『ゼロ・ストーン2/未踏星域を越えて』 |
イラスト:加藤雅基名うでの宝石商人だった亡き父親から譲り受けた神秘に包まれた宝石、ゼロ・ストーンを持ったその日からぼく、マードック・ジャーンの運命を大きく変えることになった。はかりしれぬ力を持つこの神秘的な石に誘われて大宇宙へと旅だったぼくを待ち受けていたのは、絶え間ない冒険の連続だった。クーンガ・シティでぼくの父の友人でかつ、ぼくの師匠だったヴォンダー・アストルを罠によって失ってから、命辛々自由交易商人の船へと交渉をして乗せてもらったぼくは、そこで、出会った猫型エイリアン、イートとともに盗賊ギルドのアジトと思われる星へとうまく脱出し、そこでうまく、正義の味方(と思われた)パトロールたちとの間でうまくやりとりをして、パトロールからまんまと新しい宇宙船を手にいれることのできるお金を手に入れることができた。ぼくはそのお金で、新しい宇宙船を購入したが、宇宙船の操縦士がいない。それに気づいたぼくはイートから敵をまくための変装術を学んで、カーノ・リスクという自由貿易業者の操縦者と半ば強制した形で、同行してもらい、彼と契約を結ぶことになった。
そこで、カーノ・リスクに船を託したぼくは、交易のために惑星ローガルで価値のある宝石、ゾランと交換すべく、惑星ローガルへと降り立ち交渉に入ろうとしたのであるが、なんとライバルの宝石商人の船がすでに先着として、自分の持っている公刊物よりもはるかによい性能を持つ製品を持って、交換をしてしまったのだ……。この交換に失敗してしまったぼくは、ゾランの粗悪品しか入手することができなかったが、この失敗の埋め合わせのために、亡き父の話から聞いていた伝説の惑星、”ソロリス”でこの失敗を埋め合わせるべく、この未踏の惑星で交易をしようと救命艇でこの惑星へと降り立ったのであるが……。
1969年に書かれた作品で、1987年に早川SF文庫の一冊として日本語に翻訳されています。イラストは前作と同様、加藤雅基さんで、そのイラストのファンは各方面に大勢おり、本SF文庫でも他にも何冊かイラストを描かれています。今回はイートがマードックの頭の上にちょこんとのっていて、マードック自身は宇宙服を着て、宇宙空間をさまよっているというイラストになっていて、神秘的な感じになっています。この巻には他にも加藤氏の華麗なイラストが載っていますが、著作権の問題上、ここでお見せできないのが残念です。
アンドレ・ノートンについてはここを参照してください。
この作品は、前作『ゼロ・ストーン』の続きになっていて、前作から読み進めることを薦めます。今回は少々イートの活躍が目立ちますが、でも後にイートが……ということを知れば、納得するでしょうね。今回の見せ場はやっぱり、ザガサン人ジルリッチたちの古墳の宝を盗んだ盗賊ギルドの本拠地へと宝を取り戻しにいくというシーンでしょうか。このシーンは本当に緊迫していて、まさにうまい手で、敵の惑星へと入り込んで、父親の姿へと変身したマードックが古代の宝である、鉢をもって無事に逃げ出すというシーンが一番、この物語の中で緊迫していて面白いです。(この後、物語は急展開を見せるのですが……)またその間の宝石取引の交易のやりとりなど、実に交易商人SFものとしては、面白いと思います。物々交換で宝石と自分たちの欲望が一致するような品物を交換するという星もあれば、宗教的な目的で物々交換をする住人もいるという感じで、この当たりの緻密な描写と、設定が交易スペースオペラとしての華を添えているのではないかと思います。
イートの活躍もかなり、今回はあります。相変わらず偉そうですが、主人公マードックの無二のパートナーとしての役割をきちんと果たして、ゼロ・ストーンの謎へと2人は迫っていくのですが……。まさかゼロ・ストーンの故郷の地が、あんなところで、イートは実は……。とは思ってもいませんでした。その後のイートとマードックとリスク、ジルリッチたちの冒険も考えることができますが、まあゼロ・ストーンの故郷で、大団円を迎えるというところが、感動的でよかったです。2作品を通じて感じたことは、アンドレ・ノートン女史の作品のすごさというのは、やはりその豊かな想像力と、リアルで女性らしい繊細な場面背景と心理描写などが、見事に融和して彼女の作品世界に幅を持たせているのではないか?と思っています。このシリーズの主人公マードックと異星人イートとの心の交流を軸に、物語が進行していく当たり、主人公マードックの自分探し+成長の旅の二つの要素を兼ね備えた、すばらしいスペースオペラではないかと思います。古本屋で見かけたら是非、購入することをお勧めします。