『ヴァーミリオン・サンズ』感想めも |
読んでいるときに、この作品は「幻想文学」だと思いました。内容云々よりも、イメージの鮮烈さが印象に残るような話が多かったように思えた。山尾悠子さんの作品をこよなく愛する読者なら、バラードの作品も好きになるなと思いました。ぼくが予想していたよりも幻想的な作風で、SF度が低いのにびっくりしました。
『ヴァーミリオン・サンズ』は架空のリゾート地を舞台にした連作短編集。帯に書かれているように「狂気の愛、砂漠の海!」−夢と狂気と倦怠が支配する砂漠のリゾート−がテーマ。この気だるいリゾートの雰囲気が登場人物の心を狂わせていく。これは出てくる女性たちがどこか心に傷を負っていることにも関係があるのかもしれない。女性たちの精神的外傷が読者に強く印象を与えるという感じでした。リゾートの素晴らしさ(音響彫刻が美しく音色を響かせ、美しい砂漠の海)とは対称的に、彼女らの心の中に潜む内的世界は暗く重々しい。
あっけらかーんとしてよかったのが「プリマ・ぺラドンナ」。神話との融合性と物語の美しさと、ラストの落ちの良さで「スターズのスタジオ5号」がマイベスト。自動機械で詩作をするヴァーミリオン・サンズの芸術家たちが一人の美女によって、○○を復活させるというストーリー。砂漠に流れ出た詩のテープの断片が印象的でした。
「風にさよならをいおう」はペルソナをかぶってしまった女性の姿が印象的。心と顔の非対称性が素晴らしい。再帰的なテーマに惹かれました。「歌う彫刻」も「スターズのスタジオ5号」と通じるテーマを扱った話といえ、まさか○○に○してしまうなって想像もつかないオチにびっくりした。
人為的かつ機械的なリゾートの美が逆に人間の心の中のゆがみや闇を強調していたのではないかと思った。広義にはSFに分類される話ですが、どちらかというと幻想文学色が強い作品だと思いました。ニューウェーブの代表作家の作風が少し理解できたような気がします。