『殺人チャットルーム』感想めも |
スティーヴン・キャネル『殺人チャットルーム』(徳間文庫)読了。あらすじだけを見ると、よくビデオ屋にあるしょうもないB級サイコホラー映画のストーリーみたいで、ぼく自身まったく期待していなかったんですが、これが読み始めるとものすごく面白い。筋をおっていて、本を読むというより映画を見ている感覚に近いなと思ったら、作者はハリウッドの売れっ子の脚本家でした。ちょっとそれはどうかなと思う設定もありましたが、小気味のよい物語のスピーディーさはまるでジェットコースターに乗って一気に下っている感覚。このスピード感に対する感覚は著者のキャネルがテレビドラマの脚本(「特攻野郎Aチーム」など多数。)を書いているからでしょうか。表紙がものすごく地味(ネズミ一匹(笑))で、いったい何の話かと最初は思っていました。『スノウ・クラッシュ』を翻訳している日暮雅通氏だったので、もしかしたらと思って購入したのですが、意外な面白さでした。
身長2m、異常な体重を持ち、体には毛がない醜悪な姿の男、彼の名前はレナード・ランド。電脳世界ではラットというハンドルネームを持つ天才的なクラッカーだった。彼は亡き母親の姿を求めて、自分の母親を復活させるべく、獲物として狙った女性を物色し、殺していた。そんな怪物のような彼は着々と母親の復活のための儀式を繰り返していた。その一方で、猟奇殺人・サイコパスなどのプロファイリングの専門家カレン・ドーソン博士は、猟奇的な殺人を繰り返すサイコパスらが日々集うとされる匿名サーバーに進入しようとクラッキングを続けていた。彼女はアメリカ税関局のタフな税関局員ジョン・ロックウッドの協力を得て、彼が逮捕したメキシコ人クラッカーマラヴィーダの力を借りようとする。しかし、その後誰がカレンの好奇心から生まれた調査が恐ろしい事態を引き起こすことになるのだ……。
これは映画化を念頭にいれて書かれたのかなとか思ってしまうほど、映画を見ているような気分になってしまう小説でした。サイコパスのレナード・ランドもとても恐いんですが、あまりにも冷静過ぎるカレンに人間味を感じなかったのがマイナス点。もちろんハリウッド映画的なので、ちゃんとラブロマンスもお約束のように入っているのですが、ちょっとどうかなーと思ったり。主人公のロックウェルがかなり悲惨すぎて、思わず同情してしまうくらい。これでもか、これでもかと異常なまでの痛めつけが痛々しいです。それでも、一気に読ませる力があるのはやはりテレビドラマの脚本をたくさん書いているキャネルの筆力のうまさがプラスに働いているからだと思いました。キャラクターが露骨に性格づけされているので、どのキャラクターに感情移入するかでかなり読み方が変わってくる可能性があるかも。サイコパス側で読むのもよし、頑固な税関職員側で読むのも可でしょう。これはひとそれぞれの読み方に依存することでしょう。カレンのプロファイリングの方法も面白いし。なるほど、と思いました。
コンピュータのハッキングに関しては専門家から見ればかなりつっこみがいれられるんじゃないかと思うんですが、物語のスピードを考えれば仕方がないかなと思いました。ただラットの攻撃方法が嫌らしいので、なかなか。殺人方法がハリウッド映画のB級アクションホラーに出てきそうな感じの殺人方法なんで、好みがわかれるかも。ただぜひこれは映画化してみて、見てみたい作品ではあります。となるとキャスティングが重要になりそうですが、カレンは一応ジョディ・フォスター(笑)あたりで。ロックウッドが結構悩むところかも。いやー、堪能しました。
他にも『陰謀』(徳間書店)という作品が出ているみたいなので、機会があれば読んでみたいです。時間つぶしには最適といえましょう(これは誉め言葉)。