『第十番惑星』感想めも


 ベリャーエフ『第十番惑星』(角川文庫)読了。長編「第十番惑星」と中篇「宇宙の神秘」が収録。特に後者の「宇宙の神秘」にはぎゃふん!させられたのだった。このジュヴナイルは読む価値が絶対あり。

 天文学者のソルンツェフ博士は優秀な教え子ユーラから第十番目の惑星の存在を知らされる。その十番惑星は地球と同じ軌道を回り、地球の正反対の位置にいるために地球からは観測されなかったのだ。ユーラの「証拠を見せましょう」という言葉にしたがって博士は彼の乗り物に乗って移動しようとしたのである。ところがその車に見えた乗り物はなんと光子ロケットだったのだ!わずか28分で第十番惑星についた彼らは惑星調査に乗り出すのだが、双眼鏡を取りに行ったユーリの姿と宇宙船の姿がない!果たしてこの第十番惑星には何があるのか?彼らの身に何が待ち受けているのか?(「第十番惑星」)

 シメイズの町外れを散歩するたびに山の急な斜面にぽつんと一軒だけたっているその別荘がきになったわたしは、ある日著名なワグネル博士が住んでいることを知る。好奇心にかられたわたしは杜松の薮の中に待機していたのだ。ある朝はやく、やっと明るくなった時分にあから顔に赤茶けた口髭とあごひげを持つ背の高い紳士が出てきた。彼は、あたりに人気がないことを見定めるとなんと目の前にあった巨大な岩をまるでボールを持つように軽々と持ち上げて、遊びはじめたではないか!その光景に唖然としていると、さらに追い討ちをかけるように博士は四メートル以上も高く飛びあがり、なんとわたしの方にとんできたのだった。負傷してしまった博士を助けたわたしは博士の屋敷でとんでもない体験をすることになるのだが……。(「宇宙の神秘」)

 「第十番惑星」はハードSFジュヴナイルといっても間違いはない作品だろう。地球の反対側に第十番惑星があるという夢を持った少年少女も少なくないだろう。それくらいリアリティのある話だった。惑星に到着してからの奇妙な冒険となぞ解きはわくわくさせられる。一瞬、巨大な亜人類(ゴリラのような姿をした野蛮な連中)が博士たちに襲いかかってくるものだと思ったのだが、後でこの謎を知ると、「おお、そういう手があったか」とびっくりさせられる。この架空の惑星は光学が地球よりも発達していることがポイントだったのだ。面白いのは博士の行動だろうか。久々に本物の科学者が冒険をするというお話を読んだ気がした。この冷静な博士の姿は生涯ぼくの心の中に植え付けられるだろう。ネタバレもあるので、やや押さえ気味に書いているが表紙絵のような「猿の惑星」しているような話かと思ったらギャフン!されました。

 久々に思い切りぎゃふん!な気分にされた「宇宙の神秘」の方はタイトルの意味を汲み取れば「ははぁ」と思うことだろう。しかし、内容だけからは想像できないオチであって、これはベリャーエフという作家のイマジネーションのすごさを痛感させられる一冊であろう。ワグネル博士が発明していた機械が実は反重力発生機械であり、さらに地球の回転を早めて遠心力を増して、物体の重さを軽くするというマシーンだったのだ。これはすごいアイディアだと思った。どんどん加速する地球。日々軽くなる体重。破滅的局面での恐怖はさながら大きなハリケーンに呑まれた人々の姿に近いだろうか。ひたすら空の上に漂っている人々と物体。陳腐な言い方しかできないが、想像すると結構おかしい。久々にマッド・サイエンティストものを読んだなぁと思っていると、とんでもないオチが待っていたのだった。このオチはまったく妥当なものであり、そういわれると「おお!」と思うのだが、ものすごくやられた気分になる。これは主人公のわたしも同じだろう。

 久々に痛快な冒険空想小説を読ませていただいた。ベリャーエフに感謝。