別に道に迷ったわけじゃないわ。でも、先の事に迷ってしまったの。

Poet            -Thinking & Seeking-

 森は真っ暗で、先が全然見えなかった。

 気が着けばジョセットもアリエンナもみんな正天使階級を貰ってた。私はまだ見習い天使階級。後輩だったルニエラも、いつの間にか先輩になっていた。
 天使は心の成長がそのまま体の成長になるから、早い子はどんどん大人になっていく。私は…私は、いつまでも子供のまま。心の成長の意味を考えると、私は成長していないわけじゃないのに、いつまでも子供でいることが悲しい。ずっとずっと小さいまま。全然大人になんかなれない。
 誰かがママにこんなことを言った。
 「貴女はあんなにも早く成長したのにね」
 ママはその人から高い階級を取り上げて、代わりに召し使いにさせた。
 「天使の成長を、遅い早いと言って馬鹿にしたり、蔑むことは禁忌です」
 天使学校の先生も言ってた。けど、先制だって私を馬鹿にしてる。知ってる。だって、先生はテストの度に私が100点を取ることを笑う。…それは、そうよね…だって、もう同じ学年を何度もやり直しているだけなんだもの。
 「ポエット、周りは貴女を急かすかも知れない。けれど、よく覚えておきなさい。急かされて成長した天使はろくな者にはならないわ」
 ママは私の頭を撫でて言った。
 「ずっとそのままで良いの。それがその人の形だし、自分で成長するには急がず慌てず、そのままでいるくらいの気持ちで」
 …ママに言われた言葉も、今では重荷になってしまった。私は私で私を急かしているの。だから、きっとママみたいな大天使様にはなれないのよ。それどころか、きっと正天使で私の階級はストップね。もしかしたら…ずっとこのまま見習い?

 学校に行くのも飽きた。だって、行ってもからかわれるだけよ。みんなしてこう言うの。
 「やあポエット、ママまであとどれくらい?」
 …私は、ママになりたいわけじゃないのに。

 そう思ったら、急に涙が出てきて止まらなくなって、目の前が全部ぼやけてしまった。誰にも会いたくなくて、誰にも見られたくなくて、走り出していた。
 白い幹と白い葉っぱの聖域の森を走り抜けていた。色の無い世界をみんな聖なる場所って言ってる。

 嘘。

 だって、だって何も無いじゃ無い。私の為になるものも、私の知りたいことも、私の…望むものなんか、色の無い世界は持ってない!

 がくっと、足を踏み外しそうになった。

 そこはホワイトランドの果てだった。崖の下に…

 下に黒や緑の森が見える。

 私は思わず地面を蹴っていた。
 大丈夫!
 私、あれがなんて言う場所か知ってる。
 メルヘン王国。きっと大天使長は驚くわ。でも知るものですか!

 ええ、あれは新しい世界!

 私はホワイトランドに別れを告げた。どうせ一時(いっとき)よ。
 今日の授業だっていつものよく知った同じ授業。

 いってきます!

Poet            -Thinking & Seeking-

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