私家版SF用語集その1


SF用語集!

ここでは普段耳慣れないSFで良く使われる用語について、解説を試みたものです。主に早川書房編集部編『SFハンドブック』、ブライアン・アッシュ編『SF百科図鑑』、木城ゆきと『銃夢』、士郎政宗『攻殻機動隊』、坂口尚『Version』、石原藤夫『銀河旅行と特殊相対論』、石原藤夫/福江純『SFを科学する』、石原藤夫/金子隆一『SFキーパソン&キーブック』、クライン・ユーベルシュタイン『SF思考のすすめ』などの資料を使っています。

 間違いなどがございましたら、以下のアドレスにメールをいただけるとありがたいです。なお木城ゆきと、士郎政宗、坂口尚の著作は漫画ですが、かなり詳しく用語が記されていたり、その考えが記されているので、ヴィジュアルで知るためにも読む価値はあると思います。すべては網羅していないとは思いますが、できるかぎりは集めてみたので、SFを読むときの手助けになれば幸いです。

  1. AI(Artificial Intelligence)

     人工知能のこと。主にロボットの頭脳の部分を示しており、人間並みの知性をもったコンピューターといってもよい。扱った作品としては士郎政宗『攻殻機動隊』のサポートロボット「フチコマ」や、アーサー・C・クラークの『2001年宇宙の旅』の「HAL9000」、ウイリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』ウインター・ミュートが人工知能の例としては有名である。特に最近ではその集大成として早川書房からデイヴィッド・G・ストーク編『HAL伝説』が発売され、マーヴィン・ミンスキーらの著名な科学者が人工知能とHALについての著作を出している。もうすこし詳しく知りたい人は講談社現代新書の一冊西垣通『AI』を参照のこと。

  2. バイオテクノロジー(Biotechnology)

     遺伝子などを意図的に操作して、優生的な人物を作り上げようという技術などや、人間環境に役立つように動物、植物を遺伝子レベルで改良して利用しようという技術などの総称。これはかなりのSFで題材とされており、ロバート・A・ハインラインの『未知の地平線』ではこの問題を先見的に扱っており、他にもグレッグ・ベアの『ブラット・ミュージック』などがある。この問題を徹底していくとブルース・スターリングのいういわゆる<工作者>の立場となる。(詳しくは彼の作品、『スギスマトリックス』を参照のこと。)

  3. ブラックホール(Blackhole)

    重力が強すぎて、光すらもそこから脱出できないような一方通行の時空のこと。我々の世界では光が最速であるから、光より速い測度で運動できる物質がないとすれば、ブラックホールからは何物も飛び出すことができないとされる。学問的にはドイツの物理学者シュヴァルツシルトが最初に研究しており、例えばブラックホールの半径の事を彼の業績にちなんで、「シュヴァルツシルト半径」と呼んででいる。イメージ的にはブラックホールとは底なしの胃袋を持つ怪物みたいなもので、宮澤賢治の有名な童話『銀河鉄道の夜』でも、「石炭袋」の名前で登場しているし、最近では、物理学者でもあるグレゴリー・ベンフォードが機械生命との闘いを描いた一連のシリーズで、ブラックホールを背景にハードSFを展開している。ちなみに何でも吐き出す時空のことをホワイトホール(Whitehole)と呼ぶ。

  4. クローン(Clone)

    最近イギリスの生物学者が羊の複製を作り上げて話題となったが、遺伝学的にまったく同等な個体のことを差す。クローン人間論争が最近話題に新しいので記憶に残っている人が多いと思うが、惜しまれながら亡くなった手塚治虫先生が『火の鳥』でクローン人間の問題を扱っている。

  5. コールドスリープ(Cold Sleep)

     人工冬眠と訳される。人工的にある温度までに温度を下げて、人間の身体を仮死状態にして冷凍保存すること。事実この技術は実用化されているらしい。SFでは、長い恒星間旅行をしのぐために、人工冬眠によって時間を稼ぐというもので、このタイプのものとして、アーサー・C・クラークの『2001年宇宙の旅』があり、書評でも取り上げているロバート・A・ハインラインの『夏への扉』がその代表例である。

  6. クローン(Clone)

     最近イギリスの生物学者が羊の複製を作り上げて話題となったが、遺伝学的にまったく同等な個体のことを差す。クローン人間論争が最近話題に新しいので記憶に残っている人が多いと思うが、惜しまれながら亡くなった手塚治虫先生が『火の鳥』でクローン人間の問題を扱っている。

  7. クラッカー(Cracker)

     他人の電脳に侵入し、情報を盗んだり、操作したり、ウイルスを侵入させて電脳を病気にしたりする、コンピューター犯罪者の総称。特にゴースト(霊魂のようなもの)に侵入できるクラッカーの罪は重い。

  8. サイバネティックス(Cybernetics)

     動物と機械における制御と通信とを、総括的に取り扱う学問として、数学者Wienerが1947年頃に提唱したものである。言い換えれば、生物が自らを制御するメカニズムとしを機械系にとらえ直して、通信・制御・情報処理などの技術を総合的に研究する学問の分野のことである。この分野は後にフォン・ノイマンらが提唱した「オートマトン理論」や人工知能の分野へ影響を与えた。

  9. サイバーパンク(Cyberpunk)

     SFの新形式の一つ。ウイリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』『カウント・ゼロ』『モナリザ・オーヴァドライブ』の3部作やブルース・スターリングやルーディー・ラッカーらの作品を差すもので、自分の脳とコンピューターの端末を直結し、サイバースペースに生きる人々の姿は、ネットワークシステムの未来像でもある。特に、人間と機械がダイレクトに融合した未来社会像をラディカルに描いて話題になっているのが、SFにおけるサイバーパンク運動である。

  10. サイバースペース(Cyberspace)

     電脳空間と訳され、主にコンピューターグラフィックスなどで表現され、擬似体験できる空想上の空間のこと。映像としてはウイリアム・ギブスン原作の映画『JM』のキアリ・リーブズが演じた記憶屋ジョニィがインターネットをダイブするシーンや、岡嶋二人の『クラインの壷』のアミューズメント機械、士郎政宗の『攻殻機動隊』、坂口尚の『Version』などの世界がイメージしやすいものと思われる。

  11. サイボーグ(Cyborg)

     改造人間と訳される。Cybernetic Organismの省略形で、1950年代に作られた言葉である。これはサイバネティックスから派生した言葉で、人間の諸器官を医学的に人工機器に置き換えて、人間が宇宙空間などで生きて生けるようにしようとする目的で改造された人間のことである。

    これを題材にした作品は多く、例えばニール・R・ジョーンズの有名なシリーズ『ジェイムスン教授シリーズ』に出てくるサイボーグは箱型のサイボーグで、士郎政宗の『攻殻機動隊』に出てくるジェイムスン型サイボーグとはこのような形のサイボーグのことをいう。他には、『攻殻機動隊』の草薙素子少佐自身もサイボーグだし、木城ゆきとの『銃夢』の大半の登場人物はサイボーグである。また、古典漫画では、松本零士の『銀河鉄道999』は機械の身体をもらいにアンドロメダまで旅する話であるし、石森章太郎の古典的名作『サイボーグ009』はまさに各人が特性を持つサイボーグへと改造されて、悪と闘うという話に仕上がっている。SF小説では、グレゴリー・ベンフォードの『大いなる天上の河』に出てくるビショップ族のキリーンやトビー、フレデリック・ポールの『マン・プラス』などが有名なサイボーグものの作品である。また徹底的にこの考えを突き進んだのが、ブルース・スターリングの『スギスマトリックス』に詳しい、<機械主義者>となる。

  12. ESP(超能力)

     Extrasensory Perceptionの略。人間の五感以外の感覚のことを通常差す。他人のことや自分の意志を身体や声を使わずに知ったり、伝えたりすることをテレパシー、物を動かす能力であるサイコキネシス、未来のことを予測する予知能力であるプレコグニション、障害物を通過して物事を見る能力であるクレアポヤンス、瞬時に移動するテレポーテーションなどがある。これらの能力を使ったSFや映画などは非常に多く、特に有名なものとしてはまずシオドア・スタージョンの『人間以上』やアルフレッド・ベスターの『虎よ!虎よ!』や、シュミッツの『惑星カレスの魔女』などが有名である。そして、日本のアニメでは平井和正原作、大友克弘監督映画『幻魔大戦』や、『AKIRA』などたくさんのアニメで取り上げられている。

  13. ゴーストハック(Ghost Hack)(洗脳)

     人間本来が持っているゴーストを外部的にハッキングして、記憶操作したり、人格操作を行ったりすること。

  14. ゴーストアウト(Ghost Out)

     死ぬこと。ギブスンでは、「フラットライン」とも言われている。

  15. ハッカー(Hacker)

     クラッカーと違うのは、コンピュータのプロもしくは天才のことを差し、あくまでも迷惑をかけないで、自分のテクや知識を駆使してコンピュータに侵入したりする人々のこと。犯罪行為を行っているクラッカーとは異なる存在である。現状ではハッカーとクラッカーの区別がきちんとされておらず、犯罪行為までをハッキングとしていることに対して、本物のハッカー達からの不満はある。
    士郎政宗の『攻殻機動隊』はまさにこれを扱った作品で、草薙素子少佐はそのプロである。そしてサイバーパンクの大御所、ギブスンの作品『ニューロマンサー』では電脳空間カウボーイのケイスらが、その代表人物である。

  16. ハードSF(Hard SF)

     定義には二つあり、一つは「いわゆるSF黄金時代に書かれたジャンルSFのテーマと、多くの場合そのスタイルを、反復しているような種類のSFをいう。」もしくは「いわゆるハードサイエンスを扱っているSF」という。後者の意味の方が、日本では強く、言い換えれば、「科学的な基礎に基づいて書かれたSF」といったところであろうか。

  17. メトセラ(Methuselah)

     ロバート・A・ハインラインの『メトセラの子ら』で有名である。聖書に出てくる人物で、非常に長生きをしたことから長じて、不老長寿の人々という意味となった。同様なテーマでは、ポール・アンダースンの『百万年の船』が有名で、こちらも非常に面白い作品である。

  18. ナノマシン(Nanomachine)

     1976年のエリック・ドレクスラーのアイディアによる。原子を一個ずつ積み上げて作られたギアー、ベアリング、モーターなどのパーツから構成される分子サイズのロボットである。静電気によって駆動し、分子結合の特性によって非常に壊れにくく、あらかじめ内蔵されたプログラムに沿って作業する。これら分子ロボットのことをアセンブラー(Assembler)と呼ぶ。またアセンブラーには自己増殖のプログラムが組み込まれており、一種のマシンウイルスのようなものと考えてよい。詳しいことを知りたい方は、ナノテクノロジーの項にも書いたが、木城ゆきと『銃夢』の5巻の解説および、ケヴィン・J・アンダースン&ダグ・ビースンの『無限アセンブラ』や講談社現代新書の『マイクロマシン』(那野比古)を参照されたし。

  19. ナノテクノロジー(Nanotechnology)

     10億分の1メートルぐらいの極細な単位を扱うことを目指す技術。「ナノ」はちっぽけなというギリシャ語「ナノス」からきた接頭語。将来的には人間の身体の修復(リストーラー)や、脳修復や脳改造などに用いられるのではないかと期待されている。これを扱った題材としては、木城ゆきとの『銃夢』のディスティ・ノヴァ博士が分子機械工学の専門で、この技術が物語の大きなファクターを占めているのは周知の事実である。また、第4回日本ホラー長編大賞の中井拓志の『レフトハンド』は、ナノマシンウイルスを扱ったホラーであるし、ケヴィン・J・アンダースン&ダグ・ビースンの『無限アセンブラ』は同じくナノマシン侵略ものである。

  20. ウロボロス(Ouroboros)

     対自核夢と訳される。五感を巧妙に仮想現実にすり替え、電子的に誘発された夢の中に閉じ込めるようなプログラム。夢の内容は原始的な暗示(不安、戦闘、恐怖)によって誘導するが、具体的な出来事は本人の記憶・潜在意識によって作りだされる。やはり木城ゆきと『銃夢』や、ロバート・A・ハインラインの『ウロボロス・サークル』などに詳しい。

  21. パラレル・ワールド(Parallel World)

     並行世界と訳される。特に我々の宇宙と隣り合わせにいながら、因果関係の断ち切られた別宇宙である異次元世界の中で、我々の世界と非常に似ている歴史や社会を持っている世界のことをいう。このテーマでの最高傑作は科学者フレッド・ホイルの『10月1日では遅すぎる』やマイクル・P・キュービー=マクダウエルの『悪夢の並行世界』やフィリップ・K・ディックの『高い城の男』などが有名である。

  22. サイコメトリー(Psychometry)

     物体に触れることによって、その物体の出所、由来、関係する人々等の情報を把握する能力のこと。これも木城ゆきと『銃夢』のケイオスの能力として出てくるし、現在週刊少年マガジンで連載されている『サイコメトラーEIJI』は主人公が遺留品などから犯人を推定するという流れの推理物になっていて、なかなか面白い。

  23. スペースコロニー(Space colony)

     1969年に物理学者ジェラード・K・オニールによって提唱された概念。彼によれば、「地球の影にならない外側で、我々が食料を育てて自給でき、すべてのエネルギーを太陽にあおぐ、地球に似た居住区のこと」とされ、必要な物資はすべて小惑星などから調達されるものとする。もともと環境問題から出てきた概念でもあり、実現されてもおかしくはない話である。ちなみにスペースコロニーを扱ったSFとしては、ラリイ・ニーブンの『リングワールド』シリーズが有名である。アニメ作品では、『機動戦士ガンダム』シリーズにスペースコロニー間戦争の題材がからんでおり、面白い。

  24. スチーム・パンク(Steampunk)

     SFの新潮流の一つで、19世紀イギリスを舞台としたどたばた活劇のことで、別名マッド・ヴィクトリアン・ファンタジーと呼ばれる。特にティム・バワーズ、K・W・ジーター、ジェイムズ・P・ブレイロックの3人のグループの作品のことをいう。1980年代に一世を風靡したサイバーパンクをもじった名前と言われている。両者ともに「がらくたと混乱」をキーワードとして実に多様な影響を各方面に与えている。

  25. テラフォーミング(Teraforming)

     ある惑星の生態系および環境を都合よく作り替えること。例えば、フランク・ハーバードの超有名作『デューン』シリーズでは、砂の惑星であるデューンを如何にテラフォーミングするかという話も含まれているし、他にブルース・スターリングの短編集『蝉の女王』の中の「火星の神の庭」では、火星の生態系を如何に変化させるかというテラフォーミングの話である。

  26. タイム・マシン(Time machine)

     現在の人類が過去の世界を訪れたり、未来の世界を訪れたりするために使う機械のことである。この機械については、例えば古典SFで有名なH・G・ウエルズのSF小説『タイム・マシン』(早川文庫SF他)やポール・アンダースンの『タイムパトロール』シリーズ、映画では沢山あるが、記憶に新しいと思われる『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや、手短な児童アニメ『ドラえもん』のタイムマシーンなどがその例である。

  27. ワープ(Warp)

     時空の歪みを利用して、超光速で宇宙空間を移動すること。これもハードSFのモチーフとしてはよく利用される。