『プラクティス・エフェクト』


別世界での新たな発見と希望

あらすじ

 時空を越えて地球と異世界をつなぐジーヴァトロン−−−これは物理学の最先端の技術ジーヴ効果を研究するサハラ工科大学で開発された驚異の装置であった。5カ月の失敗の末、この装置から「ピクソレット」(と主人公が呼ぶ)異世界の空飛ぶ子豚のような生き物が現れた時、地球に酷使した異世界があることが判明し、ジーヴァトロンによって異世界への道が開かれたことがわかった。ところが、探検ロボットによる本格的な調査が始まった時、異世界側にある帰還装置が故障してしまった。大学での権力争いに巻き込まれた少壮気鋭の若手科学者デニスは異世界側のジーヴァトロンを修理するために異世界に半強制的に探検にいくことになる。この地球に似た世界”フラステリア”は奇妙な法則「プラクティス効果」によって支配されていた。

 主人公デニスは帰還装置を修理しようとしたが、何物かによって修理不能なほど破壊されており、彼は「我思う、故に我叫ぶ」などと絶望しながらも、この世界を探検することをする。この世界はプラクティスすることによって、あるものをさらにいいものにすることができるという効果を持つ世界であり、中世のような世界であり、人々はプラクティス効果によって生計を立てていた。そこでデニスはクレマー男爵と呼ばれる地元の領主に逮捕され、デニスはその所有していた道具および能力によって魔術師と勘違いされる。男爵はデニスの力を利用して中央の王に対して反乱をおこそうとするが、デニスはそこに捕らわれてたルトフ国のリノラ姫とともに、そのたくらみを阻止しようとするが……。その後は読んでみてください。


著者ディヴィッド・ブリン(David Brin)と
作品について

 1984年に書かれた作品で、1986年に日本語に翻訳されています。1984年にバンダム・ブックスからペーパーバックオリジナルで出版されたものを翻訳したものです。またアメリカのファンタジー賞であるバルログ賞を受賞している作品でもあります。本書は、サイエンス・ファンタジーと呼ばれる分類に区分され、魔法により支配されている世界だといってその設定をあいまいにしたものではなく、きちんとその設定によって首尾一貫した形で、魔法世界および現実世界との接点をうまく書いている作品であると思います。

 デイヴィッド・ブリンといえば『サンダイバー』『スターライト・ライジング』『知性化戦争』(『スターライト・ライジング』はSFで名誉とされるヒューゴ賞とネビュラ賞を、『知性化戦争』はヒューゴ賞を獲得しています。)の3部作で有名です。その他にはミニブラックホールを扱った『ガイア』や、核戦争後のアメリカへの復興の希望をかけた『ポストマン』で有名です。あとハードSF作家G・ベンフォードとの合作『彗星の核へ』などの作品があります。

 著者自身は1950年生まれのアメリカの作家。カルフォルニア工科大学で天体物理学と歴史学を学び、さらにカルフォルニア大学サンティエゴ校で天体物理のPH.D.を取得 。NASAにも関係していた科学者作家であります。このように科学的知識に裏打ちされた作品群は非常に理論的に裏打ちされたものも多く、その文体の巧みさで日本でも多くのファンが彼の作品を心待ちにしているといったところです。(私もその一人であるということはいうまでもありません。)


感想

 この『プラクティス・エフェクト』はサイエンス・ファンタジーですが、最後にそのからくりがわかります。読んでいくとわかりますが、主人公と異世界の住人がなぜ意思疎通ができたのかというのが、その後半で明らかにされることによってわかります。これには、私もも「そうだったのか」と思わざるを得ません。でもこの作品では、主人公デニス自身、「この異世界について、もっと多くの知識を得たい。」というスタンスで、そうこうしていくうちにこの世界の出来事に巻き込まれていくという感じです。しかしながら、そこで重要な役割を果たしているのが「プラクティス効果」です。この効果がなければデニスは何もできなかったわけですし、物語は成立しません。思うに、このようなエントロピーが増大するのではなく、プラクティスすることによってさらによりよい物品にすることができるという奇妙な法則になっている社会を一見魔法の力が働いているような世界としてSFの枠組みで書いたブリンのアイディアには脱帽します。本作品は続編の可能性もあるとのことで、じつに楽しみです。

 後々、ティモジー・ザーンの『不思議の国トリプレット』とも比較しようと思っているのですが、この『不思議の国トリプレット』もやはり魔法世界と科学世界と現実世界の3つの世界で起こる問題を解決するという話ですが、主人公がこちらでは女子大生であるという点などで比較して見るとなかなか、二人の人気作家の違いがわかって面白いです。(詳しいことは後の『不思議の国トリプレット』の書評で述べたいと思います。)


本について