『迷宮都市』 |
イラスト:品川るみ魔法使いインゴールドが、破壊されたダールワスの首都ゲイから幼いティル王子を救うために虚空の彼方からやって来たとき、カルフォルニアの大学院生ジル・パターソンと車の整備工ルーディ・ソリスは魔法使いインゴールドを助けた。だが邪悪な怪物である、闇の生き物がインゴールドを追ってやってきたので、三人はやむなく魔法使いの世界であるダールワスへと戻らなければならなかった。ダールワスは魔法が働く世界で、3000年の間地下に潜んでいた暗黒の生物達が人類を滅ぼそうとしていた。実際ダールワスの主要な都市であるカルスト、ゲイ、ペナンブラ、デーレは闇の怪物達によって滅ぼされ、今や連絡がとれない魔法使いたちが住む都市クオと昔人類が暗黒の生き物の略奪に対抗するために建てられた険しい山麓にあるダーレの古城のみであった。
ダールワスの国王エルドールはゲイで命を落とし、若き王妃ミナルデの兄である大法官アルウィルが摂政となっていた。そしてそのアルウィルと権力を争っていたのは、<正しき信仰>教団の狂信的な指導者である女司祭ゴヴァニンであった。そして彼らはともに大魔法使いインゴールドを恐れていた。カルストからダーレの古城までの逃避行は命からがらのものであった。冬の冷たい泥の中を歩く避難民は野蛮な種族であるホワイト・レイダーズと暗黒の生き物に狙われていた。その途中でジルは衛兵の一員となり、アルテと恋仲になったルーディは魔法の力が自分に備わっていることを知り、インゴールドの弟子にしてもらった。そして生存者達が城に到着するや否や、インゴールドとルーディは連絡のとれないクオに向けて旅立つことになったのである。クオとは、魔法使いたちが古代からの学問を学ぶ魔法使いたちの都市であった。クオの大魔法使いロヒロとの連絡が取れない今、インゴールドとルーディはクオに向けて苦難の旅へと旅立ったのである。苦難の旅を続けやっと、クオへと到達すると、さらに複雑になった幻影のバリアに守られた状態であった。果たして彼らは、クオで何を見たのであろうか……。その一方でジルは研究者としての能力を生かし、古い記憶を調べて古代の人々がどのように暗黒の生物を撃退したかを探り出そうとしていたのである。そしてミナルデとともに、ジルはついに過去の魔法使いが実験をしていたとされる実験室を発見することに成功したのである。
1983年に書かれた作品で、1990年に早川SF文庫の一冊として日本語に翻訳されています。イラストは『ルーフワールド』などのイラストでご存知だと思いますが、品川るみさんで、今回は灰色のローブをまとったインゴールドとルーディの二人が描かれています。インゴールドは月の形をかたどったつえを持ち、炎をつけています。そしてルーディも同じように呪文を唱え、その魔法のマナの球が両手のひらの方にと出現しているという感じです。とても幻想的なイメージです。
著者バーバラ・ハンブリーについてはこちらをご参照ください。
今回は大魔法使いインゴールドに弟子入りしたルーディが主人公になっています。ルーディとインゴールドが苦難の末、連絡ができなくなった魔法使いの街クオにたどり着き、そしてそこで彼らが見たものは……想像を絶するものでした。インゴールドは最愛の友人と死別し、残ったのは魔法使いたちがかつて集ったと思われる都市の残骸でした。インゴールドの悲しみがひしひしと伝わってきました。また、ルーディが途中、旅の過程でインゴールドとはぐれてしまうシーンがありますが、そこで彼が体験したことはとても彼の魔法使いとしての成長に一役買っているのではないかと思いました。彼は途中ホワイト・レイダースにとらえられてしまうのですが、そこで彼が逃げ出そうとして利用したまやかしの魔法がなんと「カメムシ」でして、それがむしろあだになってしまうあたり、やっぱり異世界なのだなぁと思いました。(ダールワスにはカメムシがいないのです。)
今回はジルはわき役的な存在になっていますが、とても重大な発見をルーディの恋人でありダールワスの王女であるミナルデとともに行います。それは複雑になってしまったダーレの古城の地図と魔法使いの実験室の発見です。しかしその一方で、大法官アルウィルは隣のアルケッチの力を利用して暗黒の生きもの達を根絶やしにしようとたくらみ、狂信者達はますます魔法に対して嫌悪感をいだいていきます。そのことは第3巻で明らかになるのですが、この対立こそが人類の最大の敵ではないかと思います。そして、その一方ではジルの友人であったホワイト・レイダースの戦士で衛兵隊長であったアイスフォルコンの死、魔法使いたちの死など悲劇的なことも続きますが、ルーディとアルデの間の愛は確実にはぐくまれていきます。しかしそこに立ちはだかるのは狂信的な教会の権威とアルウィルの妨害ですが……。果たして闇の生物たちとの戦いはどうなるのでしょうか?最終巻でそのことは明らかにされることでしょう。本書も残念ながら絶版で、このシリーズ自身がそうなのでそろえて読むのは大変かもしれませんが、ぜひ頑張って見つけてみてください。