『一角獣・多角獣』感想めも


 シオドア・スタージョン『一角獣・多角獣』(早川書房)読了。のーてんをハンマーで強烈に叩かれた気分(どんな気分なのか?)だ。短篇の表題の付け方ですでにスタージョンの世界に引き込まれている自分に気がつく。特に短篇の表題で気になったのが「死ね、名演奏家、死ね!」("Die, Maestro, Die!")である。偏執的な雰囲気がすでに表題から出ていてしびれてしまった。この短篇集には10個の短篇が収められているが、どれもこれも一癖二癖あって読んでいるうちにぞくぞくしてしまった。先制パンチは「熊人形」。偶然なのかもしれないが、かつき@ファンタジア領さんの掲示板にかつきさんと血まみれ熊のイラストがあったのだが、まさにそんな短篇(笑)。いや、偶然とはいえ驚いてしまった。テディ・ベアの人形が実は……という話しで、ぜひ読んで欲しい。どの短篇も凄いのだが、印象に残ったものについて言及しておく。「熊人形」「ビアンカの手」「死ね、名演奏家、死ね」「考え方」だ。本当は全部取り上げたいところだが、とりあえず半分にしぼってみた。「ビアンカの手」は男性諸氏なら感じてしまう嗜好への皮肉が込められているんじゃないかと。あー、もしシチュエーションが足フェチだったら「踏まれて死ぬ」っていうのが本望なんすかね?「死ね、名演奏家、死ね」は現在にもこーいうタイプの奴はいるんだろうなぁと思わずのけぞってしまった。タイトルからして人を喰っているし。でも確かにこーいう奴は殺したくなるよなとか思った。でもラストのあのシーンは衝撃的だったなぁ。この短篇を読み終わるころには「死ね、名演奏家、死ね」が頭の中でリフレインしてしまっていた。続いて「考え方」。発想のコペルニクス的転換を如才なく発揮していて、衝撃のラストに戦慄すら覚えた。あっさりテイストかと思いきや、衝撃度ではたぶんこの短篇集ではトップクラスにあるでしょう。

 この短篇集に出会えてよかったと思う。レイ・ブラッドベリに毒を加えるとスタージョンなんだろう。強烈な猛毒にて人を殺してしまうコブラのような作家だ。ぼくたちが正常だと思っている倫理観から斜に構えることによって、スタージョンはぼくたちが普段気づき得ない世界を提示してくれる。世間からは村八分にされているような人々、異能者たちを描くことで「日常からのずれ」「起こり得ないことを合理的に説明する」ことに成功しているように思えた。まだ他の短篇や作品を読んでいないのでどう評価するかはわからないが、とにかくわかったことは『一角獣・多角獣』は傑作であって絶対読まなければ損をする短篇作品集だということだ。