『漂着神都市』感想めも


 中井紀夫『漂着神都市』(徳間ノベルズ)読了。SF作家の森下一仁さんの『現代SF最前線』(双葉社)を読んでいて、とても面白そうだったので、読みたいなぁと思っていたのでした。

 東京都心に宇宙船が現われ、残していったもの、後に漂着神と呼ばれるようになったそれは奇妙な機械たちを作り上げて、様々な形態の建物を作り上げたのだ。その中でも一番巨大な新宿西口にある「漂着神神殿」と呼ばれる建物は巨大なラビリンスであった。そんな機械たちや機械たちが立てた建物を解体、分解する会社に勤めるのが主人公真昼野であった。彼は淡々と職務をこなす有能な解体屋だった。そんなある日、団地に巣食った漂着神機械を排除・解体すべく仕事をしていた真昼野は漂着神機械を収集する美少女朝里と出会う。彼女はムカデ機械を採取しようと、解体の始まっていた団地の中に危険も顧みずに侵入したのだった。真昼野は危険にさらされた彼女の命を救い、まさに運命的な出会いをしたのだった。そんな彼女がもくろんでいたのが、漂着神機械を使ったアートで、彼女はそのアートを作り上げるために漂着神機械を収集していたのだ。しかしそんな彼女の身に最大の危険が訪れるのも時間の問題だった……。

 ストーリーは単純明解なんだけど、状況設定がとてつもなく魅力的。このガジェットだけでも楽しく読むことができます。(なんといっても漂着神機械に味があってがいい。例えばカメラを改造した漂着神なんかは、フィルムをもらいに人間に調教されるとか。テレビ型の機械なんて、テレビに手足が生えていて、主人公にちょこちょこついてくるのはかわいらしいしね。)人間にとっては不可解で理解しがたく、非常に迷惑な話なのだけれども、このようになってしまった現実を受け入れている人間たちの姿がとても日常的でいい感じ。ストロボで機械を追い払ったり、火炎放射器で機械を退散させるとかそういうあたりもゴーストバスターズ的で、なんか面白いです。

 もちろんクライマックスの「漂着神神殿」内部への決死の奪還がすごいわけですが、色々な機械が主人公たちに襲い掛かってくるシーンはまるでありの巣の中に入ってしまった人間を彷彿させます。とてつもなく巨大でわけのわからないこの神殿内部は悪夢の迷路さながらで、想像するだけでもぞくぞくしてしまいます。森下さんも「円谷プロ作品」と形容しているけど、映像化したら見てみたいなーと思う次第。結末はもろにメカ好きな人には「うきょおぉぉ、そ、そんな」と悶絶してしまうオチなんですが、この結末に涙してしまう人もいるはず。丁度この直前に中井紀夫さんは『山の上の交響楽』で星雲賞を授賞されているわけなんですが、中井さんの筆が爆発した傑作といえるでしょう。変なメカが大好きな人は必読っていうか、読まなければ駄目でしょう。