{モンスター物語}/第1章


トーブル海岸の近くのサウル村のモック柱・・・。
モックのような形をした柱で、サウル村ではよく
待ち合わせ場所として用いられていた。この村は
架空モンスター【ディノ】と、有名な【ロードランナー】
のコンビがつくったという伝説があるので
サウル村と呼ばれていた。
創ったといっても・・・1から作り上げたものではない。
はるか昔、人間が住んでいた村だったが、
人間達はこの近くの海で大きなサカナのバケモノが出るというので
逃げ出してしまった。伝説の動物グジラに似ていて、
普通の藍色をしたグジラではなく、全身がまっしろの
いわゆる白鯨だった。といってもシロナガスグジラ等の
もともと白い種族では無く、突然変異によって
体が真っ白になったというグジラだ。白鯨からは
黄金の血が流れると、ある船の船長が言ったために
白鯨狩りが何度も行われたが、捕獲しに行った
船は全て、暴れる白鯨に襲われて沈没していった。
そのうち、グジラは陸上でも生活できるという
噂まで流れたので人間達はこの村から逃げ出したのだ。
さて、その村のモック柱には2匹のモンスターがいた。
1匹は黒い帽子(シルクハット)をかぶって短いステッキを
持った幽霊のようなモンスター。ゴーストだ。
2匹目は黄金のよだれかけ(?)を持っている事で有名な
ハムオウジだった。
ゴーストは柱に着いている時計を見ると朝の9時24分だった。
「9時って約束してたのに。いつになったら来るんだよ」
ゴーストの名はマジポンといった。
「来るまで寝てよっと」
スポッ!!!
奇妙な音がすると、マジポンの体小さくなっていった。
そして、ついに帽子とステッキ以外は見えなくなってしまった。
ゴーストはいつもこうやって寝ているのだ。
もちろん、帽子やステッキにショックを加えると
眠りから覚めてしまうが。
ハムオウジも寝てしまった。
名前はエテルといった。
2匹は誰かを待っているのだ。
やがて・・・モック柱の所に別のモンスターが来た。
マンナだった。マンナは帽子をぽこっと叩いた。
マジポンの実体が出てきた。眠りから覚めたのだ。
「やっときたかぁ。いつまで待たせるんだよ」
「しょーだしょーだぁ。」
マジポンにつられてエテルも起きた。
「いいじゃない。8分ぐらいどうってことないわ」
「8分だって?」
マジポンは再び時計を見た。
「もう9時45分だ。こんなに遅刻しやがって
言い出したにはお前なのに。」
「それよりはやくいきましょ」
「なんだっけ?あ、そうだった、あれだった。」
じつはおととい、村にいたモンスターの何匹かが
空を黒光りする円盤がジグザグ飛行で飛んでいったというのだ。
ようするにUFO、未確認飛行物体というわけ。
1週間前と、2ヶ月前にも同じ事件が起きた。
サウル村の近くにUFOがいるかもしれないのだ。
で、マジポン、ペッチャ、エテルはそれを観察しに、
トーブル海岸へ行くことにした。なにしろおとといにあった
UFO目撃事件では、目撃現場がトーブル海岸だった。
ペッチャは、リュックを持っていた。
「なにはいってんの?」
マジポンは手ぶら、エテルはメモ帳と筆記用具だけ持っていた。
「きまってるじゃない、ほらっ・・・・・」
ペッチャのリュックから色々なものが出てきた。
まず、エテルと同じくメモ帳と筆記用具、写真、フィルム
双眼鏡、望遠鏡、ルーペ、UFOの本、ガァー人形。
「おいおい、なんでガァー人形がいるんだ?」
エテルがいった。マジポンもそう思ったが、どうせ
エテルが聞くだろうと思っていわなかった。
「知らないの?ガァー人形の中に水を入れておいて
首のスイッチを押したらクチバシから水が出るのよ」
「知ってるよ。ようするに水鉄砲でしょ?」
「宇宙人が攻めてきたら、これで撃退する・・・」
「はぁ〜?無理だって。そもそもUFOが本当に
発見できるか分からないし・・・」
「あ、そうだ!」エテルが突然いった。
「実は、今日は昼の3時になったら戻らなくちゃダメなんだ」
「なんで?わたしは6時ぐらいまで帰らないわよ?」
「だって病院で右腕の精密検査なんだよ。」
「・・・・・まぁ、いいよ。行こ!」
3匹は森に向かって歩いて行った。
森のむこうで岩山を左に曲がったところがトーブル海岸だ。
まわりにはあまり人影がない。今日のような暑い日は
みな海へ行って水につかって遊ぶ・・・のではなく
家でクーラーに当たりながら昼寝する人のほうが、
ずっと多いのだ。森から海辺まではだいたい
30分ぐらいだった。森には、たまに
シラカバやジャアクソウが自生している。
でも、コイツらがモンスターに襲ってくることはない。
近年、凶悪な植物モンスター対策としてスプレーが
売り出されている。だからシラカバ達は、他のモンスターを
恐れて近寄らなくなった。4年ぐらい前のことだ。
シラカバ達は森に住むリスなどの小動物を捕らえて食べている。
しかし、リスなどが減ってきたので同時にシラカバ達の数も
減ってきて、2ヶ月前にはこの周辺で特別天然記念物に
定められた。コイツらを見かけたらラッキーというほどだ。
「そういえば、だれかスプレーもってるの?」
エテルがいった。
「え〜と」ペッチャがカバンの中を捜した。
「あ、これこれ。奥の方にあったぁ!」
スプレー【シバラクシラカバオサラバ】は
ペッチャのカバンに入っていたのだ。
森林をさらに突き進んでいく。
「ああ、あそこに岩が6つ並んでる。
たしかここが半分ぐらいの所だっけ?」
残りの半分をマジポン達は進む。
シラカバが食べ尽くしたため、セミの鳴き声はあまり
しない。しばらくすると3本のゴムの樹が見えた。
「よし、あとちょっとだ。」
1〜2分すると森林の出口が見えた。出口から出ると
すぐ分かれ道(十字路)。まっすぐ進むと岩山で
右へ進むと、だれも近寄ろうとしない不気味な洞窟。
左へ曲がって、トーブル海岸に到着した。
「あっつー!」
ペッチャは望遠鏡を取り出した。
「それで太陽を見ると目が壊れるぞ」
エテルが注意した。
「大丈夫、大丈夫。」ペッチャは太陽と反対の方角
(つまり西)の空を望遠鏡で見た。
マジポンとエテルは肉眼で空を見上げた。
「わたしの双眼鏡を2人に貸してあげてもいいわよ」
「ありがと・・・でも、双眼鏡は1つしかないじゃん」
「レンズは2枚なんだから2人でわければいいでしょ」
「レンズの数は、左と右に前と後ろの2枚ずつがある
から、合計で4枚だよ。」と、エテルが反論。
「そんなこまかいことはいいじゃない。」
たしかにそうだが・・・。結局は、2人で1分ごとに
交代して、双眼鏡を覗くことにした。
<つづく>
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