあノーベル経済学者を経営陣に入れたLTCMの破綻なんかは有名な話よね。それくらいヘッジファンドの影響力はでかくなっているのよ。つまりデリバティブはゲームみたいなものなのよ。与えられた情報を迅速に処理して、お金を儲けること。まさに経済学の原理に沿って成立しているわね。
まあ前置きはそんなところにしておくわ。で、どんなところがSFなのっていわれるんだけど、Nという不思議な少女が不思議な予言をしていくの。彼女の予言に逆らったトレーダーは彼女とのマネーゲームに破れ、自殺してしまったの。そんな現象に憂慮して、あたしと仁科(一応いっておくけど、おぢさんね。ブン屋の。でもあたしのお父さんとでもいってもいい関係かなぁ。ふふ。)とヨギ(アメリカの天才トレーダー兼ハッカーなの)でその謎を調べていくことになったのよ。彼女は的確に金融市場で何が起こるのかを予言しているメシアのような存在になりつつあったの。その神懸かった予測はどこから来ているのか、どういうカオスコンピューターとかプログラムで予測しているのかもわからなかったの。でもNは後でわかったのだけど、とんでもない存在だったのよね。人間の心理的予測まで入った究極の予測プログラムを持つ存在……って何だか凄いでしょう?あたしたちはとんでもない目にあったんだけれどね。
経済のズブのしろうとでも読んでいくうちに日本の現状とか世界経済の現状(特に金融)がわかるから、絶対読んで欲しいな。だから説明でかなりのページが割かれているけど、もともとは「プレジデント」の草稿をベースにしているからしょうがないの。でも今世界経済がどういう状況になっているのか、一つのありうる可能性を提示した現実に沿ったSFなのね。それだけ一つの経済の破綻(特にアメリカね)が世界恐慌を引き起こして、その結果戦争になるという最悪のシナリオもあるわけ。いい例が第二次世界大戦。やっぱり経済状態が悪いと自然と政治も悪くなるのよ。最悪のシナリオも脳裏に入れる意味ではSFという形をとった啓蒙小説ではあるのよ。でもいいたいことは一つ。「経済システムは人々の心によって支えられている」ということね。もし人々がこのシステムを支えないのならば、この社会は渾沌になるわね。このページの主人は感激していたみたいだけど、他の人はどうかしらねぇ。あ、あたしがどんな女の子か知りたい人はもちろん読んでみてね。