『最後のユニコーン』 |

たんぽぽの綿毛のような柔らかなたてがみと貝殻色に光る角を持つ、この世で最も美しい生き物であるユニコーンが、いつのまにか世界から消えてしまった。ただ一人ライラックの森に残された年老いたユニコーンは、ある日狩人たちの会話から、自分以外のユニコーンたちが消えてしまったことに気づき、住み慣れた森を旅立って、旅の途中に出会った「蝶」の残した<赤い雄牛>という謎の言葉を手がかりに、消えた仲間を求めて世界を放浪するが……。
1968年に出版された作品で、1979年に日本語に翻訳されて早川FT文庫の11番めの作品として販売されています。なお、この作品はロングランを続けている一冊で、大手の本屋には大抵あるので、見かけたらチェックしてみてください。
作者のピーター・ソーヤ・ピーグルは1939年4月に、ニューヨークのブロンクスに生まれました。ピッツバーグ大学で学び、卒業後パリでしばらく過ごし、スタンフォード大学に数年在籍した後、ニューヨークに戻り、現在はカルフォルニア州の近くの農場で過ごしているそうです。(ただし1979年現在です!)
ピーグルは寡作で、今までに発表している作品が7本!しかありません。長編はうち3本で『心地よく秘密めいた場所』(創元推理文庫)、『風のガリアード』、そして本書『最後のユニコーン』、そしてハードカバーの『ユニコーン・ソナタ』(早川書房)の3つしかありません。ピーグルはシナリオ・ライターとしての仕事の方がメインで、そのためもあってたぶん寡作なのだと思います。しかしながら彼の作品は寡作ながらも、ファンが多く、ロングランを続けているところを見ればわかるように、日本でも根強い人気を保っている作家の一人といえるでしょう。
読み終わった後、リドリー・スコット監督の『レジェンド〜光と闇の伝説』が無性に見たくなってしまい、レンタルビデオ屋に行ってしまいました。両作品に共通しているのは、ユニコーンと赤い雄牛です。前者はユニコーン自身が主人公ですが、後者は森の番人が主人公という点などが違います。しかしながら、何点か類似なシーンがあって、本を読んでいる間に各場面での既視感を強く感じてしまいました。もしかすると映画のシナリオライターにピーグルが参加していたのではないか?と勘ぐりたくなるほど、イメージがフィットしてしまいました。
話がちょっとそれましたが、所々に出てくる登場人物が実にいきいきとしています。囚われたユニコーンを救出する魔術師シュンメンドリックの中途半端な魔術師ぶりと後の変容。シャーウッドのロビン・フットのパロディーで出てくる森の盗賊たち。その盗賊の仲間で長い間ユニコーンを待っていた皮肉な中年女性モリー、シュンメンドリックによって変身させられたユニコーンの人間の姿であるアマルシア姫、ハガード王とリーア王子などなど、各人が実に美しい文体で描写されていて、一気に読めてしまいます。(個人的には骸骨のキャラクターが笑えたのですが(^^;;) ラストのシーンが非常に印象的です。(私自身はこういうハッピーエンドは好きです。)
実際、森の中からユニコーンが感じられなくなった時点で我々も夢を失ってしまうのかな?とか思ってしまいました。そういうことがないように、自然と調和してユニコーンの存在を感じたいものですね。